トレード新思想体系~数理トレード学への招待~

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0.レポートの概要


トレードの世界には、数多くの「常識」があります。「移動平均の算出期間は、5日、20日(25日)、75日でなければならない」とか、「トレンドラインは株価推移における複数のピークを通るように引かなければならない」とか、これらは常識というよりは、むしろ「定石」と言った方が良いのかもしれません。

あるいは、様々なオシレータ指標やボリンジャーバンド、一目均衡表、ペンタゴンチャートなど、数多くの分析手法が提案され、活用されています。
しかし、これらの多くは客観性に欠け、例えば何故そのパラメータを採用したのか、という疑問に対する回答は、主観の域を出ていません。

これら従来のトレードテクニック(以下、トレード学)に対し、曖昧さを排除し、客観的な視点でトレードを研究する実学が、「数理トレード学」ということになります。
従来の常識に対し、「客観性に基いた分析を目指す」という、逆説的ではありますが、いわば非常識なアプローチを目指します。

これは、口で言うのは簡単ですが、実際に行うとなると一筋縄では行きません。何よりも、トレード学は実学であるべきであり、抽象的な理論などは役に立ちません。
たとえどんなに泥臭くても、それを活用することによって収益が期待できるものでなければなりません。

だからこそ、従来の常識的なトレード学がいまだに利用され続けるのであり、一部の経済学者や識者たちがいくら鼻を括った態度を示そうが、実務レベルでトレードを行う者たちの行動指針となっているのです。

そのような位置付けにあるトレード学ですが、あくまで主観的な体系であるが故に、同じ投資対象であっても、運用者の解釈次第で異なった結果となってしまいます。
また、統計的な視点に欠ける場合が多いため、トレード機会を合理的に説明できません。

数理トレード学は、そのような問題に鑑み、与えられた条件に対し、客観的、普遍的、一意的なトレードの実現を目指します。
すなわち、決められた条件下において、定義に従ってトレードを行えば、誰がいつ行っても、同じ結果が得られることになります。

更には、トレードに関する実学であることを考えると、その結果はプラスの期待値を持たなければなりません。
机上の空論ではなく、最終的なアウトプットとして、有効な結果を得ることが重要です。

これを突き詰めたものの一つが、いわゆるシステムトレードであり、トレーディングシステムとなります。
また、個々のトレードにおいても、客観的な分析を可能とすることで、一意的な結果を得ることを目指します。

以下、簡単に本レポートの概要を説明いたします。

第2章では、株式市場の性質について解説しています。
株式市場における株価推移は、一見ランダムのように見えますが、見方を変えることで、規則的な世界が見えてくる場合があります。

また、株式市場には常に資金が流出入しています。それは、一見スタティックな株式市場が、実はダイナミックな動きを呈していることを意味しています。
そのダイナミックな動きが市場そのものを脈動させ、単なる株価推移を見ただけでは説明のつかない動きを演出しています。

そのような市場の性質、新たな知見を、簡単な数式と実例を交えて、客観的に説明しています。その過程において、非常に重要な指標である「平均保有株価」について、その求め方を含め詳細に解説しました。
平均保有株価は、移動平均株価とは異なり遅行性が存在しないことから、トレンドフォロー分析における精度向上が期待できます。

第3章では、トレードにおけるリターンについて、解説しています。
リターンには複利リターンと単利リターンがあります。複利リターンは定期預金などでおなじみであり、一般的には指数関数的に増加するイメージです。一方、単利リターンは、分配金あり投資信託などに近い印象かもしれません。

トレードなどでは、複利リターンが得られる複利運用を行うことが一般的だと、考える方も少なくないでしょう。
しかし、実際には多くの場合で、単利リターンが得られる単利運用の方が、効率が良いことが分かっています。

それを分ける最大のポイントは、各トレード毎の損益とそれらの標準偏差です。総損益が大きくても、各トレード毎の損益が大きくばらついていると、複利リターンは単利リターンよりも小さくなります。
すなわち、複利運用するよりも単利運用に徹した方が、より早くより大きな収益が得られる可能性が高いと言うことです。

