医療安全対策➀現状

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コラム
医療安全対策と感染対策は医療機関運営の大きな柱となっています。これは、命と健康を守るという医療機関の役割から、非常に重要な取り組みです。機械の操作ミスで亡くなった事例、院内感染でたくさんの命が失われた事例、数多くの事例がマスコミなどで報道され、誰もが見聞きしていることだと思います。ですが実際に発生している件数ははるかに多く、皆さんの知らないところだと思います。

今回はその1つの医療安全対策の取り組みについて書きたいと思います。前のブログで私が少し入院していた事を書きましたが、今回の入院は病院サービスとしては比較的満足出来るものでした。しかしながら、気になることもたくさんありました。

その一つに点滴のトラブルがありました。たくさんの方が経験されていると思いますが、液モレです。針を刺した時、通常は針の入ったところに痛みを感じるのですが、今回は針を刺した付近の血管全体に何とも言えない痛みを感じました。すると「うまく入らなかったので、別のところに刺します」と言われ、別のところで落ち着きました。翌日腕を見てみると、10センチ以上に渡り皮下出血をしていました。人がやる事、こういう事もあると思っていました。

ところが、退院するまで病棟スタッフからは、その事について触れる事はなく、退院の時に青アザの酷い腕を見せて、この青アザはどれぐらいで消えるかと確認したところ、「安心してください。すぐに消えますから」と言われただけでした。ここで疑問に思ったのは、今回の私の件は共有されていないのでは無いかという事でした。こういった事は病院では日々発生しています。この日々発生した事を共有し、収集し分析を重ねていく事で医療の質が上がり医療事故を防ぐ事に繋がります。

日々発生するトラブルは患者さまに直接影響の無かった事はインシデントレポートとして、直接影響のあった事は、アクシデントレポートとして報告書を書く事がどの病院でも義務付けられています。またレポートを書く基準も、例えば転倒事故であれば、患者さまがよろけて膝を付いただけでも転倒事故としてレポートを記載するというふうに決められています。

この報告書を収集し、例えば転倒は就寝時間帯にはいってすぐの時間に多い、最も多い理由はトイレ利用にある等の結果が出て、就寝時間前にトイレ利用を促すとかの対策が取られ、転倒事故の件数が減るとかの効果が出ています。

このレポート報告は、公益財団法人日本医療機能評価機構からは1病棟で一ヶ月50件のレポートが望ましいとされています。1病棟に勤務するスタッフは病棟の種別等で異なりますが、医師や看護師、看護助手、事務員まで入れると50人ぐらいとなり、1人1枚ぐらいで決して多くは無い数です。しかしながら、この月50件のレポートという数は私の見た事の無い数字です。まだまだ取り組みとしては弱いのが現状だと思っています。

医療安全対策は病院が力を入れていると言ってもまだまだだという事です。今回の私の経験も、レポートが上がっていれば、必ず師長や主任も見ているはずです。というのは上司として、その防止対策について意見を書いて、院内の医療安全対策委員会に上げる必要があるからです。そうすると、それを見た師長や主任は私のところに来て、大丈夫ですかと声掛けがあり、青アザの経過を追うという流れになるはずです。

また対策として、レポートの分析から液モレの月間件数の把握、どの病棟でどういう時に多いのか、特定の個人に集中していないか、新人ナースに多いとかなど見えてきます。そうすると、具体的な対策が浮かんできます。研修会をしようとか、この人はミスが多いから手技を確認しよう、短時間に処置を詰め込み過ぎなので、全体的に時間を掛けてゆっくりするようにしよう、等々です。

医療機関で働く皆さんには、本当に大変ですが医療事故を限りなく「0」に近づけることを目標に。しっかり取り組んで欲しいと思います。この取り組みが弱いと指摘すると、「スタッフにはいつもレポートを書くように言っていますが書かなくて...」と言い訳をする管理職が多いのですが、管理職の責任だと思っています。現場をよく見ていれば、書く材料はたくさんあります。管理職の姿勢がこの取り組みのキーだということも強調したいと思います。
(トップ画像はcanvaの画像を加工)
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