公務員試験対策とは ~「人口減少への対応」の捉え方で、受験者の力量は丸裸になる~

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1.はじめに

これまで長年に渡り、公務員試験対策のご支援を行ってまいりました。その中で「公務員試験対策の手法(考え方)がそもそも全く分からない」という段階からのお問い合わせを数多くいただきました。これら、私が正式にご支援対応を行う場合は、終始、手取り足取り並走し、最終試験の合格まで導くことが可能なのですが、どうしても当方のキャパシティの関係でご支援をお受けできないことがございます。

皆さまご存じのとおり、一般的な公務員試験のスケジュールとしては、年度当初に国家公務員採用試験(総合職、専門職、一般職)が続き、それと並行して地方公務員採用試験(特別枠、先行枠、特別区、A日程など)が行われます。そして、国家公務員採用試験が一気に落ち着く初夏以降は、一部の国家公務採用試験における経験者枠などを除き、ほぼ全てが地方公務員採用試験となり、B日程、C日程、追加募集、というような形で一年を終えます。

私のご支援実績の割合は、年間を通せば、国家公務員採用試験3割、地方公務員採用試験7割、位に収まるのですが、どうしても年初にまず国家公務員採用試験対策のご依頼が集中するため、地方公務員採用試験として一番早い時期に行われる特別枠等について、ご相談を受けた段階で既に手一杯となっており、お断りせざるを得ないケースが多発してしまいます。

自らの信念として、私が並走させていただくご依頼者様に対して、本気で「全員を最終合格に導く」という強い思いを持ってお仕事をしておりますので、お一人お一人に十分なお時間を割くことができないと判断した場合、その時点で新規受付を休止しております。依頼者様にとって最適なご支援を十分に提供できないような、中途半端にご依頼をお受けすることはいたしません。そうすると、公務員試験の年間スケジュールの関係上、年度前半の地方公務員採用試験の対応にはなかなか手が回らなくなるということです。

しかしながら、皆さま全員が、それぞれの人生が懸かった大きな勝負に挑まれようとしているわけでございますから、それについて私が対応できなかったことを原因に、試験不合格、辛いお気持ちになられるということを考えると、強く心が痛みます。これは大袈裟ではなく、本当に悲しい気持ちになっているのです。ココナラにサービスを移管し、更にお問い合わせの件数が増えたことにより、今後も同様の悩みは尽きないものと考えております。

当然に、今後も私の体力がもつ限りはお一人でも多くのご依頼に全力で対応する所存ではございますが、とにかく全ての依頼者様それぞれに対して誠実に向き合い、いわゆる「コスパ」などは完全に無視をして対応を行っている体制上、どうしても限界があります。結果、私の支援の行き届かない範囲で、自力で公務員試験対策に挑むことになる方も多数おられるはずです。そのような方々に対して、何かお力になれることはないか、という思いで、コラムとして書き記してみるか、と思い至った訳でございます。

2.公務員試験対策の本質

まず、本題の前に、意外と皆さまの中で抜け落ちてしまっている視点について述べさせていただきます。そもそも、公務員試験の対策とは何をする必要があるのか、という部分でございます。これは、学生の方と社会人の方とで理解度が大きく異なる印象を受けますが、特に学生の方は誤った認識をされていることが多いです。はっきりと申し上げますが、大学や大手~中堅予備校の指導に問題があることが多いです(この点についてはここでは深く述べません)。一方、社会人の方の場合は一定の本質をご理解されている割合が多いです。やはり就職活動や実務経験から学ばれることが多かったものと推察いたします。

結論を申しますと、公務員試験対策の本質は「論点による蜘蛛の巣を作り上げる」ことです。

決して「筆記試験対策」ではございません。

論点云々についての具体的な内容は後にお示しいたします。まずは、「筆記試験対策」を「重要」とする、あまりに致命的な誤った認識についてコメントをいたします。公務員を目指されている皆さまの最終目標は何でしょうか。「第一志望の官庁から内定を得て、そこに就職をする」ということに尽きるはずです。内定を得るためには、一次試験、二次試験、三次試験、と複数回の試験を得て、最終合格を勝ち取る必要があります。このうち、筆記試験は一次試験に課されることが多いです。よって、一次試験を突破しなければ次に進めないのだから、という意味合いで、よく「筆記試験対策が重要である」ということが言われるのですね。

一つ、数字をお示しするとイメージしやすいかもしれません。私は、これまでご支援に携わらせていただいた数千件の試験について、全件の詳細情報を記録しております。昨年度までの直近5年の全試験の平均値は以下のとおりでした。

<2018年度~2022年度 全試験 計941件平均>
一次試験   倍率 2.4倍
二次試験以降 倍率 9.7倍

いかがでしょうか。この数値をご覧になっただけで、仮に一次試験を突破したとしても、二次試験以降の対策を十分に行っていなかった場合、まず最終合格を得ることは難しいことをご理解いただけるのではないでしょうか。しかも、二次試験以降の重要性は年々高まっており、直近では5年連続で、一次試験の倍率は低下、二次試験以降の倍率は増加しているという状況です。

