中近両用がわからない人へ 「失敗しない中近両用の処方」

記事
学び
今回の内容は大きく分けて3つです

・中近両用の設計とフィッティングポイント
・中近両用をおすすめするタイミング
・中近両用の処方




まず、中近両用の設計とフィッティングポイントですが

遠近両用と大きく違うのは、中間部分の視野が遠近の設計と比べて
大幅に広いというところです

見た目的にはこんな感じで

遠近両用の設計を広げてみたイメージになります

R6-05-16 19.03の画像.jpeg


そもそも中間部分の見え方を広くする設計なので
用途も遠方視野はせまく、
数メートルくらいが見える程度の設計です


使い方は目線を水平にした部分にパソコンなどの距離にピント調整が入る設計なので
基本的には完全矯正値で処方すればOK


フィッティングポイントに
加入度数のおよそ40%が変化して入るようなイメージですが、

これはレンズメーカーによって多少変わりますので考え方としては
「加入度数の半分よりちょっと少なめがフィッティングポイントにくるんだな」
でOKです。



加入度数に0.4をかけるとフィッティングポイントに来る
およその加入度数が出ます

例えばこんな感じです

加入度数が2.00の場合だと、
0.4をかけると0.8なので、

加入0.8が遠方度数に入ってくるイメージです



遠方度数がS-5.00だとすると                               

25% S-4.50 加入0.50

40% S−4.20ぐらい 加入0.80

50% S-4.00   加入1.00

75% S-3.50 加入1.50

100% S-3.00 加入2.00





度数としては、水平に見た視線の位置くらいにS-4.25くらいの度数が入るので、

その位置で見たいパソコンだったりモニターなどがくるようにすればOKです

もう少し詳しい処方例は後ほど紹介しますね



次に
・中近両用をおすすめするタイミング

ですが、

およそ3つのパターンがあります

・遠近両用ではパソコン作業が
 つらくなってきた60代以上の方

・近用眼鏡をかけ外しせずにもう少し
 遠方まで見たい事務職の方

・KBの遠近などで加入がゴリゴリ入ってパソコンが見えにくい方

このパターンの方が来た時は
中近両用を提案の選択肢に
入れておきましょう



まず
・遠近両用ではパソコン作業が
 つらくなってきた60代以上の方
が来た場合、

おそらく現在使用しているKBの加入度数が、2.00を超えて入っていることが
考えられます。

このチャンネルでも、
加入度数が2.00を超えると
中間視野が狭くなり
パソコン作業に適さなくなってくる話は
度々しています。

加入度数が年齢の適正度数1.75を超えた
あたりから遠近両用では加入度数を上げたところで視野は
さらに狭くなっていくので
根本的な解決にはなりません。

どうしても
「運転もするし掛け替えもしたくない」
という場合は累進帯をショートにするか
遠方度数が過矯正な場合があるので
S面を少し下げたり、等価球面で乱視の補正をしたりしながら
加入度数だけを上げる提案は
最終の手段にしたいところです。


次に
・近用眼鏡をかけ外しせずにもう少し
 遠方まで見たい事務職の方
ですが、

例えば美容師さんや看護師さんなど
手元も見つつパソコンも見つつ
少し離れたお客さんの顔も見なければいけない職業の方が、
近用眼鏡を鼻の下にずらして
裸眼などで離れた場所を見る姿を
一度は見たことがあるのではないでしょうか?

見た目的にもあまり美しいようには
見えないので、それを解消したいという
希望を主訴として挙げられる方は
多いです。

そんな時は遠近両用ではなく、
中近両用の方が主訴に答えられる場合が
多くなります。

老眼鏡をかけているということは、
基本的に遠方を見ることに困っていないことが多いので、
遠方度数は度なしの裸眼ぽくするか、
多少の遠視度数や乱視度数を入れて
加入度数を1.75までに抑えることで
かなり快適な眼鏡を提案できると思います。

ポイントは、あくまで遠方を重視しすぎず2.3メートルくらいの先が見えるくらいでOKという方を対象にすると
失敗しにくくなります。


次に

・KBの遠近などで加入がゴリゴリ入ってパソコンが見えにくい方
が来た場合ですが、

これは今まで作った眼鏡が残念だったと思わざるを得ないですが、
年齢の適正加入度数を超えて
ただただ度数を上げて
見えている風の眼鏡に慣れて来たパターンです。

原因としては
おそらく目線を落とすのが苦手で
強い加入度数を入れることで無理やり
見えるようにしてきたことが考えられます。

例えば60歳くらいの方が
本来の適正加入度数が2.00ぐらいなのに対してKBの加入度数が2.75とか入っていて、それに慣れてしまった悪影響で視野も狭く、今後加入度数をこれ以上上げて眼鏡を作れなくなるパターンですね。

