指導者の選択方法 ~経験者かつ有識者を狙い撃つ方法とは~

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1.はじめに

先日、コラムを一つ書かせていただきました。それについてのお問い合わせや感想などを想像以上に多くいただき、沢山の方に目にしていただけたことを嬉しく思っております。そして、お問い合わせの内容として多かったのは「具体的に、どのような指導者にお願いをしたら良いのか」というものでした。前回のコラムにも記載のとおり、繁忙期については私のキャパシティの関係でどうしても新規のご支援をお受けできないことが多く、本当に心苦しい思いです。やむを得ずに私が直接ご支援ができなかった方々に対して、少しでもお役に立てるのであればと思い、今回は指導者の選定方法などについて簡潔に記載をいたします。

2.三つの魔法の質問について

本題に入ります。最初に、結論に近い部分から申し上げます。

「款項目節(カンコウモクセツ)の詳しい意味を知りたいです」

「〇〇(受験官庁、自治体名)の予算の流用範囲を知りたいです」

「〇〇(受験官庁、自治体名)は枠配分ですか」

上記、三点の質問に対して即座に明確な回答ができない指導者の場合、依頼者様が望むような結果に導くことができる可能性は低いでしょう。これらの問いについては、「公務員試験対策について最低限の知見がある指導者」の場合、100%、適切に回答が可能です。あくまで「公務員試験対策について最低限の知見がある指導者」ということであって、これが回答できるという段階でやっとスタートラインに乗っているだけではありますが、一定の安心材料になります。

当該質問については、ネット上で色々と検索をすれば、それぞれある程度の断片的かつ不確かな情報であればすぐに出てきます。しかし、十分な知見のない方がネットの情報を組み合わせて何とか回答を作成した場合、間違いなくヘンテコな回答となります(ひっかけ問題も入っているためです)。一昔前、若者の間では合コン、婚活パーティーなどでニセモノの医者を見分ける方法として、手袋のサイズを聞いたり、後期研修の詳細を聞いたり、などということが流行っていたようですが、それに近いものかもしれません。

3.餅は餅屋

三点の質問の意図などについては後述するとして、結局のところ何をお伝えしたいのかと申しますと、「餅は餅屋」であるということです。これが、なぜか「公務員試験対策」となると、皆さま急に「餅は餅屋」という概念が頭から離れてしまい、正常なご判断ができなくなってしまうのです。ここに大きな問題があると考えております。

少し冷静になれば簡単な話なのですが、野球を指導してもらうのであれば、イチローさんや大谷翔平さんから教わることができればとても大きな学びを得ることができます。技術的にも一流、理論的にも一流、トレーニングなどの知識も一流、世界のレベルすらも我が身をもって知っていますから、最高の先生です。「餅は餅屋」、「野球を教わるのは野球選手から」です。プロ野球から高校野球、少年野球まで、野球の未経験者が監督をしている姿をなかなか見たことがありません。これが大前提の考え方として重要です。そうすると、野球の指導者として次の方々は相応しいのかどうか、ということです。

「プロ野球選手から様々な情報を仕入れ、最適な上達方法を教えます」

「野球道具の店を〇年経営しています。様々なプロ野球選手も来てくれていました」

「野球も、サッカーも、卓球も、どのようなスポーツでもしっかりと指導をします」

自分の指導者としては、あまりこれらの方を選択したくはないのではないでしょうか。しかし、これが「公務員試験対策」となると、皆さまなぜか大丈夫なような気がしてしまうようです。

「公務員試験の面接官から様々な情報を仕入れ、想定問答を提供します」

「予備校で〇年講師をしています。多くの公務員を輩出しています」

「民間企業も、公務員試験も、合格に導く面接指導をします」

どうでしょうか。私から見ると非常に滑稽に感じます。当然、それぞれの指導者によってレベル感の違いがあるとは考えますが、一つ断言できることは、「公務員試験対策」を適切に行うことができるのは、「公務員経験者」であるということは間違いありません。これは誰がどう言おうが、絶対、です。特に、民間企業とは異なる対策が必要となる公務員試験において、その内情を十分に把握している経験者であるということは欠かすことができない条件です。どれだけ優秀な方であっても、公務員としての経験が無い場合、それは意味がありません。イチローさんからサッカーを学んでも、大谷翔平さんから卓球を学んでも、大きな成果に繋がる可能性は低いでしょう。