第4章では、実際にトレードを行うに当たっての、様々なテクニックを紹介しています。
これは、従来のテクニカル分析とは一線を画するものであり、本レポートでしか知り得ない情報です。ただし、実際にはSSブログを丹念に読み込めば記述してありますが、膨大な記事の中から見つけ出すのは容易ではないでしょう。

中でも定額投資法は、数学的な裏付けのある投資法です。これは、ドルコスト平均法とその対極にある逆ドルコスト平均法を組み合わせ、更に単利リターンの最大化を図った手法であり、リバランス運用にも通じるものです。

また、ギャップトレードの一種である裏デイトレードは、銘柄依存性が強いという問題はありますが、適合する銘柄さえ見つかれば、複利効果とレバレッジ効果で爆発的な資産増加が見込めます。
ただし、それだけにリスク管理には十分に注意する必要があります。

第5章では、システムトレードに関する基本的な解説を行っています。
システムトレードの原理や重要指標、システム設計の概要や様々なシステム形態について、実例を交えて紹介しています。

特に、資産カーブやEERの考え方は、システムトレードにおいて欠かせないものであり、数式を交えて詳細に説明しました。
一方、プロフィットファクターや勝率、損益レシオといった、おなじみの指標に関しては、あえて取り上げていません。

システムトレードにおける重要な課題の一つに、トレーディングシステムの寿命があります。それについて、実際のシステムに基いた詳細な考察を行い、一定の結論を得ています。
それは、システムの多様性という考えからの帰結であり、量子力学的な視点を取り入れたものです。

第6章では、トレードにおけるリスク管理やマネーマネジメントについて、解説しています。
リスク管理の基本であるストップ基準について、トレンドラインに基づいた手法を紹介しています。

トレンドラインは主観的な指標として知られていますが、これを客観的かつ一意的に求める方法を提案してきました。
ここでは、その具体的な求め方について、詳細に解説しています。

また、ポートフォリオ運用の対象ペアの選定方法について、具体例を用いて紹介しています。一般的に用いられる騰落率間の相関は十分ではなく、より有効に機能する新たな手法を提案しました。

更に、第5章で紹介したEERの本質的な意味について考察し、それに基づいた資金管理方法を提案しました。また、オプティマルfと同義である最適レバレッジを用いて、運用効率や資金配分について解説しました。
最後に、証拠金取引におけるマネーマネジメントについても、言及しています。

本レポートの内容には、やや難解と思われる個所があるかもしれません。数式を扱う場面もありますが、エクセル等で検証するために最低限必要なものに留めました。
数式は基本的に結論のみを記しており、導出過程を知りたい場合は、拙著ブログ等をご参照ください。

本レポートを最後までご覧いただければ、数理トレード学とシステムトレードとの親和性の高さに驚かれることと思います。
システムトレードは数理トレード学の延長上にあり、トレードに関する多くの考え方が非常に類似していることが、お分かりになるかと思います。

本レポートについて、ご意見やご質問等ございましたら、ダイレクトメッセージにてお問い合わせください。
可能な限り、対応させていただきたく存じます。

なお、本レポートは事前のお断りなく、内容や価格の改定、有料購読範囲の変更等を行う場合があります。
予めご了承くださいますよう、お願い申し上げます。


1.はじめに


円周率πをご存知でしょうか。一時期、π=3と簡略化しすぎて問題になった、円周と円の直径との比のことです。私が習った頃は、π=3.14でした。ご存知の方も多いとは思いますが、πはけして終わりのない数、いわゆる無理数、更に言えば超越数と呼ばれる数なのです。

以前は、新しいスーパーコンピュータの性能を示すために、πの何千億桁もの計算が行なわれたものですが、最近はどうなんでしょう。
2021年8月時点の記事によると、スイス・グラウビュンデン応用科学大学の研究チームが、62兆8千億桁まで求めて世界記録を更新したとあります。

