「遠視眼鏡処方の考え方」を解説します

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視力測定初心者でもベテランでもお客さんに、
これを聞かなければ測定が始まらない「質問」が最低3つあります。


それは、
「今の眼鏡の見え具合、今の眼鏡の使用年数、新しい眼鏡でどこを見たいか」
です。





眼鏡が初めての人には「今裸眼で見ていてどこを見る時に困るか」でOK。


なぜそれを聞かなければいけないかというと、眼鏡は今まで使用した年数によって見え具合が記憶され、新しい度数に変化があるほど違和感を感じます。



この違和感をなるべく少なくしつつ

お客さんの主訴にそった処方ができることが、精度の高い測定だと僕は考えます





ではまず、遠視の人を測る場合に気をつけるべき点を解説します





遠視は生まれつきの場合もあれば

子供の頃、弱視矯正がされなかったりと
いろんな場合があります。



眼鏡が「今回初めて」という16歳以下で遠視の数値が出た人を測定することになったら
迷わず眼科に送ってください。



レフの数値が+1.00以内なら

「まぁいいか」とも思いますけど

一回は案内する方が優しいなと思います







遠視の人は20歳までに何らかの矯正をしてきていることが多いので、
KBを持っていることがほとんどです。



なので遠視はKBベースの処方がマストになります。



もし破損などでKB度数がわからない時は、
体感的にKBの見え方がどんな見え方だったのか詳しく深掘りして
仮枠で細かく近づけていくことになります。



ではまず「KBが無い場合」の遠視処方について解説しますね。



ここから

遠視処方の例題 1


⬇️KBを破損してデータがレフ値のみの場合。



裸眼視力0.5


レフ値 S+2.00 C-1.00 AX90

加入度数 +1.25

完全矯正値 S+1.50 C-1.00 AX90 視力は1.0まで出るものとする

(左右バランスは無視)



主訴✍️

遠方見やすくしたい

スマホよく見る

45歳男性

おそらくKBは乱視が入っていて単焦点レンズだった





まずは基本となる問診3つを確実に確認します。

「前の眼鏡の見え具合、前の眼鏡の使用年数、新しい眼鏡でどこを見たいか」

するとこんな情報が返ってきました。

「使用年数は5年」

「眼鏡で運転していた」

「眼鏡をかけてPCやスマホを見れていたが疲れやすかった」

「新しい眼鏡は近方も見やすくしたい」



この情報をまとめると、
「遠方は見やすかったが近方は少し見えにくかった」
「新しい眼鏡は近方も見やすくしたい」が主訴とわかりますね。



では「KBデータがなく遠視と乱視が入った場合の処方」で
仮枠にどれぐらいの数値を入れるのか?

ですが、



「S面完全矯正値の半分以下」

「乱視の法則と同じ」



これが目安となります。



では、ここからさらに深掘りします。



「一本の眼鏡で運転やPC作業スマホは見たいですか?」→はい



この回答から考えられるのは、S面を強めにした単焦点レンズか、
遠近両用レンズが提案候補となります。



では先ほどのデータにあてはめていきましょう。



裸眼視力0.5

 レフ値 S+2.00 C-1.00 AX90

加入度数 +1.25

7A値 S+1.50 C-1.00 AX90 視力は1.0まで出るものとする

(左右バランスは無視)

主訴✍️

遠方見やすくしたい

スマホよく見る

45歳男性



まず「KBが単焦点だと思う」ということからKBの見え方がどれぐらいだったのか?を探します。

法則にあてはめると

この場合、

7A(S+1.50 C-1.00 AX90 )

⬇️
S+0.75 C-0.50 AX90 ぐらいが妥当な数値かと思われます。



この数値で遠方の見え具合や近方の見え具合がKBに近いか遠いか?を
確認し、反応を見ながら度数を変えていきます。



もしこのKBと近い見え方で、近方をもう少し見やすくしたい主訴を単焦点で
行うならS面に+度数を0.25ずつ足して遠方が見えにくくならない場所を探します。





遠方が見えにくくなった一歩手前の度数で近方の見え方が良いならそれでOKですし、もう少し近方を見やすくしたいと希望があれば累進レンズに切り替えてみます。





遠近両用で仮枠に入れるなら数値は、
S+0.75 C-0.50 AX90 ADD1.25あたりが妥当な数値です。




単焦点での限界と累進レンズの使用方法などを伝えてどちらが生活環境に
適しているか?をお客さんに選択してもらいましょう。



遠視処方の例題 2

同じ度数で主訴が違う場合も考えてみましょう。

裸眼視力0.5

レフ値 S+2.00 C-1.00 AX90

加入度数 +1.25

完全矯正値 S+1.50 C-1.00 AX90 視力は1.0まで出るものとする

(左右バランスは無視)

