Efficiency to Error Ratio (EER)

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トレーディングシステムの評価項目は多岐に亘ります。代表的なものでは、勝率、プロフィットファクター(PF)、損益レシオ、最大ドローダウン、などが挙げられるでしょう。

しかし、これらは単一で評価に用いられるものではなく、総合的に判断されるべきものです。そのため、これらの数字を並べただけでは、そのシステムの性能を把握することは困難かもしれません。 

システムの性能を判断するには、資産カーブを見ることが一番だと考えます。これには、期待効率やドローダウン、安定性等の重要指標が含まれるからです。

ただ、資産カーブだけでは定量的な判定に限界があり、重要指標に関しては数値化して併記する必要があることも事実です。 

私たちがトレーディングシステムを開発する際、重要なのは、そのシステムがどれくらいの利益を上げてくれるのか(期待効率)、またリスクはどれくらいか、といったことでしょう。 

期待効率は、資産カーブの傾きを求めれば分かります。日付などの時間データに対して、累計資産の推移をプロットしたものが、資産カーブです。 

エクセルでSLOPE関数を用いれば、資産カーブの傾き、すなわち期待効率を算出できます。 
リスクに関しては、累計資産の標準誤差を求めればよいでしょう。これは累計資産の日付に対するSTEYX関数を用いれば算出できます。

資産カーブの実際値が、推定値(回帰直線上の値)から標準誤差の2倍分差し引いた値以上にある確率は95%であると考えられます。すなわち、多くの場合、この標準誤差の2倍分下方という基準が、リスクの許容限界ということになるでしょう。 

さて、では様々なトレーディングシステム間の性能を比較するには、どうすればよいのでしょうか。期待効率や標準誤差を個別に比較しても、システムの良し悪しは分かりません。 

期待効率が高くても標準誤差が大きければ、実際に運用できる資金は限定されてしまいます。その結果、実効効率は低下することになります。 
逆に、期待効率が低くても標準誤差が十分に小さければ、レバレッジを大きくすることで実効効率を増加させることができるでしょう。

そう考えると、単純に期待効率と標準誤差との比をとれば、各システム間の性能を比較することができそうなことが分かります。 

電気回路等のSN比(SNRまたはS/N)に習って、これをEER(またはE/E)と呼ぶことにします。表題に掲げたように、これは「Efficiency to Error Ratio」の頭文字を取ったものであり、「(期待)効率」対「(標準)誤差」比を表します。 

なお、1日当たりの期待効率を用いるとEERの値が小さくなりすぎるため、実際には365日(1年)当たりの期待効率を用いることにします。 
1日当たりの期待効率をe、標準誤差をδとすると、EERは次式で求められます。

   EER=365e/δ 

複数のシステム間でEERの大小を比較することによって、システム性能の判定を行うことが出来るようになります。あるいは、EERの目標値を設定することにより、効率的なシステム開発が可能になるでしょう。 
当然、EERが大きいほどシステム性能は高くなります。

なお、EERの算出は本質的に直線近似可能な資産カーブについてのみ適用されます。したがって、複利運用を前提とした資産カーブにはそのままでは適用できません。

この場合は、累計資産の対数を取って期待効率や標準誤差を計算してやる必要がありますが、そうして得られたEERを他のシステムと比較できるかどうか、については議論の余地があります。 

このEERは、株式のBUY&HOLDの結果としての資産カーブにも適用できます。すなわち、単純に株価の終値の推移にも適用することが出来るのです。 
ただし、株価の終値の推移は、実は複利リターンであることが分かっています。そこで、これを単利リターンに変換してやる必要があります。やり方は次の通りです。

まず、日々の株価の損益率=(当日株価-前日株価)/前日株価 を求めます。そして、それを日々足し合わせて累計を取ります。 
最後に、この累計データの期待効率と標準誤差を求め、EERを算出すれば、それが単利リターンのEERとなります。

以上、EERという指標を導入することで、トレーディングシステムの評価に有用であるばかりか、株式の評価にも利用できることが分かりました。 
現在は相対的な評価に用いることがほとんどですが、EERが持つ絶対的な意味合いについても考えてみる意義があるかもしれません。

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