病名の管理は医事課的には、煩雑な事がたくさんありますが、病院視点となりますとそんなに多くはありません。最近は医事システムや電子カルテのデータは、データベース化されているものも多く、そこから取れるものも多いはずです。それらを活用することで、病院としてもある程度の対策が可能となります。
1)病名数のモニタリングをする
該当月の転帰の無い病名の数を集計し、該当月のレセプト件数を集計し、
病名数をレセプト件数で割る。
転帰の病名の合計件数÷レセプト件数
=レセプト1件当たり(一人当たり)の病名の数
※1.転帰の無い病名は毎月レセプトに表示される病名で、転帰のある
病名は次月表示されないので意識する必要はありません。
※2.転帰が集計上区別出来ないのであれば、科別に適当にレセプトを
ピックアップし、転帰の無い病名と無い病名の数を数えその比率
を求め、科毎に転帰の無い病名数の予測値を出してもいいと思い
ます。
上記で出た数を確認し、評価、目標としての病名数を設定し、毎月月報と
してその差が分かる報告を病院に報告してもらうのがいいのではと思いま
す。
更に医事課の保険請求の担当職員別に集計出来れば、その一つのスキル度も見える化出来て、教育効果も期待出来ます。
2)電子カルテの病名数と医事システムの病名数の比較
こちらは本来一致していなければいけないものですので、毎月報告を義務
付けるといいと思います。5年に一度の各地方厚生局の立ち入り検査でもチ
ェックの対象となるものです。
本来病名については医師がすべて付けるものですが、何よりも多忙であ
り、保険請求の知識も乏しく事務の手助けが必要です。特に医師事務補助作
業者の活用は法的に考えても一番適切では無いかと思います。当然、必要な
教育や院内規定やマニュアルの整備も必要です。
ただし、医師の確認作業はどこかで必要です。レセプトの作成責任は医師
にあると明記されているからです。
3)ワープロ病名のチェック
データ提出加算を取得しているところは、病名コードを使用せずワープロ
で編集した病名を登録するとエラーで処理され、そのエラーの数が多いと届
け出をしている施設基準が取り消される事がありますので大変重視する項目
です。取り消された施設基準次第では、月に何百万円以上損失を出す事もあ
ります。
また、病名は病名標準マスタに準拠した病名を付ける事が基本なので、コード化されていない病名はそれから外れた病名である事も考えられます。
更にある病名を持った患者一覧を出そうとした場合、ワープロ病院の患者
さまはその抽出対象外になる事もあります。稀にありますのが、Aというお
薬で重篤な副作用が出たと発表され、そのお薬が処方されている患者一覧を
出し、服用中止の連絡をしなければいけないという事です。病名などでは考
えにくいですが、ワープロ病名のリスクと考えていいと思います。
以上の事から、ワープロ病名の数も月報の対象とすべきかと思います。
4)難病のチェック
この項目は上記1)~3)とは視点が異なります。病気やその方の身体能力な
どで、医療費の補助や社会保障の対象となったりします。肢体不自由等の障
害者認定などは医療職なら誰もが意識し易いものですが、障害者総合支援法
の対象疾患(指定難病を含む)は360疾患ぐらいあり、増えたり減ったりして
います。
この病気に罹患していても、申請をしないと医療費の補助などは受ける事
は出来ません。また、申請時からの認定となりますので、申請以前の医療費
などは返ってくる事はありません。専門職である医師も全部が頭に入ってい
るとは言い難いと思いますし、頭に入っていても意識していないと忘れてい
る事もあると思います。
これら難病に罹患している方の一覧と公費補助を受けているかのチェック
もして欲しいと思います。とてもじゃ無いですが、患者さまには難しいでし
ょう。もちろん病名があっても病気の進行状況により補助の程度も変わるも
のですが、見逃さないようにして欲しいと思います。
こういった類の事は他にもあると思います。あれば、モニタリングの指標
として取り上げ、医療職の専門性を発揮して欲しいと思います。
関連サイト:障害者総合支援法の対象疾患(厚生労働省内)
難病情報センター
(トップ画像は、photo-ac.com/からの画像を加工)