主訴✍️

遠方見やすくしたい

スマホよく見る

45歳男性

おそらくKBは乱視が入っていて単焦点レンズだった

3つの質問の回答が同じように

「眼鏡で運転していた」

「眼鏡をかけてPCやスマホを見れていたが疲れやすかった」

「新しい眼鏡は近方も見やすくしたい」



「一本の眼鏡で運転やPC作業スマホは見たいですか?」→いいえ

「遠方はしっかり見えてPCやスマホは別の眼鏡でもOKですか?」→はい


この回答から考えられるのは、用途ごとにしっかりと見たいという主訴が
判りますので、

単焦点で見たい部分ごとに100点となるように
提案を変えていきます。

まず運転などの遠方をしっかり見たい主訴の仮枠度数目安は、
例題1と同じ
S+0.75 C-0.50 AX90ぐらいから始めて、希望に合わせてS面を0.25前後したり


C面を-0.25足してみたりしながら反応をみて合わせましょう。



次にPCやスマホを見る場合は距離が中間から近方に変わるので、


完全矯正値のADD1.25を参考にすると仮枠に入れる目安は
S+0.75 C-0.50 AX90にADD1.00か1.25を足した
S+1.75 C-0.50 AX90あたりが目安の数値となります。



あとはそこからS面に+度数を0.25ずつ足しながら希望の距離を聞き出し、
「ここからここまではこの度数で見えます」と見本の新聞やパネルを見せ、
ジェスチャーを交えながら具体的に距離を認識してもらいましょう。



遠視処方の例題 3
最後にKBがある場合の処方例を解説します。



数値と主訴は同じとします。

裸眼視力0.5 

 レフ値 S+2.00 C-1.00 AX90

加入度数 +1.25

完全矯正値 S+1.50 C-1.00 AX90 視力は1.0まで出るものとする

(左右バランスは無視)

主訴✍️

遠方見やすくしたい

スマホよく見る

45歳男性

同じく3つの質問をします。
「前の眼鏡の見え具合、前の眼鏡の使用年数、新しい眼鏡でどこを見たいか」

回答は以下の通り



「使用年数は5年」

「眼鏡で運転していた」

「眼鏡をかけてPCやスマホを見れていたが疲れやすかった」

「新しい眼鏡は近方も見やすくしたい」

さらに深掘りします。







「一本の眼鏡で運転やPC作業スマホは見たいですか?」→はい

「遠方はしっかり見えてPCやスマホは別の眼鏡でもOKですか?」→いいえ



この場合は一本の眼鏡でKBより遠方と近方を見やすくしたいという主訴が
わかりますね。

データを見ながら考えていきましょう。



裸眼視力0.5 

KB S+1.25C-0.50 AX90 視力0.9


レフ値 S+2.00 C-1.00 AX90

加入度数 +1.25

完全矯正値 S+1.50 C-1.00 AX90 視力は1.0まで出るものとする

(左右バランスは無視)

KB S+1.25C-0.50 AX90

完全矯正値 S+1.50 C-1.00 AX90



⬇️ 仮枠に入れる処方例は、
S+1.50 C-0.75 AX90 の単焦点か、
S+1.50 C-0.75 AX90 ADD1.00の累進レンズあたりが妥当かと思われます。

KBの視力が0.9で最高矯正が1.0なので乱視を0.25足せばおそらく視力は
1.0出る予想と、S面を+0.25足すことで近方も見えやすくなるというのが
根拠です。



もしS面を+0.25足すことで遠方が見えにくく感じるのなら、
C面だけ-0.25か-0.50足してそのまま単焦点で近方は我慢するか、
遠近両用系のレンズで歪みなどの使用感が悪くなければそちらを
おすすめすると良いでしょう。



遠視の処方で大切なことは、遠視の遠方度数と乱視の法則をかけあわせることです。



遠視はKBよりもS面に+度数を入れることで遠方が見えにくくなる場合があります。



累進レンズの加入度数を不用意に上げるより、S面を変化させることで「遠方も近方も見えやすくする」のが理想ですが、S面を変化させると遠方が見えにくくなるならC面を変化させる。



それでも無理なら遠方はしっかりめの数値を入れた累進レンズにするなどの提案に切り替えるのが良いかと思います。





お客さんはいろんな負の要素を伝えてくれますが、
案外今と同じくらいでもOKという場合が多いです。



よほど困っているなら度数は大きく変えて、そのメリットと
デメリットをしっかりと伝え、レンズ設計の限界があることを
理解してもらいましょう。





遠視度数処方は、S面と加入度数が大きく関わってきます。


⬇️まずは法則をしっかり覚えて目安となる数値は
どれだけ入れたらいいのか?を覚えておきましょう。

「S面完全矯正値の半分以下」

「乱視の法則と同じ」



ここまで読んでいただきありがとうございます

テキストだけではわかりにくいところも多いと思いますので、

YouTubeに動画でも解説していますので、
よければそちらも参考にしてみてください。
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