突然、夢が叶うことになった

記事
音声・音楽
人生、何が起こるかわからない。

来月、ルーマニアの音楽祭でピアノコンチェルトを演奏することになった。未だに自分の身に起こったことなのかどうか理解できないぐらい夢のような話だ。でも現実だ。私は来月、ルーマニアに渡ってオーケストラと一緒にモーツァルトのコンチェルトを演奏する。

きっかけはあるコンサートの後の食事会で、たまたま同席されてたルーマニア人の指揮者の方から「春にルーマニアで音楽祭があるけどみんなで来る?」と軽く誘われたことだった。ヨーロッパの音楽祭!楽しそう!行きたい!ということであくまでも観客として音楽祭に行く、そう、毎年参加しているライジングサンロックフェスティバルに行くような感覚だった。

久しぶりのヨーロッパ旅行に浮き足立っていたのだが、旅程を考えてくださっているピアニストの方から「どうせなら出演されては?」とLINEを頂いたのが2019年の12月頭。最初はえ?そんなん出れるの?て感じだったのだが出れるものなら出たいのでデュオで出演できるかも、という話になっていた。それだけでも音楽について何のキャリアもない人間がヨーロッパの音楽祭に出演できるなんて夢のような話。

でも、話はそれだけでは終わらなかった。「(技術的に可能かどうかわからないけど)どうせ時間とお金を使って行くのならデュオではなく1楽章だけでもコンチェルトに挑戦されてはどうですか?」と年明けにまたLINEが。コンチェルト??

いつかコンチェルトを弾きたいというのが夢だったけど、あまりにも現実味がなさ過ぎてどうやって実現するのかもわからなかったし、「やってみたいけど無理な話だろうなあ」と特に今まで叶える努力みたいなことはしてこなかった。

いくつか曲の候補をあげてくださり、その中で特に綺麗だなあと思った Mozartの21番に挑戦することになった。梅田のササヤ書店に楽譜を買いに行き、楽譜を初めて手に取ったのが2020年1月10日。

できるところまでで良いので譜読みして来てください、と言われ1月12日に初めてレッスンを受けた。何人かの前で2日前に初めて手にした楽譜をめくりながら1楽章を弾いた。レッスン後、お電話をいただき「次に会う時までに練習してどこまで弾けるようになるかで出演できるかを判断させて下さい」と言われた。

練習次第でコンチェルトが弾ける、それもクラシックの本場ヨーロッパで。そして、おそらくこんなチャンスは二度とこない。というわけでいきなり必死のパッチでの練習が始まった。1楽章だけでも15分ほどある。長いけど、やるしかないのだ。

そして1月23日の朝、「レッスン予定の生徒が突然体調不良でキャンセルになったので今から弾きにこれますか?」と連絡を頂いた。そのまますぐにタクシーでご自宅に向かい、練習してきた1楽章を聴いて頂いた。結果は◯。できていない部分はたくさんあるけれど、責任を持ってみるので間に合わせましょう、コンチェルトいけるでしょう。全楽章やりましょう。ということになった。どうしよう、夢が叶ってしまう。

それからはとにかく猛練習の日々。飲みに行くのをやめ、遊ぶ約束もやめ、ひたすら練習。素人がたったの2ヶ月で大曲を仕上げなければならない。時間を費やして努力する以外方法がない。仕事に行く前に弾き、終わってからも23:30まで借りれる練習室で弾き、休みの日は午前中から夕方までぶっ通しで弾き、1ヶ月で全楽章ひと通り弾ける、というところまでもってきた。

当たり前だけど楽譜通り間違えずに弾くだけでは全然だめで、そこから仕上げていかなくてはならない。当然、並行して暗譜もしなくてはならない。3楽章全部で約30分ある曲を暗譜、気が遠くなりそうな作業だ。いくらあっても時間が足りない。

でもあと1ヶ月しかない。当然日々の仕事もあり時期的に確定申告の計算というできればずっと手をつけたくない気の重い作業などものしかかる。こんな時に限って仕事も忙しい。でも言い訳はできない。3月17日に演奏することは延期できない。

続く。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す