風鈴の音は迷惑か

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彼女は鬱気味になっていた。
毎晩気になって眠れない。昼間も交感神経が異常に高まって心臓と呼吸が苦しい。
原因は、近所の風鈴の音だ。
朝から晩まで夜中も関係ない間断なく鳴り続く風鈴に神経が参ってしまった。近所のお宅なので面と向かって苦情を言うのを躊躇われる。
しかし、風鈴は容赦無く昼も夜中もずっと鳴る。
風鈴の音色が好きならば室内で扇風機でも掛けて自分だけで楽しめば良いのに
わざわざ外に吊るして早朝、夜中他人に聞かせている。
他人に聞かせる必要は無い。
みんながみんな、風鈴の音色が好きな人ばかりは居ないのだから。
苦情を言われると数を増やして嫌がらせをする最低の根性の悪い人間も居る。
彼女は我慢の限界だったので、意を決して苦情をやんわりと言いに行ったのだ。
風鈴は音が鳴るのが当たり前だ、うるさいなら耳栓をして下さいと
言われたそうだ。
彼女は役所に相談したが、今の役人は保身の事ばかりを考えている。
変な紛争に携わって自分に刃を向けられたら出世に響く。
だから、相談者を逆に咎めて追い返し仕事をしないようにする傾向が非常に強い役人に相談しても何の役にも立たない。
相談窓口でそんなに気になりますかと咎められように貴方の方がおかしいと言わんばかりの対応だった彼女は辛かった。
市民が困って相談に来ているのに、そんなに気になりますかは無いだろうと思った。気になるから相談にきているのだ。
こちらが異常な性質のように言われた事に対して彼女は悔しかった。
役人はデシベルと言う話もした。
一定の音量(デシベル)を超えないと役所としては指導する事はできないと。
気になる音は音量の大きさで測れるものでは無いと思った。
物理的に音量が高いから煩い、音量が小さいから五月蠅くないと言う単純なものでは無いだろう。
心理的に煩いと感じるのだ。
寧ろ心理的に煩い方がタチが悪い。
物理的にデシベルが高くて煩くても心理的には少しも負担を感じない事も有るのだ。
例えば映画館で後ろの二人がずっと喋っている。
うるさい。
映画の音量が遥かに話し声よりはデシベルが大きい。
しかし、後ろの二人の声の方が煩く感じて腹立たしい。
蚊が耳元でブーンと羽音を立てて跳んでもデシベルが小さいから気にならない訳では無い。
だから、単純に音量を測ります、法定の水準を超えたら指導しますでは
何の役にも立たないバカ役所だろう(市民税は払っているのに)
だから、彼女は引っ越しました。
引っ越し費用を風鈴を掛けた人間に損害賠償を請求したい思いだろう。
かなり効果的な方法は彼女が直接苦情を言う前に、はがきに煩いからせめて夜だけでも風鈴を取り込んで下さいと書いたはがきを作って街のポストに投函すると
郵便配達の人がその家に配達して呉れる。
そして誰が出したか分からない。
近所一同からとでも書いておけばよかったのかもしれない。

彼女は女性でおとなしい性格の人間だったからこんな結末で済んだ。
男性だったら殺人事件に発展しているだろう。
世の中、時々ニュースで騒音問題が原因で隣の人間を殺したと報道が有る。
あれは、いきなり殺したのではなく、最初は苦情を言いに行った。
しかし、相変わらず騒音を立てる、言った本人にとっては苦情を言った後に同じように騒音を立てられると、倍の大きさに感じる。
自分が苦情を言ったので、はらいせに倍の音を今度は立てていると感じる。
音の大きさは同じでもそう感じるのが人間の心理だ。
だから、苦情を言う前よりも激しく怒りが湧き上る。
そこで我慢の限界を超えて、口で言っても分からないなら、殺してやると言う結末になる。
その手のニュースが時々報道される。
政府もこの騒音の事に対して行き届いた細やかな法律を作って欲しいと思う。
デシベルで一括りするような雑な法律では無い血が通った相隣関係の騒音規制法を制定して欲しいものだ。




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