今回はコーチングのスキルに関するお話です。
コーチとしての経験が浅いと、セッションがうまく行えないという悩みに直面します。
「クライアントの深層心理にアプローチできていない気がする」
「リアルな目標設定や悩みをクライアントから引き出すことが出来ない」
本来コーチングとは”学術”として確立されているため、プロコーチの資格を持っていれば同じ知識と方法論を実践する訳ですから、明確な差は生じないはずです。
しかし実際には新米コーチと優秀なコーチを比較した場合、セッションでクライアントが得られる満足感や効果には明確な差が生じてしまいます。
それは”コーチとしての経験”や”コーチ自身が持つ才能”で生じてしまう差なのでしょうか?
もちろん経験の差は埋めがたいものですが、実はコーチの優劣を決定づけるポイントは他の部分にあります。
このポイントを抑えているコーチは、新米で経験が浅くてもセッションでクライアントを目標達成へとスムーズに導くことができます。
そのポイントとは、【潜在意識】に目を向けているかどうかということ。
※スピリチュアルな世界の話をするつもりは全くありません。
(もとより私は占いやタロットのたぐいを一切信じていない人間ですので。笑)
ただ、本当にコーチがしっかりと潜在意識に目を向けていると、クライアントへの質問も洗練され有意義なセッションを行うことができるようになるのです。
コーチングを学んだ皆様なら、顕在意識・潜在意識・無意識については既に一度学び言葉の意味は理解していると思います。
しかし、これらを”学術的な言葉”として「知っている」だけでは優秀なコーチとは言えません。
今回は優秀なコーチなら誰もが深く理解していて、セッションで重要視されている「潜在意識」を判りやすく解説していきます。
セッションがうまくいかずに悩んでいるコーチの方は是非参考に役立てて下さい。
顕在意識と潜在意識の違いをイメージで捉えてみる
<顕在意識>
人間は日頃、「見て・聞いて・触れて・考える」という当たり前の日常の中で、様々なことを考えたり悩んだりしています。
こうした、常に意識できる範囲の「意識」を【顕在意識】と呼び、これは本質的な意味での意識全体から見れば、たったの数%でしかないようです。
判りやすいイメージだと、「人間は脳を1割程度しか使っていない」という言葉がありますよね。
この、脳を使っている部分=顕在意識ということです。
<潜在意識>
一方で、潜在意識とは一体どんなものなのでしょうか。
顕在意識とは対極に、自分自身では意識できない「意識」のことを指します。
リアルな生活においては、「電車はいつも同じ場所から乗っている」とかも一種の潜在意識だったりします。
(みなさんも、意識せずにやってることってありますよね。)
さらに言うと、潜在意識とは自分自身が創り出したルールや常識のようなもの、と捉えると理解しやすいかもしれません。
例えば、サッカーで考えてみましょう。
決められたルールの中で、どうやって上達しようかと思い悩んでいるとします。この具体的な悩みが顕在意識です。
そして、「手を使ってはいけない」「1チーム11人で戦わなければならない」など、悩む上での前提条件やルールに該当するのが潜在意識です。
これが現実のスポーツなら、ルールは絶対で変わる事はありません。
だからこそ、決められたルールの中でいかに上達できるかと試行錯誤しながら練習をする訳です。
しかし、意識というフィールドは自由な世界です。
つまりルールそのものを捻じ曲げてしまえば、上達する可能性は無限に広がります。
「手を使ってパスを出せばいいんじゃないか?」
「1チーム500人で人海戦術をしよう」
スポーツなら無茶苦茶な理論ですが、潜在意識というルールの殻を破ると目的達成へのアプローチが飛躍的に増えるということは判りますよね。
コーチングの質問で
これはまさに潜在意識のルールを吹っ飛ばすことが目的だったりします。
セッションでクライアントの潜在意識に目を向ける
そして...。
私たちは深層心理に刻まれた「生き方」や「常識」というルールを持っていて、普段は意識せずにこうしたルールに縛られた中で生きています。
この潜在意識という名のルールは、とても根深く簡単には変えることが出来ません。
人は潜在意識で定められたルールや”思い込み”に縛られて生活しています。
人は潜在意識で定められたルールや”思い込み”に縛られて生活しています。
例えば、幼少期に両親から食事マナーを厳しくしつけられた人なら、潜在意識として「食事中はお行儀よく食べなければならない」というルールが染みついています。
しかし食事のマナーに無頓着な家庭で育った人は、平気で音を立てて食べたりゲップをしたりするでしょう。