さて、このπですが、無理数であることから3.14の後には無限の数字列が続くことになります。その数字の出現の仕方には、何か法則性があるのでしょうか。

πと並んで有名な超越数に、e(自然対数の底)があります。これら2つの数は、乱数研究においても比較検証されてきましたが、その構造において明確な違いがあるようです。
簡単に言えば、πは極めて均質な乱数であり、eは階層構造を持つ乱数である、ということです。両者の違いは、それらを連分数表記した時の規則性の有無によるもののようです。

ところで、πの中に特定の数字列を見つける試みが、テレビ番組などで行なわれたのをご覧になった方も少なくないのではないでしょうか。
例えば、7が連続して7回出現する箇所が存在するか等、確率的には低そうな現象も、無限に続く数字列の中には存在するでしょうし、事実、存在しているようです。

この例えを、10進数ではなく2進数で考えてみたらどうなるでしょう。πを2進数表記しても良いのですが、以下では全くランダムに1と0とで構成された数字列を考えます。
1は株価が上昇、0は変わらずか下落、と考えてみましょう。すると、例えば"1001110101"という数字は、初日に上昇、・・・(中略)・・・、10日目に上昇、という株価の騰落を表すことになります。

ランダムウォーク仮説では、この1と0の配列には規則性はなく、全くランダムに現れるとされています。これが純粋な確率現象であれば、それも正しいでしょう。

有名な話ですが、ギャンブラーの誤謬というものがあります。1と0の出る確率がそれぞれ50%の時、例えば1が連続して5回出現した後に、1と0のどちらに賭けるかというものです。
数学的に考えれば、1と0が出る確率はどちらも50%であり、どちらに賭けても同じです。

しかし、「1が5回も続けて出たならば次も1に違いない」と考える人と、「1が5回も続けて出たのだから次は0に違いない」と考える人の、2つのパターンに分かれる場合が多いでしょう。
前者を「順張り思考」、後者を「逆張り思考」と呼ぶことにします。私たちは多かれ少なかれ、このいずれかの思考に陥りやすく出来ているようです。

さて、では実際のところ、1が連続して出現する確率はどれくらいなのでしょう。1か0かの判定を10回繰り返した時に、1が連続して5回以上続く確率を求めてみます。
10回の試行の内で1が5回以上連続という状態は、かなり少なそうに思えますが、実際に計算してみると、全試行の10.94%という出現率になります。これは思ったよりも大きい確率ではないでしょうか。

株式市場で、日経平均株価が5連騰もすると、そろそろ頭打ちだなどと考えがちですが、実際のところ、5連騰くらいなら確率的にも比較的起こりやすい現象と言えそうです。

こうして考えると、ランダムウォーク仮説にも一理ありそうです。事実、株価をランダムに生成するプログラムを作ってシミュレーションを行なうと、トレンドらしきものが生じる様子が見られます。これなどは、ランダムウォーク仮説を裏付ける一例とされているようです。

しかし、株価を前日終値~当日始値と、当日始値~当日終値とに分解し、それぞれの推移を実際の株価データとシミュレーションとで比較すると、両者は全く異なったものになる場合があります。ここで、シミュレーションデータに若干のバイアスを掛けてやると、実際のデータと傾向を一致させることができます。

これは逆に言うと、実際の株式市場には純粋なランダム推移以外に、長期に渡るバイアス、すなわちトレンドが存在することを示唆しています。このバイアスの力は非常に小さく、直近の株価の動きにはほとんど影響を与えません。

その結果、数日~数10日程度の株価の動きは、確率と日々の材料が支配していると考えて差し支えありません。しかし長い年月で見ると、このバイアスは確実に株式市場に影響を及ぼし続けていると思われます。

一般相対性理論において、アインシュタインは当初、宇宙項なるものを付加して、宇宙は定常状態にあることを示そうとしました。しかし、後にハッブルによって宇宙が膨張していることが観測されると、アインシュタインは宇宙項の導入を、人生最大の失敗だったと嘆いたと言うことです。