つまり、公務員を目指す皆さまが指導者を選ぶ際に必要な最初のハードルは、その方が「公務員経験者」であるかどうかということです。これがどれだけ重要なことであるかは、中にいた人間しか分かりません。賛否両論あるとすれば、経験者はみな賛同し、否定する方は未経験者のみであるはずです。しかし、「公務員経験者」であるだけでは冒頭にお示しいたしました「公務員試験対策について最低限の知見がある指導者」には到達しません。次の条件について、説明を続けます。ここからがとても大切です。

4.理想は幹部、最低でも管理職

指導者を選ぶ際には、「公務員経験者」というだけではいけません。これだけで良ければ、たとえば野球を始めて数年目の子どもであっても強豪高校の監督になれてしまう、ということです。ただの「公務員経験者」であれば、全く意味が無いということです。これも、公務員としての経験がある方がご覧になるとほぼ全員が共感する部分かと思いますが、実際のところ、入職15年目位までは組織のことや人事採用関係のことなど何も知らずに過ぎていきます。また、若手として人事担当部局に勤めていたとしても、重要な人事事項や採用関係の重要部分には携わることがないのです。

つまり、単なる「公務員経験者」であれば、公務員としての業務、組織の内情などについては確かに一定知見がある方もおられますが、採用試験に関することについては全くの無知に近い可能性が極めて高い、ということです。それでは、職員はどの段階から採用試験に携わるのか、ということですが、これは各官庁、自治体によって差がありますが、概ね課長級以上、管理職として業務をする段階になれば採用関連の会議や面接官としての関わりが深くなっていきます。もちろん、係長級など、30歳前後で序盤の面接官として携わる方もいるのですが、そのような方については最終選考周りの機密部分には関わりを持ちません。

公務員試験対策として一番理想的なのは、国家であれば「本庁課長級以上」、自治体であれば「副知事・副市長~課長クラスの管理職」ということです。よって、もしお身内または近い知人やその繋がりなどで、これらの経験がある方がおられるようでしたら、一番に指導のご依頼を行うべきです。必ずや大きなお力添えをいただけるものと考えます。また、当該役職の経験者の場合、組織外へのネットワークも多数お持ちである可能性が高く、受験先の具体的な情報収集などについても上手くいけばお助けいただけるかもしれません。

私が少し色々とネットを見て回っているだけでも、最近はYouTubeや個人サイト、ブログ等に公務員試験対策のための指導者を名乗る方が数多く表れています。その中には、「元公務員」と名乗る方も複数おられます。ただ、その方々の発言を見ていると、よくもこれだけ誤った情報を断言的に吹聴することができるなと、聞いていて恥ずかしく思うレベルです。また、それを真に受けた受験者の方にとっては大迷惑な問題です。営業活動のため、再生数稼ぎのためにキャッチーな発言をしたい気持ちは一定理解しますが、受験生の立場になって、本当に誠実な活動をしていただきたいものです。

同じようなことを何度も繰り返しますが、まずは、どれだけすごい経歴でも、綺麗な文書を書くことができても、面接の指導が上手であっても、公務員の知り合いが多くても、直接皆さまに接点を持つ指導者自身が公務員としての経験が無い場合は、適切な指導はできません。「公務員の場合はこのような人物像がいいのではないか」「公務員の場合はこのような主張を面接で行うべきなのではないか」というイメージによる指導では駄目なのです。確定的な根拠をもとに、「〇〇と主張してください」、「〇〇を重視してください」と具体的かつ依頼者様が実践可能な指導を行うことが重要であり、それには十分な公務員としての実務経験かつ管理職以上としての採用活動の経験が必要であるということです。そして、5年、10年、というような在籍期間では「元公務員」を名乗るに値しません。