潜在意識というルールは、育ってきた環境やその人の人生経験から形成されるので、「人によって千差万別」ということです。
それは言い換えれば「思い込み」や「常識」で、その部分に変化があったり、無意識ではなく自分の特性として”自覚”するだけで、視野が広がり今までには考え付かなかったような考え方を持つことができるようになります。
(ほんとに例えばですが、「ワンピースのルフィみたく肉はガツガツ食ったほうが美味いし楽しいじゃん!」と、本人が気づいた場合、その後の人生にも変化がありそうですよね。そんなイメージです。)
ルール(潜在意識)を変えるリフレーミング
今度はもう少し、コーチングに沿った具体的な例で潜在意識について考えてみます。
人付き合いが苦手で、職場での人間関係がうまくいかずに孤立していることに悩んでいるクライアントが居たとしましょう。
この悩みは顕在的な意識、つまり目に見えている状況や周囲からの態度から本人が感じていることが起因していますよね。
(確かな意識として知覚できるトコロ)
潜在意識に目を向けられるコーチは、セッションを通してクライアントの潜在意識によって形成されているルール、言い換えれば「思い込み」や「常識」にアプローチして状況を好転する考え方を引き出す事ができます。
こうした潜在意識へと働きかけ、根本的な考え方を変えるアプローチをリフレーミング、もっとカジュアルな呼び方をするならポジティブシンキングと呼んだりします。
例えば...
クライアント「人付き合いが昔から苦手で・・・みんなが楽しそうにしている中でノリについていけず、不愉快な態度を取ってしまうんです」
コーチ「なるほど..。逆に楽しいと思えるのはどんな時でしょうか?」
クライアント「一人で仕事に没頭してやり遂げた時は達成感もあって楽しいですね。プライベートなら本を読んだり、料理をしたり。基本的に一人で何かをしている時間が好きなんです」
こうしたやり取りの中で、クライアントの悩みを形成する潜在意識として、
・他者とは仲良くしなければならないと頭では思っている(言い換えれば思い込んでいる)
・一人で居る時間が好きと自覚している
潜在意識が抱えるこの矛盾に気付けていないことが、クライアントの悩みにおける本質であることが判ります。
クライアントにリフレーミングを促すアプローチには
【クライアント自身が気付いていない潜在意識に目を向けてもらう】
【クライアントが自覚している部分をさらに深く自覚してもらう】
このような方法があります。
潜在意識をクライアント自身が自覚していながらも、正確に捉えていなかったりポジティブに捉えられていないときは、より深く自覚させることでリフレーミングできるケースも多いものです。
コーチ「一人の時間が大好きなんですよね?会社で孤立していると仰いましたが、その状況は『一人で何かをしている時間』が好きなあなたにとって、理想の状況とも言えるのではないでしょうか?」
クライアント「そっか・・そうだったのか!そもそも自分は一人が好きなのだから、孤立しているのではなくて自分にとって居心地の良い場所を作っていたのだ!」
クライアント自身の考え方が大きく変化する”気づき”は、コーチが潜在意識に目を向けて本質的な部分での変革を促せるかどうかがカギとなります。
顕在意識だけで、表面上の悩みを解決するだけでは「ちょっと楽しい会話」にしかならないことが多く、セッションをいくら繰り返してもクライアントに”気づき”は生まれにくいです。
ワクワクする目標設定を引き出せないコーチは潜在意識に目を向けていないのかも。
言わずもがな、
コーチングセッションにおいて、最も重要なプロセスは「目標設定」です。
顕在意識だけでクライアントの目標を引き出そうとすると、年収や資格の取得など一見すると具体的にみえるだけの、クライアントの本質を捉えきれていない目標設定しか導き出せなくなってしまいます。
コーチングにおける目標設定とは、本当に在りたい自分の姿(being)を明確にすることであり、年収や資格などは目標達成への”手段の一つ”でしかありません。
顕在意識だけでセッションを行ってしまうと、クライアントは「自分で考えられる範囲の話しか聞けなかった」と感じ、コーチングで最も重要な”気づき”や”変化”を得ることができません。
クライアントが自覚していない「潜在意識」に働きかけ、”気づき”を促すことが、コーチングの目指すべき到達点であり、コーチが果たすべき役割です。
潜在意識の重要性に気付くと、セッションが劇的に変化しますし、クライアントの反応が明らかに違う事を体感できるはずです。
セッションで手応えを感じられないコーチは、クライアントの潜在意識にしっかりと目を向けることを意識して行うようにしてみましょう。