しかし、近年の宇宙物理学の進展により、実はこの宇宙には、アインシュタインが切り捨てた宇宙項に相当する力が働いているのではないか、と考えられるようになってきました。
株式市場における上述のバイアスは、この宇宙項とよく似た働きを持っています。それは、短期的には影響を見出すことは出来ませんが、長期的には確実に株式市場に影響を与え続けています。

私たちは従来、株価は予測できると信じ、様々なトレーディングツールを発明し、応用してきました。それが、金融工学の進展により、株価は予測できないという意見が台頭してくるようになりました。
また、近年では行動経済学が提唱され、私たちは合理的経済人ではあり得ないことを前提に、新たなファイナンス理論が構築されてきています。

結局のところ、株価は予測できるのでしょうか?
私の考えは否です。しかし、株価が予測できないことと、トレードで利益を上げられないということとは、全く別次元の話だと考えています。

株価の先行きが分からなくても、上述のトレンドをつかむことは可能かもしれません。また、株価の、あるいは株価等を変換して得られる指標の変化をいち早くつかむことで、収益機会を得ることが可能であると考えます。

これは電気回路におけるフィードバックループに例えることが出来ます。すなわち、ある回路からの出力信号に応じて、元の入力信号に修正信号を付加してやることで、出力信号を安定化させようとする電気回路です。

簡単な例では、株価が下がりだしたらドテンを行なって売り建てに転じ、その後株価が再び上がりだしたら再ドテンを行なって買い建てに転じる、といったことが挙げられます。
ドテンをしなければ、株価はどんどん下がり続け、出力である利益(資産)はどんどん減少するでしょう。そこにドテンというフィードバックを掛けることで、利益の減少を増加に転じさせるわけです。

このフィードバック回路が、トレーディングシステムに相当します。すなわち、トレーディングシステムとは、利益という出力を常に監視し、利益が減少に転じたことをいち早く検出し、直ちに入力(トレード)に利益の減少を食い止める指示(ドテン、Exit等)を出す、フィードバック回路である、ということになります。

私たちは大なり小なり、このフィードバック回路(トレーディングシステム)を持っています。ただ、入力に帰還させるフィードバック情報が間違っていたり、反応が遅れたりすると、回路は発振したりして制御不能に陥ります。
私も含めてトレードで勝てない人は、このフィードバック回路に問題があると思われます。

このレポートでは、最終的には安定したフィードバック回路の構築を目指します。そのために必要な考え方や予備知識等を、順を追って説明していきます。
本レポートが、少しでも皆様のトレードの参考になれば幸いです。


2.株式市場の性質


(1)市場はランダムか


株式市場において、株価はどのように推移するのでしょうか。さらには、それらの推移に何らかの法則性はあるのでしょうか。

もしも法則性が見出せるのであれば、それは同時に、株式トレードの必勝法を見つけたに等しいことになります。しかし、「株式トレードに必勝法などあるはずはない。だから、株価の推移に法則性はなく、株価はランダムに動いている。」と言う方が多いこともまた事実です。

ランダムウォーク仮説では、「株価は微小粒子のブラウン運動と同様に、ランダムに推移する。」と説明されています。株価が日々変化するのは、その株式を売買するトレーダー達が株価を上に突っついたり、下に突っついたりすることで、あたかもタバコの粒子が空気の分子に押されて不規則に拡散するように、フラフラと動くためだと考えることができます。

各トレーダーは、各自が入手した材料(データ)に基づいて、株価を突っつく方向を決定します。取り立てて大きな材料が存在しない場合は、各自の反応はまちまちであり、株価が突っつかれる方向はランダムになるでしょう。それらの材料は、ファンダメンタルズであり、テクニカルであり、または各自の経済事情や投資心理に基づいたものかもしれません。

しかし、重要な経済指標や企業業績、国際テロ、軍事的な緊張など、大多数のトレーダーが注目するような材料に対しては、彼らが株価を突っつく方向は揃いやすくなるでしょう。
その材料による企業価値の変化が再び均衡点に達するまで、株価はランダムの域を超えて、意思を持って力強く動くことになります。

