大手企業の新規事業で私が実際に失敗した3つの過ち

記事
ビジネス・マーケティング
こんにちは、mamekaです。先日、『新規事業の実践論』を読みました。
新規事業の実践論 (NewsPicksパブリッシング)

大手企業の新規事業に携わった1プレーヤーとして読ませていただきましたが、『ヒト・仕組み・組織』について非常にためになる考察を得ることができました。

結論、個人的には、大手企業に所属して新規事業を進めているプレーヤーレベルだけでなく、管掌している『部長・役員』といった決裁者レベルも一読すべき内容と感じました。

本書を読んで、新規事業担当者からみて、「実際これを間違ってた。もっとこうしとけば良かった(現在進行中)」といった内容をこれから新規事業に取り組む方の一助になればと思い、個人的な所感を交えてまとめています。
(2021/7/25)

それでは、早速本題に入っていきます。



1.実は完璧な新規事業の判断プロセスなんて存在しなかった?

「この新規事業が成功すると判断できる唯一のプレーヤーは顧客」

上記でも言われている通り、これまでにない分野・知見、ましてや立ち上がってない新規事業を正しく評価するのは難しいです。

会社というのは、多層の意思決定階層、異なる領域の集合体で成り立っています。

これまで新規事業を推進してきて、経験上、全ての関係者にとって理解でき・腑に落ちる新規事業の判断プロセスを据え付けるのはハードルが高いと思いました。

社内では決議したことを上司に説明する「説明責任」を誰しもがもっています。

「本業が消失する」といったり、「経営者が身を切って本気で取り組む」といった大義名分がないうちは、意思決定の最終的な局面になって、「自分が責任をとらされるのではないか?」とほとんどの人が新しいアイデアに否定的になります。

ガチガチにプロセスを固めてしまうと、最初の判断基準を盛り込む段階で、『競合』『実現可能性』『事業計画』『収益性』と新規事業プロセスが分からない人が口を出して、実際に事業が立ち上がりかける段階で、上記の正論を盾に「自分がいかに正しいか」を周りに示したがる人が出てきます。(こういう方は、「いかに正しいことをするか」よりも「いかに自分の発言が受け入れられるか」に腐心します。)

そこには、著者が述べているように、意志(WILL)をもつ『ヒト』の存在が不可欠になります。
オーナーシップをもつ役員レベルだけでなく、一般社員もこれに当てはまるかと思います。

『完璧な判断プロセスなんてない』と申し上げましたが、「何もない」よりはPDCAを回すための拠り所がある方が断然良いと思います。
本書の新規事業の6つのステージは参考になります。

#ステージ、◆判断ポイント
-.おぼろげでも取り組みたい顧客課題を見つけ、そこへのWILLの形成を目指す段階
 ◆WILLが強いか、強まりそうか/走り抜けるチームかどうか
1.魅力的で検証可能な事業仮説の提示を目指す段階
 ◆顧客・課題・ソリューション仮説・検証方法のセットが成立しそうか
2.事業性を伴った魅力的な事業計画の提示を目指す段階
 ◆仮説が実証されているか、投資可能な事業計画か
3.商用レベルでの事業の成立とグロースドライバーの発見を目指す段階
 ◆実際に商売が成立したか、成長のための拡大方法が見えたか
4.実際にビジネスが最初のグロースを実現することを目指す段階
 ◆事業が成長状態に入ったか/組織戦略と対競合戦略が現実的か
5.経営会議で議論できる最小限の規模に到達し、かつ成長状態であることを目指す段階
 ◆成長率を落とさず成長状態が続くか/既存事業と遜色ないガバナンスか
6.新規事業の枠組みを卒業し、成長投資を獲得し、企業戦略の一部に組み込まれることを目指す段階
 ◆社内での位置付け整理・IR方針/既存事業を凌駕する規模への投資戦略
!.既存事業と呼ばれる段階

これまでの繰り返しになりますが、『仕組み』を整えることは重要です。

しかし、#1の段階で『競合』『実現可能性』『事業計画』『収益性』を判断の拠り所としないこと、しないための仕掛けは新規事業を進める上で知っておいた方が良いポイントでした。



