「初級編」乱視処方の考え方を解説

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視力測定初心者でもベテランでもお客さんに、これを聞かなければ測定が始まらない「質問」が最低3つありますそれは、「今の眼鏡の見え具合、今の眼鏡の使用年数、新しい眼鏡でどこを見たいか」です。

眼鏡をかけるのが初めての人には「裸眼で見ていて、どこを見る時に困るか」でOK。なぜそれを聞かなければいけないかというと、眼鏡は今まで使用した年数によって見え具合が記憶され、新しい度数に変化があるほど違和感を感じます。

若ければ変化に慣れやすく耐えられますが、歳を重ねるごとに慣れることを拒絶します。

イメージとしてはこんな感じです

このような人間の特性を理解した上で眼鏡の度数を考えていくことで、お客さんにとって精度の高い処方度数となるのです。

乱視の処方を失敗しにくくするために・乱視の種類を知る・3つの法則を知る・近視と乱視が入った場合の処方目安 こちらを解説していきます

測定初心者が近視処方と同じく初期に体験するであろう「乱視」の処方ですが、近視と乱視が入るだけで何だかむずかしく感じますよね?

安心してください。

乱視は次に紹介する法則を知っているだけで難易度が圧倒的に激減します。

まず乱視の種類は大きく分けてこちらの3つ

直乱視(180度方向)タテに物が重なって見える倒乱視(90度方向)ヨコに物が重なって見える斜乱視(45度、135度方向)ナナメに物が重なって見える

目を細めて見える人は直乱視の場合が多いことを覚えておくと次に紹介する法則が理解しやすくなります。

⬇️乱視の法則は次の3つです

・180度方向なら3分の1以下を目安に入れる。

・90度方向なら2分の1以下を目安に入れる。

・斜乱視なら3分の1以下を目安に入れる

180度方向なら3分の1以下を目安に入れる 

例えば完全矯正値がC−3.00なら1.00より少なめ。理由は、目を細めれば見えるので数値を入れられる違和感を少なくした方が慣れやすいからです

90度方向なら2分の1以下を目安に入れる。例えば完全矯正値がC−3.00なら1.50より少なめ。理由は、目を細めても見えにくいのでしっかりめに入れた方が満足度が高くなりやすいからです

斜乱視なら3分の1以下を目安に入れる。例えば完全矯正値がC−3.00なら1.00より少なめ。理由は、今までナナメに見えていたものがまっすぐになり平衡感覚が変わるので違和感が出やすいため、少なめから始めた方が慣れやすいからです

乱視はこの3種類の基本法則をしっかり覚えて、

「眼鏡を作るのが初めて」という方には、近視と乱視が合わさった場合、近視の数値を8割入れて、まだ見えにくい場合に法則の乱視数値を目安に足して違和感が少なければOKという考え方です。

ただし、年齢的に老視(いわゆる老眼)が入ってくる方には近方を見る時には眼鏡のかけかえか累進レンズをおススメするなどの説明は必ず必要となります。

KBを持っている方なら、KBの数値と今回の完全矯正値を比べ、「どこの見え方をどうしたいのか?」というヒアリングをしっかりとすることで処方ミスを減らすことができます。

この時に、完全矯正値とKBの数値に大きな開きがあったり、大幅な数値変化が必要な場合には「KBの慣れ」が関係してきますので、こちらの動画も参考にしてみてください。

⬇️ではそれを踏まえてこんな例題をやってみましょう

裸眼視力0.2KB S-3.75 乱視なし 矯正視力0.6レフ値 S-5.00 C-2.00 AX180完全矯正値 S-4.75 C-2.00 AX180視力は1.2まで出るものとする(左右バランスはとりあえず無視でOK)

主訴遠方を今より見やすくしたいスマホをよく見る18歳男性

まずは基本となる問診3つを確認します。

「今の眼鏡の見え具合、今の眼鏡の使用年数、新しい眼鏡でどこを見たいか」でしたね。

問診の結果、このような情報がわかりました。

「遠方が見えにくい、使用年数3年、運転で使いたい」

ここからさらに深掘りします。

「運転はよくしますか?」→はい「眼鏡をかけた状態で、パソコンなどをよく使いますか?」→はい

この質問から、このお客さんは常時眼鏡をかけていて主訴の運転やPCスマホも眼鏡をかけて見ることが多いことがわかりました。

それを踏まえて数値を見直します。

運転だけ見やすくするならS面を上げてもいいですが、PCスマホを眼鏡をかけて見ることを考え、あえてS面は触らずC面だけ入れる方が距離の関係から良いと予測します。

直乱視方向なので法則に従い三分の一以下の数値S-4.25 C-0.50 AX180ぐらいが良いかもしれません。この度数で視力がどれだけ伸びるかにもよりますが、おそらく0.9から1.0くらいにはなるはずです。