そうすると、これら条件を満たす指導者の方が近くにいれば理想的なのですが、それが難しい方も多くおられるはずです。そうすると、皆さま予備校に通うか、私たちのようなフリーの指導者を探す、という行動をされるはずです。予備校の場合はなかなか指導者の変更を行うことが難しく、まずは指定された指導者と接し、対応または指導に不安がある場合は、フリーの指導者に追加依頼をする、という形になりますが、最初からフリーの指導者を探される方については、ご自身で十分に時間をかけ、慎重に選択をされるべきです。その際に、冒頭にお示しをいたしました三点の質問を活用していただければ、ということです。

5.指導者の質を見極める

「款項目節の詳しい意味を知りたいです」

「〇〇(受験官庁、自治体名)の予算の流用範囲を知りたいです」

「〇〇(受験官庁、自治体名)は枠配分ですか」

これらの質問のそれぞれの詳細については割愛いたしますが、基本的には先ほどお示しいたしました管理職以上の役職者については、予算折衝や議会対応などの業務を担当することになります。そうすると、常に「款項目節」という文字が書かれた資料とにらめっこをし、予算の流用などについて頭を悩ませています。また、予算折衝は大変に労力が必要な作業なのですが、それについては「枠配分」というような考え方もあり、管理職以上であれば必ず理解をしています。そして、各官庁、自治体の予算関連資料というものは全て公開されていることから、基本的にはこのあたりを理解している方であれば、「〇〇市って枠配分なのですか」と聞かれても、HPで予算書をさっと見て、「いや、ここは〇〇方式ですよ」と即答できるのです。

これら三点について十分な回答があった場合は、高い確率で、「公務員試験対策について最低限の知見がある指導者」としてお認めいただいて結構です。ここから先の指導の力量などについては個人差がありますので、得意分野、優しい指導、厳しい指導、指導の形式や頻度、など、ご自身のタイプに応じた指導者を選択されるようにしてください。

6.まとめ

・公務員試験対策は、公務員経験者かつ管理職以上の経験者に指導を求めるべきである

・公務員経験者かつ管理職以上の経験者であるかどうかは、三点の質問により見極めることができる

7.さいごに

かなり言葉を選んで記載した表現が多いため、しっかりと皆さまに本稿の意図が伝わったものかどうか心配ではございますが、極めて重要な内容であり、指導者選びというのは、人生を左右する大きな選択です。こんなはずではなかった、と後から後悔のないように、今一度しっかりと、冷静に、どのような指導者を選択するべきなのかということを考えてみてください。

また、当然に「公務員経験者以外」および「公務員経験者だが管理職以上の経験が無い」指導者の方の存在意義を否定するものではありません。しかしながら、私としては、指導者全員が正確な情報をお示ししたうえで、それでも自分を選んでくれる依頼者様に対しての支援を行う、という業界にしていきたいという思いがあります。つまり、例えば「公務員試験については専門家ではありませんが、民間企業への就職支援で培ったノウハウや手厚い面接対策には特に強みをもっています」と素直に言ってもらいたいのです。それを、「公務員試験対策のための手厚い面接対策なら任せてください」と集客をしてしまうと、依頼者様にとっては正常な判断が難しくなってしまうように感じます。

私も、民間企業の就職対策や業務用資料作成、研修講師など、自身のスキルの範囲として一定対応、事業化ができるようなサービスは色々とあると思います。そのような中でも、中途半端な仕事には一切手を出さず、絶対的な自信のある「公務員試験対策」のみに特化し、このサービスに全ての時間と精力をつぎ込んでいるのです。全ての指導者が、このように自らが最も得意な分野に集中し、依頼者様のために全力を尽くすことで、より良い業界へと進むことができると考えているところです。

なお、「三点の質問」について私にお問い合わせをいただいても、回答はいたしません。理由はお察しください。

以上

(繁忙期等、新規のご依頼に対応できない場合であっても、ご自身で対策を行うための今後の戦略についてのご助言等、可能な範囲でご助言をいたしますので、お気軽にメッセージ等いただければと存じます。)

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