2.「スピーディーにたくさん」ではなく「時間をかけてじっくり」考えるべきと勘違いしていた


300回顧客のもとに行く

私も含めた多くの新規事業担当者は、企画段階では、市場調査やデータをもとに仮説を立てて、数回、多くて数十回しか顧客の元へ足を運ばないと思います。

私は、そもそも、新規顧客にアポをとるところから苦戦し、1回の訪問の効果を最大化するために、
「誰の」「どんな課題を」「どう解決するか」「どう検証するか」を机上で考える時間をものすごいとっていました。

著者は、既存事業で成果を上げた人ほど陥ってしまう9つのステップを下記のように述べています。

1.「前提条件」の整理&上司に「今後の進め方」の確認をする
2.社内の他部署の情報収集をする
3.競合の事例、海外事例を調査する
4.市場調査という名のアンケート及び浅いインタビューをする
5.社内の会議室でアイデア会議を繰り返す
6.先輩や上司からのアドバイスを拠り所とする
7.「6.」を踏まえて社内会議室で議論をする
8.事業計画・業務工程を立案する
9.プレゼン資料を作成する

つまり、仕事の中身が

確認/事例/調査/会議/資料×社内/上司/先輩/競合

となってしまうのです。私自身まんまと上記の事例に全てハマってしまいました。

(直接、顧客の声に結びつかない情報をいくら集めても事業は前には進みません)

そこから軌道修正したものの顧客のもとへ300回いく(それぐらいお客様と関わりヒアリングをする)というのは意識が足りていませんでした。




今では、オンラインの面談が可能であり、スポットインタビューサービスなどもあるのでそちらを活用したいと考えています。



3.「でも、新規事業は必要だし、会社が味方になってくれるでしょ?」という幻想を抱いていた

社内会議というのは、「承認のための重要な情報が1つでも誤ってはいけない」「明確でブレのない回答で誰にでも説明可能な内容でなければいけない」

既存事業の審議プロセスに携わっている方ならお分かりかと思いますが、
一旦、社内プロセスにかけるとなったらそこは、白黒つける世界に突入です。

そこで、著者が述べていた下記が参考になります。

1.数値ロジック:全て分解して説明できる
2.顧客の生の声(映像や手紙含め)を伝える
3.リスクシナリオと撤退ライン、遅れる場合の対処法を明記する
4.自主調査・法務部・社外の専門家を通じて関連諸法規を提示する
5.社内キーマン・社外権威者のコメントを事前に収集しておく
6.空気を読んだ現状の会社方針を踏まえた戦略図を提示する(株主への説明、中計との関連性)

内向きになる必要はないと思いますが、大企業における新規事業は社内調整もセットで新規事業だと思います。

組織のアセットを使いながら周りを動かしていくのに、上記を当事者意識をもってやり切るのは必要だと感じました。

大手企業の新規事業の場合、縦割りのミッションをもつ関係者の中でいかに素早くお互いの利害関係を察知、調整して、周りを巻き込めるかが成功の重要な要素になってくるかと当事者として感じます。


いかがでしたでしょうか?今回は、『ヒト・仕組み・組織』に近い内容で
私が実際に「勘違いしていた・間違っていた」新規事業推進プロセスをまとめさせていただきました。

他にも、下記「なるほどなぁ」と参考になる内容もあります。

-MVP期は顧客の創業チーム化現象があるため、実際に上手くいくケースは50%
-否定的な反応を示さず買ってくれるPrimary Customerに会う
-リリース直後はChannel/Communication/CustomerSuccess施策をとる
-売り方の設定と値付け/コスト構造の見積もり/時間軸を入れたシミュレーションを事業計画に含める
-収益性は「顧客が支払うコストが提供コストよりも大きく、顧客数を拡大できれば大きな利益を生む」観点で見極める
-新規事業でも途中から、セキュリティレベル、マニュアルやルール、議事録などガバナンスが求められる大人な時期を乗り
 越える

新規事業創出のプロセス自体は、大企業だけでなく、スタートアップ、起業にもある程度使えるものかと思います。

また、読み返して参考になる点ブラッシュアップしていきたいと思います。
それでは。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す