この過程において、株価の動きはランダムではあり得なくなります。「元となった材料そのものの好悪がランダムなのだから、その結果生じる株価の動きもまたランダムであるはずだ。」と考える人もいるかもしれません。

しかし、ブラウン運動においては、前提として例えば空気の温度や密度が一定であることが要求されます。もしも勝手にこれらを変えることができたら、タバコの粒子を任意の方向に好きな距離だけ移動させることもできてしまうからです。

株価に影響を与える材料は、上記の温度や密度のようなものです。これらが均一であって初めて、空気分子に相当する各トレーダーが、自分の自由意志で株価を突っつくことができます。そして、そのような状況下で株価が動いてこそ、その推移はランダムであると言えるのではないでしょうか。

大きな材料によって株価が動く様は、強風の中でタバコの粒子を観察するようなものです。それはけしてランダムウォークと呼べるようなものではないでしょう。
その結果、「株価の推移は厳密な意味でランダムウォークではない。」と結論付けることができます。

しかし、私達が風の強さや向きを自由にコントロールできないこともまた事実です。それは、物理的にできないということではなく、法的に禁じられているからです。
例えば、インサイダー取引や、仕手筋による相場操縦などは、これから吹く風の大きさや向きを事前に知ったり、自らが風を起こしたりして、株価の推移を高い確率で予測することを可能とするのです。

株価は単にランダムに動くだけのものではありません。常に様々な強さや向きの風の影響を受けて、ダイナミックに変動する存在です。
ただ、法令を遵守する健全なトレーダーである私達には、その風の強さや向きを事前に知る術が存在しないために、あたかも株価がランダムに動いているかのように見えるのです。

それでは、私達には株価を予測することなど不可能であり、株式トレードで安定して勝ち続けることもまた不可能なのでしょうか。
おそらく前者についてはその通りでしょう。しかし、後者については不可能ではないと考えます。

風はある瞬間にだけ吹くわけではありません。比較的長く、一定方向に吹き続ける風も存在します。そのような風の発生を事前に知ることはできませんが、風が吹いていることを捉えることは可能です。
その風をいち早く捉えて風の向きにトレードし、風が止んだことをいち早く察知してトレードを手仕舞えば、平均的に勝ち続けることが可能となるでしょう。

その風とは、トレンドと呼ばれるものです。風の向きはトレンドの方向を示し、風の強さはトレンドの強さを表します。これは、短期で終わるものもありますが、比較的長期に渡って吹き続けるものも少なくありません。このトレンドの中で、株価はランダムに上下しながらトレンドの方向に流されて行くのです。

いつ風が吹くかを予測することは、天気予報と同じです。天気予報が今一つ当たらないと感じることと同様に、株価予想には懐疑的にならざるを得ません。
ただし、特定地域特有の風が周期的に吹くことがあるように、個別銘柄特有のアノマリーのようなものは存在するかもしれません。

トレンドを捉えるということは、毎日天気を確認してから洗濯をするようなものです。洗濯をして外に干して首尾よく乾けばOKで、乾いた洗濯物が利益ということになります。途中で雨が降ってきたら、洗濯物を取り込み手仕舞いとなります。

晴天に気が付かずに洗濯を忘れたら、利益は得られません。夕方になって慌てて洗濯をしても、手遅れです。また、雨が降ってきた時に取り込みを行なわなかったら損失になります。
私達は程度の差こそあれ、風の存在を感知する能力を備えています。あるいは、晴天を確認した後洗濯をして干すことくらいはできるでしょう。

そういったことを意識して行なっているかどうかで、トレードの結果に差が生じてくるのではないでしょうか。それは、プログラムされたものである必要はなく、頭の中のみに存在するものであっても構いません。

それを第三者にも分かるように客観的に表したものが、トレーディングシステムということになります。トレーディングシステムとは、風を捉えるための装置であり、それによって行動を起こすための指針となるものです。その中身は各種各様であり、予測に近いものから厳密にトレンドを確認するものまで様々です。

