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コラム
 今回は世界と特許出願の話です。

 まず、最も基本的なルールとしては、特許権は国ごとに別々です。詳しくは、パリ条約等の国際条約で決まっているルールですが、要するに、特許権(他の知的財産権も同様です。)は、国ごとに出願・審査・取得・更新・管理しないといけないというものです。言い方を変えると、複数の国で共通して使える「国際特許権」というものは存在しません。ただし、今議論されている制度ですので近々に実現する可能性はありますが、2020年現在ではありません。
 たまに「国際特許権を取得しました!」のような宣伝がありますが、あれはおそらく国際特許出願です。通称、「PCT出願」とも呼ばれます。PCTは国際条約の名称です。「出願」なので取得するものではなく、おそらく出願が完了したという意味ではないかと推測します。

 運転免許に例えると、特許権には、「国際免許」はありません。米国なら米国の免許、英国なら英国の免許を別々に出願及び審査して、別々の免許を取得する手続きが必要です。
 なぜこのような体制なのだろうかというと、色々な政治的な事情もありますが、1つの理由には「(特許権を発生させる根拠となる)法律が国ごとに違うものだから」があるでしょう。権利を発生させる根拠となる法律が異なれば、運用や審査も異なり、そのため審査過程も審査結果も異なります(ある国ではOKでも他の国ではNGとなる場合もあります。)。
 (*ややこしい・細かい話:厳密には、商標は国際出願に基づく「国際登録」というものは存在します。特許にはない制度です。)

 国際出願のルールや手続きはとても複雑です。弁理士試験受験でもここは受験生が嫌がる箇所です。しかも、実務では最終的には現地(外国)の言語で現地特許庁とやり取りが必要なので、外国法知識+言語力がないと難しいです。
 弁理士は知財の国際ルールである条約の知識を身に着けているので、仮に全くの未知の国であっても国際ルール的に法律はこうなっているはずという土地勘はあります。また、現地の特許事務所と連携が取れている事務所は現地の弁理士と連携して当たるため、日本から各国へ出願をどうしたらよいかが探れます。海外は国内よりも知的財産に厳しい環境もありますので、知的財産権の問題があると税関でSTOP等の事態に陥ります。そのため、テストマーケットに加えて先行して特許権等を確保するといった対応が必要となります。

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