運動する人やしない人に関係なく腰を痛めている人は少なくありません。特に運動している人にとっては、競技に関係なく腰を痛めている人は一定の割合で存在しています。
でも野球選手ならば「肩を痛めないように肩の筋肉を強くする」といった対策をしているのに対して、「腰を痛めないためにも腰の筋肉を強くする」という対策をしている人は全くと言っていいほど。腰を痛めている人たちは、どうして腰を強くしようとはせずに、治るまで待って後は放置しかしないのでしょうか?
今回はそうした腰が悪くてもトレーニングしない理由について考えていきます。
パフォーマンスアップのためには腰なんて関係ない?
アスリートにかかわらず運動で高いパフォーマンスを出すには、筋トレでの筋力を鍛えたり、スキルアップのトレーニングが欠かせません。にもかかわらずなぜいまだに腰はトレーニングの対象外となっているのでしょうか?
簡単にいえば「パフォーマンスアップのために腰を鍛える必要がなかった」からです。上半身の力が欲しいときは腕や肩の筋肉を鍛え、下半身の力が欲しければ足の筋肉を鍛えるなど、腰を意図的に鍛えることはまずありません。
「足腰を鍛える」という言葉を聞いたことないでしょうか?
足腰を鍛えるという言葉を聞くと、足と腰の両方を鍛えるように聞こえますが、実際にやらされるのはランニングやスクワットなど足を鍛えるものばかり。腰は一切鍛えられません。(むしろ、足を強くするトレーニングで腰を痛めることすらあります。)
足とセットで扱われる腰ですが、実際に鍛えるのは足ばかりで腰は仲間外れです。
でも腰を意図して鍛えているアスリートと聞かれても、思い浮かぶ人はまずいません。アスリートのパフォーマンスとしては腕や足といった四肢の能力が大切であり、腰そのものが対象外な扱いになっているからです。
腰の強さを意識するのは、デッドリフトを行う、ウェイトリフティングぐらいでしょうか。ボールを扱う競技などはまず腰を見向きもしません。
腰は鍛える必要はないが、あらゆる動きに関わっている
鍛えることのない腰。では運動するにあたって全く必要がないところなのでしょうか。そんなことはありません。むしろ腰はありとあらゆる動きに関わってきます。
例えばパンチを撃つ場合。上半身の動きなので腕や肩の力だけが必要と思われますが、体重を乗せ体力のあるパンチを撃つには、腰の働きが欠かせません。
足が生み出した力を上半身に伝えるには腰を経由する必要があり、足から来た力に自分の力を上乗せして、上半身に伝える役割を担います。その結果として、腰の入った威力のあるパンチが撃てるのです。
キックを撃つ場合も同じです。こちらは足の筋肉だけが左右されると思われがちですが、腰を素早く切り重心を相手側に傾かせることで体重の入った思い蹴りが放てます。こうしたことからわかるように手足に重さや威力を乗せるには腰が重要な役割を担います。
走る場合も腰のサポートが欠かせません。股関節のスムーズな動きや腹筋と腹斜筋のサポートが必要だからです。股関節の動きには腰がかかわることが多く、腹筋や腹斜筋が生み出す力を下半身に伝えるときにも、腰の存在が大きく関わります。
こうしたことからもわかるように、腰はありとあらゆる運動において重要な存在です。
誰も腰を鍛えない2つの理由
ありとあらゆる動作にとって腰の存在は欠かせません。にもかかわらず、なぜ今なお腰は誰も鍛えようとはしないのでしょうか?