風はまた、偏西風のように一定方向に吹き続けるものもあります。もしも、市場においてこの偏西風を捉えることができたとしたら、それは永続的に利益を生み続けるトレーディングシステムを可能とするでしょう。
それは不可能かもしれません。しかし、不可能であるということを証明する事実は存在しないのです。

本節の冒頭に述べた言葉を思い返してください。「株式トレードに必勝法などあるはずはない。だから、株価の推移に法則性はなく、株価はランダムに動いている。」
この言葉の対偶は、「株価の推移に法則性があるか、または株価がランダムに動いているということがなければ、株式トレードに必勝法などあるはずはない、ということはない。」となります。

論理学によると、ある言葉の内容(命題)が正しければ(真であれば)、その対偶もまた正しいということが言えます。
厳密な意味での株価のランダム性は否定されると考えると、冒頭の言葉が正しいとすれば、株式トレードに必勝法が存在する可能性がある、ということもまた正しいということになります。

必勝法とまではいかないにしても、風を捉えることにより平均的に勝ち続けることはできるかもしれませんし、事実そのようなトレーダーは少なからず存在するでしょう。
ランダム性が厳密に成り立っているということがない限り、市場に吹く風を察知しトレードを仕掛けることの優位性は存在する、と言えるのではないでしょうか。


(2)長期と短期


フラクタルという言葉をご存知でしょうか?フラクタルとは、フランスの数学者であるマンデルブロが導入した幾何学の概念であり、図形の部分と全体とが自己相似になっているものを言います。

例えば海岸線を順次拡大して見ていくと、拡大前後で海岸線の入り組み具合が変わらないように見える場合があります。もし、海岸線のみ記された地図の縮尺を伏せて、その地図の縮尺を当てなさいと言われたら、それを言い当てることができる人はいないでしょう。

これと同じことが、株価チャートについても言えます。株価チャートの時間軸を伏せて見た時に、そのチャートが日足なのか週足なのか、はたまた月足なのか、判断することは難しいでしょう。あるいは5分足チャートなのかもしれません。

このように、株価チャートもまた海岸線と同じく自己相似性を持つフラクタルであると言えます。もちろん、株価チャートは(海岸線の場合もそうですが)無限に拡大表示できる訳ではありません。
しかし、ここでは有限の自己相似であっても、フラクタルとして考えることにします。

株価チャートがフラクタルだとすると、私たちがその形状を判断する基準は、いったいどこにあるのでしょうか?
例えば海岸線の場合、私たちが海岸で遊んだりする際は、岩場の凸凹の大きさがスケールの基準となるでしょう。しかし、高台や飛行機から海岸線を見下ろした場合は、もっと大きなスケールが必要となります。

株価チャートの場合には、一般に、私たちの投資期間がスケールの基準になります。数日から数週間の投資期間の場合は日足を、数週間から数ヶ月の場合は週足を、数ヶ月から数年の場合は月足を見ることが多いでしょう。さらに、デイトレーダーの場合は5分足等を見ることになります。
なお、ここで言う投資期間とは、株式の保有期間を指します。

こうして考えると、私たちはトレードを行なう際に、自分の投資期間に相当するスケールのチャートのみを見ればよいということになるのでしょうか?

そんなことはありません。海岸線に立って海岸線を眺めても、自分が今何処にいるのか判断することは難しいでしょう。そこから気球などで上空に昇り、今いた海岸線を見下ろすことにより、自分がいた場所がより明確になります。
それでも分からなければ、さらに上空に昇ることで、日本のどの辺にいたのかがはっきりするでしょう。実は日本ではなくてハワイにいた、何てことが分かるかもしれません。

株価チャートについても同じことが言えます。たとえ数日間のトレードのつもりでも、日足チャートしか見ないでいると、自分が今どの位置にいるのか見失う場合があります。

上場来の全日足チャートを見ることは困難であり、自分が今いる位置が長期的な節目であったとしても、それに気が付かない可能性があります。週足や月足チャートを見ていれば、その節目は明確になっていたでしょう。

仮に、全日足チャートを見ることができたとしても、全体像をつかむことは難しいかもしれません。
私たちが日本の全ての海岸線を歩いたとしても、正確な測量技術がない限り、日本の全体図をつかむことはできないだろうことと同じです。

