「不遡及の原則」という言葉をご存知でしょうか?
法律を専門的に扱っていない人にとっては聞き慣れない言葉だと思います。今回はこれについてのお話です。
消防法違反で最も費用が必要な問題は
「あなたの会社の建物は消防設備が未設置です。これは重大な違反になります。すぐに設置してください。」
と消防から指摘があることです。
では、なぜ消防設備が未設置になるかを考えてみます。
まず消防設備が必要な条件について列挙していきたいと思います。
・面積(建物が大きければ大きいほど多くの設備が必要となる)
・用途(不特定多数の人が入る施設は多くの設備が必要となる)
・構造(建物の耐火性能が低ければ、多くの設備が必要となる)
・高さ(建物の高さが高ければ多くの設備が必要となる)
・収容人員(人が多く入る施設なら多くの設備が必要となる)
以上のことから、「建物ごと」に必要な設備が変わってきます。
例えば建設当初、
・面積は300㎡
・用途は工場
・耐火構造
・2階建
・従業員は5人
の建物なら必要な消防設備は「消火器」のみとなります。(誘導灯は無窓階になれば必要ですが、今回は無視します)
しかし、経営が好調で事業拡大するために建物を200㎡増築するとします。
・面積は500㎡
・用途は工場
以上の条件になれば自動的に「自動火災報知設備」必要となります。(工場で自動火災報知設備の設置する義務が発生するのは500㎡以上となります)
ある日突然消防が検査に来て、面積が500㎡ということが確認されれば
「あなたの会社の建物は消防設備が未設置です。これは重大な違反になります。すぐに設置してください。」
ということになるのです。
消防設備が未設置になるケースというのはこのようなことがほとんどです。
経営者の立場からすれば
・増築までしたのにお金がない
・増築する時になぜ建設業者は言ってくれなかったんだ
と言いたくなりますが、
建設業者に消防法を理解している人はあまり多くありません。
また、お金がないという言い訳を消防が聞いてくれるとは思えません。なぜなら消防は人の命を守ることが仕事だからです。
経営者は消防設備を設置するように指導を受けたため見積もりをとると、数十万〜数百万の費用が必要と判明し、途方にくれる。。。
このような事態にならないために、あることをすれば消防設備を免除されることがあります。
では次回は、自動火災報知設備を合法的に設置しなくてもいい特例について書きたいとおもいます。
早く教えてくれよと思う方にヒントは
「用途変更の特例」と「法の不遡及の原則」
です。