売上高と利益の微妙な関係

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マネー・副業
新型コロナウイルスの影響で、2020年度業績を減収と見込む企業が7割近くに達する、との報道がありました。利益に関しても、似たような傾向となっているようです。

さて、企業業績の中で注目されるのが、売上高と利益であることは言うまでもありません。一般常識的な話題で恐縮ですが、今回はこの売上高と利益について考えてみたいと思います。なお、ここで言う利益は、特に断らない限り営業利益を指すものとします。

通常、売上高が10%上昇すると利益はどれくらい増えるでしょうか。もちろん、各企業によって財務内容は異なるため一概には言えませんが、一般的には売上高の上昇率を上回ると考えられます。

以下、簡単なモデルを使って説明します。

モデル企業の売上高を1,000億円、利益率を10%とします。1,000億円の内訳は、利益が100億円で、残り900億円の内、材料費等の変動費が1/3の300億円、設備や人件費等の固定費が1/3の300億円、管理費等が残り300億円であるとします。また、この状態で、設備と人員の稼働率には余裕があるものとします。

今、売上高が10%増えて1,100億円になった時、利益もまた10%増の110億円になるのでしょうか。

設備と人員には余裕があるのだから、売上高が1,100億円になったとしても固定費は300億円のままです。変動費は売上げに応じて増加すると考えられるので、10%増の330億円となります。管理費は変動費ほど増えないまでも、売上高の上昇率の半分くらいは増加するとして、315億円とします。

これらを売上高から差し引くと残りは155億円となり、利益は何と55%増ということになるわけです。

もちろん、これは設備と人員に余裕があるという前提が必要ですが、このいわゆる量産効果は非常に大きなものであるということを、改めて認識することが出来ます。

当然のことながら、これは製造業において顕著であり、サービス業などでは利益増加率=売上高増加率に留まる場合もあるかもしれません。ただし、通信業界などでは膨大な固定費負担があるため、売上高の増加は急速な利益率の改善・増加につながることになるでしょう。

以上のことは、逆に捉えれば、売上高の減少が大幅な利益の減少となって経営を圧迫することが分かります。元々利益率が低い会社では、わずかな売上高の減少で一気に赤字転落する場合もあり得ます。

経費削減等の効率化でその場を凌ごうとしても、根本的な構造変化が伴わない限り長続きはしないでしょう。この構造変化がいわゆるリストラであり、固定費の削減によって、売上高の減少による大幅な赤字転落を食い止める狙いがあるのです。

近年、製造業においても、派遣社員の大量導入やセル生産方式への転換などにより、固定費比率が低下してきています。その結果、従来は売上高の増減に対してブレが大きかった利益率が、売上高に対して安定的に推移することが期待できるようになります。

売上高増加に伴う大幅増益が見込めなくなる代わりに、売上高減少による赤字転落の危険性が減少することになるわけです。これはロバスト性が高い状態、言い換えればリスクが小さい状態ということになり、経営的には従来より安定した状態であると言えましょう。

以上のことを踏まえた上で各社の企業業績を見ると、いろいろなことが想像できます。

売上高の増減のわりに利益の増減が多い企業では、設備や人員の効率活用が進んでいなかったと考えられます。一方、売上高の増減の割合と利益の増減の割合が近い企業では、固定費の削減が進んでいるのかもしれません。

もちろん、自動車業界では鋼板などの材料費の上昇、化学業界では原油高による材料費や経費の上昇等の要因があり、一概に論じられるものではないことに注意する必要があります。

新型コロナウイルス環境下では、一部の業種を除いて売上高の減少は避けることが出来ません。その場合、上述したように、本来は固定費の削減が最も効果的であるべきはずです。
しかし、現実にはそうはなっていません。むしろ、感染防止対策として固定費は増加傾向にあるのではないでしょうか?

政府や各自治体も、一応、家賃補助や固定資産税の減免等の施策を行ってはいるようですが、到底、減収分を補える額ではありません。
事業継続を後押しするのであれば、それらに加えて、新型コロナウイルス対策のための改装費用を助成するとか、やるべきことはまだまだあるはずです。

それでも結局店や会社がつぶれてしまったら、助成費用が無駄になるとか、妙な下心を感じざるを得ません。事業継続を本当に願っているのなら、今現在の状況に対して最大限の支援施策を行うことが、最重要なのではないかと思います。

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