ここには2つの理由があります。
1つ目は「腰の筋肉が何なのかを知らない」という理由です。筋トレしている方などはそうなのですが、鍛えたいか所の筋肉をすぐにいえたりします。腕だったら上腕二頭筋(三頭筋の場合も)、胸だったら大胸筋、背中なら広背筋などです。
ではそうした方に「腰を鍛えるにはどの筋肉を鍛えればいい?」と聞いてみてください。まず誰も答えられません。
腰の筋肉は「脊柱起立筋群」が当たります。ですが実はこの筋肉腰に存在しているわけではありません。筋群といわれる通り、様々な筋肉を合わせた総称です。脊柱起立筋は最長筋や腸肋筋など様々な筋肉を内包しています。
これら腰の筋肉たちの特徴は「脊柱全体にわたっていること」です。図鑑などで見るとわかりますが、最長筋はおしりのから首まで、腸肋筋はおしりから肩甲骨まで存在しています。
腰の筋肉というのは背骨である脊柱を守ったりコントロールしたりする筋肉であるため、ほかの筋肉よりも長く、腰だけでなく背中までカバーしている筋肉となります。
ここまで書いてきてわかるのが「腰だけに存在する筋肉はない」ことです。つまり筋肉としてみると「腰=背中の下側」とはならず「腰=背中全体」となります。そのため具体的に鍛える箇所がかなり曖昧になってしまい、結果としてだれもトレーニングしなくなりました。
2つ目は「腰の筋肉は目に見えないから」という理由です。筋肉は鍛えるとパフォーマンスが向上するのはもちろんですが、見た目にも変化が現れます。実際鍛え上げた人の腕や胸板は厚かったり、背中には鬼が宿っているように見えたりします。(実際にそうした人たち居ますよね?)
筋肉は鍛えるほどその成果が表れるのですが、腰だけは鍛えても変化が一切目に見えません。これは腰の筋肉の場所によるものです。腰の筋肉とは先ほど述べた通り、最長筋や腸肋筋などです。
実はこうした筋肉は、脊柱や肩甲骨に近い位置にあることから、ほかの筋肉と比較した体の内側に存在している筋肉となります。いわゆる「インナーマッスル」に当たる筋肉といってよいでしょう。
インナーマッスルは重要な筋肉ではあるものの体の内側にあるため、鍛えても見た目に変化が現れません。
鍛えれば太く強くなりかつ見た目も変化する筋肉と、太く強くなったと思うけど見た目には一切現れない筋肉、どっちを優先的に鍛えるでしょうか?
だいたは前者の変化が現れる筋肉のはずです。
腰の鍛え方
では腰の鍛え方を見ていきましょう。腰の鍛え方は大きく分けて2つあり、デッドリフトやグッドモーニングなど、腰を前へ曲げるパターンと、ストレート・ブリッジやフル・ブリッジなど腰を後ろへ曲げるパターンがあります。
(それぞれのトレーニングの仕方については、申し訳ありませんが調べてください。)
腰を鍛えるためにおすすめしたいのが、腰を後ろへ曲げて鍛えるパターンです。理由は「椎体と椎間板に過剰な負荷がかからない」からです。
デッドリフトやグッドモーニングはバーベルやダンベルなど重量のあるものをもって行います。腰の筋肉は脊椎を保護することもあるため、おもりを使って腰を鍛えると椎体や椎間板に負荷がかかります。
過剰な負荷が椎体や椎間板にかかってしまうと椎間板が後ろにズレて、椎間関節を圧迫する「椎間板ヘルニア」を起こすなど、腰のトレーニング自体が腰のトラブルを誘発しかねません。
もちろん適切な重量と回数であれば、腰を痛める心配はないのですが、適切な重量と回数を常に見極めるのは困難です。
腰を後ろへ曲げるストレート・ブリッジやフル・ブリッジなどは自重力だけで行うため、必要以上に椎体や椎間板を痛める必要がありません。そのため安全に腰の筋肉を強化できます。
またブリッジ系のトレーニングは、腰の筋肉だけでなく太ももの裏(ハムストリングス)や肩の後ろにある筋肉を鍛える効果もあります。そうしたところ強化したい方も、ブリッジ系のトレーニングをやってみてください。
まとめ
腰は筋肉が内側にあって鍛えても目に見えないことや、役割がいまいちわからないことから、鍛えることがほとんどありませんでした。
ですが上半身の動きに上半身の動きにしろ、下半身の動きにしろ、腰は動作に関わっており威力や速さを決める重要な存在を担っています。そうした重要な役割を担う腰は、やはり鍛えたいところです。
あなたもストレート・ブリッジやフル・ブリッジを行って腰を鍛えてみてはいかがでしょうか?