レンズメーカーさんは加入度数の上限を3.50まで作成してくれますが、
今までそんな加入度数を必要としたことはほとんどないですし、
それ以外の方法が必ずあります。

一部、いくら説明しても「かけかえはしたくない」「眼鏡は一本しか使わない」などの、
いくら眼鏡の設計や限界を話しても聞いてくれない場合は
泣く泣く遠近両用の加入度数のみ上げて
未来の測定者さんに「すまない、、」
と想いを込めてパスする場合もありますけどね。

近視の場合は過矯正であれば
加入度数はそのままキープして、
S面だけ3段階以内を目安に下げたり
等価球面できるならそちらを試してみましょう。

遠視の場合は、
S面にプラス度数を2段階入れることで
遠方も近方も両方見やすくなるパターンはけっこうあります。

3段階以上入れると遠方の見え方が下がった感覚になることが多いので、
遠視はS面に+0.50くらいでとどめておくと失敗しにくいです。

うまくいけば加入度数を1段階下げて視野の確保もできる場合があるので、
遠視の場合は加入度数を上げずに
S面で処理する方法を考えるとよきです。



最後に
・中近両用の処方
を例題を元に紹介します。


基本的な考え方としては遠近両用と
同じです。

遠方をどのくらいみたいか?を問診して
近方をどこまでみたいか?を確定させます。

設計上、遠方度数はレンズの上部に来ることや、左右の視野は遠近両用よりも狭くなるので、あくまで遠方はおまけ程度に見える距離ということをしっかりとお伝えしましょう。

よく言われるのは「テレビが見えるくらい」とか「少し離れた人の顔が見えるくらい」と言われるので、
実際に仮枠に入れた見え方が
そのイメージに合っているか?を
体験してもらいましょう。


例えば

60代男性
KBは3年使用している遠近両用 
S−5.50 加入度数2.25
左右バランスは無視
視力は1.0見えているとする

主訴 
遠方は問題ないが仕事でパソコンが疲れると相談

完全矯正値 S -5.00 加入度数2.25
視力は1.0まで出るとする



この場合はまず、S面の過矯正に注目

もし遠近両用を処方するなら
S面をS−4.75までの3段階以内に下げてみて

KBと遠方の見え方が大きく変わらないなら
加入度数も2.00ぐらいまで少し下げたりして
視野を確保して終了です



中近両用も同じ考え方で過矯正に注目し
S面を下げることを考えますが

遠方度数がレンズ上部に来ることを考えると
S−5.00 ぐらいの2段階以内に抑えて
加入度数も2.00くらいにすれば

そこそこ遠方の見え方をキープしつつ
中間から手元も見えやすくできると思います


もし遠方の見え方が物足りないなどの場合には、遠近両用と中近両用の間の設計レンズを提案してみましょう。

遠近両用と中近両用の間の設計レンズについてはこちらの動画も参考にしてみてください。




中近両用は、おすすめするタイミングを間違わなければ遠近両用よりも
遥かにパソコン作業に向いています。

ただし、かけかえが前提となるので、
運転などの遠方視野を求められる場合は
遠近両用で考え、
掛け替えが可能なら中近を積極的に提案していきましょう。


遠近両用がパソコンにも適応するのは
加入度数が1.75までとボーダーラインを引いて

そこを超えそうな時には、
過矯正だったり遠視度数だったり
することが多いはずなので、
まずはS面で処理できないか?を考え

運転などで、
遠方をそこまで重視しないか?を
問診でしっかり確認した場合に
中近両用をガツンと提案していきましょう。



中近両用は遠近両用に比べてまだまだ
世間で認知されていません。

いまだに眼鏡は遠近一本だけで
快適に過ごせると考える人もたくさん
います。

眼鏡を処方する専門家としては、
眼精疲労を軽減するためには
いかに「目に負担をかけないか?」
を考え、
それをお客さんにわかりやすく説明し
「そんな方法があるんだ」
と感動を伝えられないといけないと
僕は思います。

眼鏡屋さんや眼科さんでも
まだまだ中近両用の認知や知識が
不足していることは事実ですので
この知識を参考にして
ぜひ実践で活用していただければ幸いです

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す