テレビマンが考える“オンライン面接” 選ばれる人とは

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大学のAO入試、企業の採用面接が、次々とオンライン化している。

遠方で受験しづらい人にも、都心在住でどこでも受験しやすい人にも、機会均等という意味で、新しいVALUEだと思う。

オンライン面接となると、対面の面接と何かが変わる。声も聞こえる、顔みえる、タイムラグなく会話もできるのに、伝わり方は少し変わる。

この辺りの”伝えるティップス”については、専門家がWebにもたくさん出されている情報もあるので、ここで細かいHowは並べないが、ただ、テレビを長くつくってきた感覚からすると、イクツカ思うことがあるので、書いてみようと思う。

オンライン=限定された視覚情報→めちゃめちゃ印象大

フツウ、人は、初対面の人に会うと、顔も見るが、全体の印象を感じとる。体格や服装、その人の動き、アクションのスピード、あと、声。
多くの情報から総合的にその人の印象を感じとる。

一方、オンラインはというと、上半身、もっと言うとタイトなバストショットの二次元画面だけになる。そして他の情報が取れないので、この印象だけがめちゃめちゃ大きくなる。

まず、ライトは使った方がいい。

入手しづらければ、外光が順光で自分の顔に当たる場所にPCを移動させた方がいい。光は偉大だ。多くの女優さんたちがライティングにこだわるというエピソードを聞いたことがある人もいると思うが、光はすごく印象を変える。コジワが見えなくなるほど強烈に当てると面接官がびっくりするので必要ないが、ある程度の光量がないと、印象でソンをする可能性がある。

表情がよく見える安心感、コミュニケーションのしやすさがある。また、顔が明るいと、中身も溌剌と感じやすい。

ネット環境はどうにかしたい。

これはお財布とも相談になってしまうのでなんとも難しいが、ネット環境が不安定だと、画像も声もちゃんとスムースに届かない。ペーパーテストであれば、最初から回答用紙がところどころ破れている状態で、試験を受けるようなものだ。なるべく避ける努力をしたい。友だち、先輩、親戚、COworkスペース、学校で部屋を借りるなど、どうにかして、少しでも安心できるWi-Fi環境で臨むことには拘りたい。

ヘッドホンやマイクもあれば、安心アドバンテージ。

静かな個室が家にあるという素敵環境に暮らす人は、ヘッドセットやイヤホンセットなしでもOKかもしれないが、相手の音声を聞くという以上に、こちらの音声を送り出すにあたって、マイク付きのイヤホンや、単体のマイクがあるとベターだと思う。面接官にノイズの多い音声で返してしまうと、人間、それだけで聞きづらい=イラッとする、ことになりやすい。もっというと、多少、映像が乱れても、音声がクリアなら、さほどストレスにならない。それほど、コミュニケーションにおいて、音声は大事だと思う。マイクを使うことをオススメしたい。

ただ、注意が1点、マイクの扱い方だ。不用意に集音部分を触ったり、髪の毛がマイクにバサバサと触れたり、洋服の襟やフリルが当たるところに、マイクを置いてはいけない。近づけてもいけない。マイクが直接、接触を受けることによって拾うノイズは、自分では気づかないが、相手にかなり破壊的な大きさで届き、聞いている面接官の不快指数が跳ね上がる。

髪の毛を整える、服装、身だしなみを整えるのは大前提。

バストショットでずーっと見られるので、対面で会う時の何十倍も、特定の部分が”アップで晒されている”ということを忘れない方がいい。女子の場合、アイメイクも対面の時よりも控えめの方がきっといい。近距離から人に見られる前提で手加減するのがオススメだ。

実際にわたし自身、目元にあれこれ塗ったりくっつけたりしている人とオンライン面談したことがあるが、正直、そこに目がいって、話している中身に集中しきれなかった。あと、鼻毛が出てない、歯の間に食べかすが残ってない、という基本的な身だしなみの範囲を、いつもより念入りにチェックした方がいい。細かいところまで意外とよく見えてしまう。

そして背景。

バストショットの他に、面接官が見続けるものとして、”背景”がある。いろいろな事情から、ぼかしたり、別の背景画像にせざるを得ない場合はそれでよいと思う。(ただし、背景画像の選び方は気をつけて。就職の面接や入試の場合は、一般的には、薄めの単色のバックが望ましいと思う。クリエイティブに自分を表現することを望みますーという会社は別だけど)。

一方で、背景を隠さざるを得ないわけではない人は、ノーマルにリアルな背景がベターだとわたしは思う。自然体で。ただし、ごちゃごちゃモノがある場合は、スッキリしておいた方がきっといい。後ろに、何やら魅力的なものやツッコミどころ満載のものが映っていると、そちらが気になってしまう。

一点だけ、いじってほしいもの、自分を伝えるのに効果的だと思うものを飾っておく手はある。工夫の範囲、自己PRの範囲だ。さりげなく、自然体で。

意外に重要なのが、カメラ位置。

多くの人が、意識せずにやっているなあ、もったいないなあと思うのが、自分とカメラレンズの位置関係だ。自分の顔とレンズの距離、そして高さ。これが結構、印象に影響すると思う。

PCでもスマホでも、基本、レンズに近いとアップになるし、離れると、首、胸、お腹のあたりまで、画面にいれることができる。どのくらいの大きさで映ると、一番、自分が”いい感じ”に見えるか、いろいろやってみてほしい。

カメラの高さも重要で、自分の目線より高い、低い、同じぐらい、それぞれやってみて、客観的に画面をチェックしてみてほしい。

フツウにデスク上においたPCのカメラであれば、カメラは自分の顔面より下。カメラ位置が下からアオリ気味に撮ることになるので、レンズの向こうにいる面接官は、あなたを下から見上げることになる。謙譲の精神を美徳とする日本人としては、初対面の目上の人を上から見下ろすのは、よろしくない。顎のラインに自信がない場合も、オススメしない。自分の話している時の表情が、”いい感じ”に見えて、二重顎に視線を集めてしまったり、偉そうに見えたりしない位置を、探ってみてほしい。