そのために、たとえ短期トレードのつもりであったとしても、日足チャートだけでなくより長期のチャートを見る必要があったのです。

しかし、本来、月足や週足チャートに含まれる情報量よりも、日足チャートに含まれる情報量の方が遥かに多く、日足チャートだけを抑えておけば十分のような気がすることもまた事実です。
これが難しいのは、チャート分析技術が不十分であることが一因として考えられます。

日足チャートに加えて週足や月足チャートを合わせて見ることで、私たちはここ数日のトレンド、ここ数週間のトレンド、ここ数ヶ月のトレンドを総合的に判断することになります。
そして、仮にここ数日のトレンドが下落基調であったとしても、ほどなく週足のトレンドに支えられて上昇に転じる可能性が高い、などと考えるわけです。

このように、複数の時間軸で株価やそのトレンドを捉えることにより、単一の時間軸で捉えるよりも的確な判断が行なえる可能性が広がります。
しかし、トレンドを読むという難しい分析を複数のチャートについて行い、さらにはそれらを総合的に判断するという高度な技術が要求されることになります。そして、それらは往々にして主観的であり、また裁量的であったりします。

もっと、簡単な方法はないのでしょうか?たとえば、日足チャートだけで相場の全体像をつかむことは不可能なのでしょうか?
チャートを長期と短期に分けて考える、あるいは、短期トレードと長期トレードとでトレード手法を変える必要がある、などということは、半ば常識だったと思います。

この答えのヒントは、海岸線にあります。科学技術の進歩により、私たちは海岸線の正確な測量データを比較的容易に得ることができるようになりました。
私たちはGPSを用いて、現在位置の正確な緯度と経度を知ることができます。海岸線の特徴的な場所場所で緯度と経度を測定し、それらを記録していくだけで、最終的には座標上に日本列島の形を描き出すことが可能となるのです。

日足チャートはすでに、このようなデータを含んでいます。しかし、日本列島に相当するものを描くことは困難です。問題は、その分析方法にあると考えます。
私たちが投資判断を行う時、株価のトレンドを見たり、節目を見たりするでしょう。しかし、それらは短期チャートと長期チャートとでは、通常別のものとなります。

それならば、それらを一つのチャートにまとめてみたらどうでしょうか?
日足チャートに長期のトレンドや節目も合わせて表示する。こうすれば、いちいち週足や月足を見なくても日足チャートだけで投資判断ができるような気がします。

しかし、それは難しいでしょう。なぜならば、日足と週足、月足とは、時間軸のスケールだけでなく価格のスケールもまた大きく異なる場合があるからです。
長期のトレンドラインや節目を表示した結果、肝心の日足チャートが見づらくなるようでは、元も子もありません。

それ以外にも、週足や月足で引いたトレンドラインを、そのまま日足チャートに持っていくことの困難さもあるでしょうし、無理やり持ってきたトレンドラインに強い意味を見出すことも難しいでしょう。

そう考えると、長期と短期の融合は、なかなか一筋縄では行かないようです。そこには、短期チャートに長期チャートの結果を付け加える、という発想から抜け出せない現実があるからです。結局、これでは長期と短期の融合は不可能なのです。

では、どうするべきでしょうか?
答えは、短期チャートのみで分析するということです。

上述したように、短期チャートには長期チャートの成分も含まれています。上手く長期成分を抽出し短期成分と同じ手法で分析することができれば、短期と長期とを同じスケールで見ることができるようになるでしょう。
それを具体化した手法が、以後の章で解説することになる「平均保有株価」であり、「最適トレンドライン」ということになります。

長期トレードと短期トレードの違いは、単にスケールの大小の違いに過ぎません。しかし、それは現実にはトレード手法の差異となって表れています。
長期でも短期でも、まったく同等のトレード手法を用いることができるとしたら、それは有意義なことではないでしょうか。そのような普遍的、客観的なトレード手法こそ、私たちが追い求めるものの一つなのです。

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