前世。多くの人にとっては、在るか無いかわからないもの。
少数の人にとっては懐かしき故郷。
同じ前世を生き、同じ風景と経験をした人と出会う。
それは天文学的数字かもしれません。世界は1つではなく、たくさんの世界が存在する。と私は思います。
前世で見た花園には真っ青な紺碧の薔薇が、咲き乱れていたのです。
その時、私は剣士でその世界にはそんなに強いものではないけれど、補助的な魔法が使える世界でした。
これだけなら、私が作り上げた世界“妄想”と言うことができます。
ですが、同じ風景を見、同じ思い出を持った人がいました。
ひとりは同級生の久美さん。
前世では同じ捨て子で、一緒に育った相棒でした。
一緒に出世して、騎士としてある方の護衛に一緒についた記憶。
ひとりは政略結婚をさせられそうになった御令嬢のゆうさん。
見合いの席で私(騎士男)が彼女の顔を全く見なかったのを、今世で責められました。
戦争で私は死んだのですが、戦争が終わった戦場に来て私の死体を捜し歩いたそうです。
私が死んでいた状況も、相棒が死んでいた状況も一致。彼女の執念に震えました・・・。コワッ。
紺碧の薔薇の園の思い出は、騎士として身分が高い方に仕え、最も楽しかった時の思い出。
その方は飛び降りて死にました。
あと10センチほどでマントに届いたのに、届かなかった。
そのことも、相棒である久美さんは覚えていました。
実はそのご主人にも会っているんですけどね。騎士の誓いを立ててから、数回生まれ変わってもその方の命令は絶対。・・・騎士の誓い侮れない。
前世に関係があった人と出会うのは、とても難しいこと?
いいえ。あなたのそばにもいるかもしれません。
ただお互いが記憶をなくしているだけで。
いつかこの頃の記憶を小説にしたいなと思います。
紺碧の薔薇の美しさと、最後砂漠の砂の中に染みていく自分の血の赤さを。