ギャップと日差

記事
マネー・副業
株価の日々の変化を表す場合、通常は終値を用います。もう少し凝った見方をする場合は始値を加え、さらには高値や安値を表示します。これらは、新聞の株式欄等に記載されているいわゆる4本値というものであり、4本値をチャート化したものがローソク足ということになります。

これらの値を比べて見ると、2つのグループに分けることができます。最初のグループは始値と終値で、これらは時間的順序が明確になった値です。すなわち、これらは株価と時間という2次元のデータを有していると言うことができます。

一方、残りの高値と安値は、その値を付けた時間を特定することができません。さらに言えば、高値と安値の順序付けをすることもできません。すなわち、これらは1次元のデータであり、始値や終値と同列に扱うことはできないのです。

さて、株価の時間的な変化を分析する場合、通常は株価の終値を用います。株価の始値を用いるという人も存在するかもしれませんが、日々の取引で最終的に合意された株価という意味で、終値を用いることが一般的です。ニュースなどでも、終値のみの報道がなされる場合が多いようです。

私たちがトレードの判断を行なう場合も、当日の終値で判断して翌日の始値(寄値)で売買することが多いのではないでしょうか。テクニカル指標についても、終値のみを演算してシグナルを出すパターンが少なくないように思います。

しかし冒頭で述べたように、終値と始値とは元々同じグループであり、その情報の量や質にはほとんど差はありません。むしろ始値の方が一般に出来高は大きく、より確実に取引が行なわれることから、始値を何らトレードの判断材料にしないのは、かえって不自然なのではないでしょうか。

かといって、今まで終値を用いていた判断を始値に変更しただけでは、大きな違いは生じないでしょう。例えば、株価推移を終値の推移から始値の推移に変更したとしても、その移動平均線とのクロスのタイミングはあまり変わらないと思われます。

株価の推移は、一見ランダムに見えます。もしも、終値しか見ることがなかったら、思考はそこでストップします。ランダムな動きはどうすることもできないから、いかにその動きのタイミングをつかんで上手くトレードを行なうかに注意を集中します。これは、テクニックの問題になります。

もちろん、このテクニックを磨くことでトレード成績を上げ、常に勝ち続けているトレーダーは存在するでしょう。しかし、私たちのほとんどがプロ野球選手にはなれないように、テクニックだけで勝ち続けることができるトレーダーは、ほんの一握りしかいないのかもしれません。

それでは、どうすればいいのでしょうか?
そのために、私たちは大きく2つの方策を採ることになります。

一つは、株価のランダムに上下する動きを滑らかな動きに変換する方法です。移動平均に代表される多くのテクニカル指標が、これに相当します。
この場合、元となるデータの量にはあまり重点が置かれません。データのボラティリティがいかに大きかろうが、データがどれだけ簡略化されようが、指標の算出に必要なデータが含まれてさえいればよいことになります。

これは例えばジグザグの動きを平滑化することにより、トレードのタイミングをつかみやすくして判断を容易にします。あるいは具体的な目標数値を設定して、株価がその目標に到達したらトレードを行なうなどとする場合もあります。
これらは総じて、情報を効率的に絞り込んで集約・単純化する方策であると言えます。

もう一方は、より多くの情報を用いたり、それらを細かく分解したりする方法です。終値だけでなく始値も用いたり、出来高を用いたり、さらにはファンダメンタル指標を用いたりします。
情報量は多くなりますが、より多方面からのアプローチが可能になります。だからといって、的確なトレード判断が可能になるとは言えませんが、できるだけ多くの生の情報を生かそうという方法です。

これらは必ずしもどちらか一方にしなければならないというものではなく、通常は複合的な判断が行なわれます。
例えばPERなどで銘柄を絞り込んだ上で、さらに複数の指標を判断材料にしたりします。その結果、トレード判断の正確性は向上するかもしれませんが、トレード機会が減少することになるでしょう。

話を少し戻しますが、株価のランダムな動きを滑らかにするには、演算を用いた平滑化しかないのでしょうか。平滑化を行なえば情報量が減少します。これは統計的には明らかに不利な方向であり、正確性の減少につながりかねません。

市場の持つ不思議な性質の一つに、4月14日の記事「市場はランダムか」で述べた偏西風に似た現象があります。偏西風ほど強い風ではありませんが、一定方向に吹き続ける微弱な風を感じることができます。しかし、それは通常の状態では感じることができません。

株価終値の前日比増減を、ギャップ(前日終値~当日始値)と日差(当日始値~当日終値)に分解することで、それを感じることができるようになります。
株価の推移をチャート化するように、ギャップや日差の累計をチャート化してみると、そこには明らかに株価チャートとは異なるトレンドを見出すことができるでしょう。

それこそが上述した風なのです。この風はあまりに微弱であるために、ただちにそれを捉えて収益に結び付けることはできないかもしれません。しかし、リスク管理やマネーマネジメントという装置に通すことにより、収益を得ることが可能となるのです。

このギャップと日差の累計チャートには、トレンド以外にも、株価チャートと比べて日々のバラツキの減少が見られる場合があります。その原因は定かではありませんが、投資家心理や行動が一因であることは間違いないでしょう。

従来はあまり使われることがなかった始値ですが、ギャップや日差の算出にはなくてはならないものであり、終値と対等な位置付けにあります。
テクニカル指標の中には、ギャップや日差(の累計)に対して終値と同等の演算が可能であるものが少なくありません。これらを導入することにより、私たちのトレード判断材料は飛躍的に増大することになります。 

市場の持つ性質を明らかにしようと、過去から現在に至るまで数多くの研究がなされ、その結果が多くのトレードで活用されています。しかし、ギャップや日差のように、市場にはまだまだ明らかにされていない不思議な性質が数多くあることでしょう。
それらの一つ一つを解明して行くことが、私たちトレーダーの使命の一つなのかもしれません。

⇒Kフロー ブログ


サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す