もし「もう少し見たい」となったら乱視をもう1段階か2段階上げるなど、お客さんの反応と視力の伸びを見ながらムリのないところを探しましょう。仮に問診結果が違った場合も考えてみましょう。

「運転はよくしますか?」→はい「仕事でPCなどをよく使いますか?」→いいえ

この場合は遠方に特化したいという主訴を尊重し、S-4.50 C-0.50 AX180ぐらいが良いかもしれませんね。「もう少し見たい」となったらC面を1段階から2段階上げてみて、お客さんの反応と視力の出方を確認しムリのないところで着地しましょう。

この考え方がわかれば、倒乱視や斜乱視でも考え方は同じです。

大切なことはS面の数値は完全矯正値の8割ぐらいが目安になるように入れて乱視はそこからさらに「見たい」となったら法則に従って数値を入れるといった考え方ですね。

なぜ無闇にS面をフルで入れないかというのは、次に紹介する老眼数値が入る世代に対して効果的な処方ができるようになるからです。

近視と乱視が入った場合の処方例

では次に同じ数値と同じ主訴で年齢が変わるとどうなるのか?を検証していきましょう。

裸眼視力0.2KB S-4.00 乱視なし 矯正視力0.6累進レンズ経験なしレフ値 S-5.00 C-2.00 AX180加入+1.75完全矯正値 S-4.75 C-2.00 AX180視力は1.2まで出るものとする(左右バランスは無視)

主訴遠方見やすくしたいスマホよく見る50代男性

同じく基本となる問診3つを確認します。

問診の結果このような情報がわかりました。

「遠方が見えにくい、使用年数は3年、運転で使いたい」ここからさらに深掘りします。

「運転はよくしますか?」→はい「仕事でPCなどをよく使いますか?」→はい「眼鏡をかけて今PCなどは見えていますか?」→はい「運転時とPC使用時に眼鏡は1本で見たいですか?」→はい

若い人の時より質問が増えているのに気づきましたか?この質問から、このお客さんは常時眼鏡をかけていて運転やPCスマホも眼鏡をかけて見たいことがわかりました。

始めの質問でこの方が「PCも見たい」と言わなかったのは、現在の度数だとPCが見えていて運転だけに困っていたからだと推測ができます。

単焦点レンズの場合S面度数を変えれば遠方は見やすくなるでしょうし、C面度数も少しならPCの見え方に支障は出ないかも知れません。

しかし、加入度数が+1.75出るのであれば単焦点レンズでは要望に限界がありますし、1本で見たいと回答があるので累進レンズを紹介するのは自然な流れかと思います。

では数値を見直しながら処方するとしたらどうなるか?処方例S-4.00 C-0.75 AX180の単焦点で何とかPCは耐えてもらうか

S-4.50 C-0.50 AX180 加入+1.50の累進レンズをオススメするかになると思います。

ここで質問の回答が違った場合はどうなるのか?ですが、

「運転はよくしますか?」→はい「仕事でPCなどをよく使いますか?」→はい「眼鏡をかけて今PCなどは見えていますか?」→はい「運転時とPC使用時に眼鏡は1本で見たいですか?」→いいえ

の場合

眼鏡をKBと併用できるのであれば無理に累進レンズにする必要もなくなります。処方S-4.50 C-0.50 AX180からS面を1段階上げてみたりC面を1段階か2段階上げてもいいでしょう。

もし累進レンズも見てもらって「便利そう」と思ってもらえれば、加入数値が+1.75くらいまでは左右の歪みの少ないので使いこなされるかもしれませんね。

乱視の処方でミスらないようにするにはたった3つの法則と軸度の変化量を見極めることです。

同じ数値や同じ主訴であっても、質問内容と返答次第で用途や度数も変わってくることがわかりますよね?

乱視が入ると少しややこしく感じるかもですが、まずは「3つの法則」を理解してお客さんの反応をしっかり観察できれば乱視処方も怖くありません。

乱視の法則を理解すれば「遠視」であろうと「MIX」であろうとそこまでビビることもなくなるので、しっかりと「3つの法則」は覚えておくようにしましょう。
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