逆に、PCを雑誌でも箱でも、何かの上において、自分の目線より上にレンズが来るように置いてみると、面接官は、あなたを見下ろす感じになる。

わたしのオススメは、目線とレンズが同じ高さから、ややレンズが上になるぐらいの位置だ。調子に乗って、あまりレンズを上にしすぎると、上目遣いになりすぎて、妙な”コビ感”が出たりする。面接の種類や局面によって、”狙い”で上目遣いにする分にはいいと思うが、一般的な入試や就職の面接においては、やりすぎ注意だと思う。

そして動き方。

ずーっとバストショットなので、顔とレンズの距離感を話ながら少し変えるのはオススメだ。そもそも画面越しの対話なので、体温が伝わりにくい。レンズからやや遠目で、顔面が小さくしか映っておらず、動きも少ないと、「生身の人」っぽくない。話に熱が入ったらレンズに近づいて、さっきよりアップになって行ってもOKだし、聞く時は、少しレンズから離れ気味になって落ち着いてますアピール、そんな演出の余地があることを、少しだけ頭の片隅においておこう。

あと手の動き。
対面の時には、有効に働く手の動きだが、バストショットのサイズで話す時には、やや控え目の方が良いかもしれない。ブンブン手を振り回す人だなあという印象が、対面の時よりも出やすい。

その分、間をおいてしっかりレンズをみたり、うなずきはいつもより大きめ&ゆっくり目で。小刻みに頷くと、首振り人形のように見えやすい。

この辺りは、多くのテレビ番組が今、H2Hでプロの演者をリモートで撮っているが、タレントのレンズとの距離、アクションする時の映り方を、研究目線でみてみるのもオススだ。さすが、プロ!と思う発見があるかもしれない。

ここまでまとめると、

ライトはオススメ なければ自然光で工夫

ネット環境を出来るだけ安定させる

マイク(ヘッドホン)はあった方がベター ただし取り扱いノイズ注意

バストショットのアップを撮られ続けていることを忘れない

背景に「見切れる」(映り込む)ものに工夫の余地あり

カメラ位置

動き方(レンズからの距離/手の使い方/うなづき)

是非、友だちとか仲間同士で、一度、zoomでもなんでも繋いで、実際にやってみるのをオススメする。録画も簡単に出来るので、収録して、自分の様子を客観的にみてみて欲しい。きっと、具体的な改善点があって、実験前より本番でよく出来る。

ここまでが、準備の話。

で、面接なのです。

実際は、自分の特性や考え方、思っていることを、どれだけちゃんと相手に伝えられるか、そこが本題である。

テレビの制作をしていると、新番組のレギュラーを決める時、新しいコーナーを立ち上げる時、これからスターを目指す女子たちや若手芸人さんのネタ見せの場など、やたら多くの人と一気にお会いする機会が多い。オーディションというものだ。

プロデューサーやディレクターは、何10人の中から、時には何1000人の中から、一緒に番組をつくる”一人”を選ぶ。

この時、選ばれる人は?どんな共通点があるか?

わたしが思うのは、「その人しか言わないこと」をいう人、やる人だ。

それが社会的に見てすごいとか、めちゃくちゃ賢いとか、そういうことはどうでもいい。その人しかない経験から、その人らしく考えたことや思ったことを、自分の言葉で伝えてくれる人。うまく伝わるかどうかも大事だけど、究極は、その人しか言わないことを言った人が、選ばれていると思う。

他の誰かも同じことを話したら、話し方のスキルとかが高くても、その人を選ぶ決定的な理由にはならない。

その人しか言わないことを伝えてくれた人は、自然と印象に残る。何人にも一気に話を聞いた後でも、「あ、XXXの話をした子だよね」と、その場にいた人が誰もが2秒で思い出せる。みんな記憶に残っている。

それが、奇を衒ったものではなく、自然体で出ていた人。

就職面接ではよく「学ちか」と言われている”学生時代、一生懸命打ち込んだことについて教えてください”的な質問がされると思う。

これに、大抵の人は「立派な成果」を答える。全国大会、日本代表、とても素晴らしいと思う。きっと並大抵の努力じゃなく、一生懸命やったんだ、打ち込む力がある人なんだと思う。才能もあるだろう。

でも本当に聞きたいのは、成果以上に、どういう考えでそれをやったのか、どんな時に、どんな目にあって、どう考えて、どう行動した人なのか、を知りたい。どんな思考回路の人なのか、ということだ。

もちろんコレには、正解はない。

だからオンライン面接、「志望動機」とか「自己PR」とか、事前に考えてまとめておいた方が良いこともあるけれど、最後は、自分を知ってもらおう、ぐらいの気持ちで向かってほしい。

そして最後に、わたしが25年ほど制作現場にいて、一番、面白いなあと感じていることは、「カメラは嘘をつかない」ということだ。どんなに取り繕っても演技をしても、その人間の「素」のようなものを、カメラはしっかり映し出してしまう。

別の業界の友人に「テレビで見る●●さんって、本当は結構、イヤな人でしょ?」と聞かれたりすることがあるが、実は、大抵当たっている。そしてそういう人は、芸能界で長くは活躍しない。

カメラは結構、本質をストレートに映す。

最初の方のオンラインの注意点は、できる範囲でOK。小さなテクニックに右往左往せず、本質は、自分を自然体で伝えにきて欲しいということだ。

どんな人なのかを知りたくて、面接官は待っていると思う。
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