パズルのピース

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コラム
今、読み進めている本は、これ

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きいろいゾウ(西加奈子著 小学館文庫)

たしか、宮崎あおいと向井理が主演して映画になっていた。予告のポスターを眺めた覚えはあるが、見損なってしまった。だから本屋でこのタイトルと黄色を発見すると、すぐに中身をパラパラとめくっていた。

「なんか、いい」、ふわっとしているのに時折り突き刺さる言葉がある。

小説なんて書かなくても生きていけるような気がするし、なのに書かずにおれないことに安心もしている。東京から逃げてきたようにも思うし、東京を捨ててきたようにも思う。何せ心が平らになっている。雨が降ることや、トマトがなることにとてつもなく大きな意味があって、だから僕が東京に対して思っているセンチメンタルな気持ちや、残してきた思い出がとても瑣末なことに思える。誰か全く違うほかの人の出来事のようだ。
こんな言葉も書き留めたくなる。

小説は内容がどうこうというより、読んでる間が引き込まれる体験となる。
役に立つとか立たないとか関係ない。私の「きいろいゾウ」の「ツマ」は宮崎あおいであり、「ムコさん」は向井理だ。二人の話す言葉が聞える。
映画を知らない読者にはどう映るだろう。
それぞれが、それぞれの「ツマ」と「ムコさん」を作り上げる。読者の数だけ「きいろいゾウ」がある。

「きいろいゾウ」に夢中になっていると、なぜか全然違うジャンルの文章を読みたくなった。そんな時に選んだのが、コミュニティデザインの時代。

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コミュニティデザインの時代(山崎亮著 中公新書)

整理されていなかった近未来への不安が丁寧に描かれている。

そして、掃除がてら本棚に横づけされた本を手に取れば、またパラパラとページをめくっている。
見つけたのは、黒鉄ヒロシの「千思万考」

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千思万考(黒鉄ヒロシ著)

歴史上の信長や斎藤道三、豊臣秀吉が妙に人間っぽく思えてくる。
そして、こんな「あとがき」にも惚れ惚れする。

たとえば、明治は江戸の影響下にあり、昭和、平成は明治、大正が助走となる。過去、現在、未来を離して縦に書くのではなく、過去の上に現在を、その上に未来を重ねて書く方が歴史の正体を理解し易い。(中略)一本の竹として考えてみてはどうか。

「きいろいゾウ」を読み進めながら、「コミュニティデザインの時代」も
「千思万考」も、もう手放せなくなった。よって同時に三冊が並行している。


本のひとつひとつがパズルのピースのように思えてきた。

三つのピースは、形も大きさもばらばらで、隣り合わせに繋がるとも思えない。でもいつかはどこかでピッタリとはまる隙間が生まれるような気がする。

出来上がった「パズルの絵」は何だろうか?今はわからない。
でも分かったとき、見えてきたとき、自分の人生が終わる気がする。


パズルは、もともと出来上がった絵を様々な形と大きさのピースに分断する。だから最初に誰かが書いた絵が存在する。
でも人生のパズルはどんな絵が描かれているか、最後まで本人にはわからない。最終の絵を知っているのは神様だけかもしれない。おもしろい。

歳をとって分かったことといえば、何枚かのピースがつながってきたことだ。2枚つながったもの、3枚つながったもの、そしていまだにどこにもつながらない一枚のピースもある。一枚のピースにも意味を込めたらしい、綺麗な柄が施してある。


この先何枚のピースがつながるか、どんな絵が見えてくるのか
命が尽きるまで楽しめる。



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