また、これについては900件超の全ての試験(国家、地方/新卒、既卒)を合算した数値ですので、「国家・新卒」以外の組み合わせである「国家・既卒」、「地方・新卒」、「地方・既卒」については、一層、二次重視の傾向が強まります。つまり、国家公務員採用試験を受験される新卒者の方についてのみ、一次試験(筆記試験)の対策に力を入れることを一部容認するケースもございますが、その他の場合は、基本的には二次試験以降の対策に全力を尽くすことを強く推奨いたします。

特に職務経験者の場合などは、一次試験となる筆記試験の採点と合わせて、例えば職務経歴書等の「提出書類」や「論文試験」など、筆記試験以外の要素も合計して採点されることも多くなっており、ますます筆記試験の重要性は下がる一方です。そして、二次試験以降の対策を十分に行うことで、「提出書類」や「論文試験」などについても完成度を高めることができ、結果として、一次試験の合格に繋がる、ということになるのです。

私も古い人間ですので、過去からの公務員試験の変遷を長く見届けてまいりました。確かに、15年位前までは、一次試験重視、という戦略が正しい時代でした。だからこそ、大手予備校などは大量の受講者を確保することができていたのです。しかしながら時代は大きく変化しました。もう過去の「公務員試験対策」の定石は一切通用いたしません。

問題は、この「公務員」界隈の業界人の多くが、その15年前の化石のような情報のまま、アップデートできていない(もしくはしたくない)ということなのです。よって、強く一次試験の重要性を説く指導者などもまだまだ多数おりますが、それは本当に悪意は無く、理解が追いついていないだけ、ということも考えられます。また、悪意(自らの利益を目指すもの)を持って誤った情報を流す例も存在しますが、それについても小心者の私は、ここでは深く述べません。

とにかく、皆さまが今後の対策などに悩まれているのであれば、どうか私を信じていただき、公務員試験対策の本質である、「論点による蜘蛛の巣を作り上げる」という部分をお進めください。それでは、本題にまいりましょう。

3.「人口減少への対応」の捉え方を考える

今回、全般的な対策の進め方について、採点側の視点から総括的な内容をお示しすることなども考えましたが、せっかくですので、少し具体的なテーマに絞ることにいたしました。また、冒頭ご説明のとおり、本稿は、年度前半の地方公務員採用試験の対応に手が回らず、何とも申し訳なく辛い気持ちになったことから作成を始めたものでございますので、地方公務員試験の頻出ワードを取り上げます(当然、あくまで論点に対する考え方の一例を述べるものであることから、国家公務員試験対策にも同様にお役立ていただけます)。

~「人口減少への対応」の捉え方で、受験者の力量は丸裸になる~

というテーマにしましょう。様々な論点が複雑に絡み合う試験対策ですが、各論点それぞれについて全て一から学んでいく必要があるのかといえば、そうではございません。どのような論点であっても、それに対するコツは同じです。よって、今回一つ具体的に「人口減少への対応」の理解を深めるだけでも、今後様々な論点に対する考え方が大きく変わってくるはずです。

基礎自治体(市区町村)や都道府県などを受験した際に、びっくりする程に複数回直面する論点が「人口減少への対応」です。エントリーシート、論文(作文)、グループワーク、面接、プレゼンテーション、あらゆる場面で当該論点への対応(自らの考え方)を迫られることになります。これに対して、自力で適切な回答を行うことができる受験者は限りなくゼロに近い状態です。つまり、そもそも的外れな内容を様々な受験者が述べ、採用側はそれらを比較して「これはまだマシか」というような何ともレベルの低い判断を迫られているのです。

以下、面接を想定して、具体的な回答例を示してまいります。

0点の回答

〇面接官
「人口減少への対応について、どのようにお考えですか。」

◆受験者A
「子育て施策を充実させ、子育て世帯の転入を促進したいです!」

〇面接官
(うーん、その「充実」のための財源はどこから確保するのでしょうか。)

◆受験者B
「若者をターゲットとして市の魅力をSNS等で発信する必要があると思います!」

〇面接官
(うーん、もしもあなたなら、本当にそれがきっかけでその街に引っ越すのでしょうか。)

◆受験者C
「〇〇イベントを開催して、まずは多くの方に来てもらう取り組みをします!」

〇面接官
(うーん、「あのイベント、とても楽しかったな、よし、住もう!」となるのでしょうか。)

これは、あくまで一例です。地獄の集団面接の絵が目に浮かびます。【0点】とされる内容のイメージを感じ取っていただけるでしょうか。これらの回答からは、「どうにか転入者を増やしていかなければいけない」というような問題意識程度は感じます。しかしながら、ただ単に「思いつき」のアイデアを述べているに過ぎず、それについての説明、持論をいくらしつこく繰り返そうと、自らの思慮の浅さを露呈してしまうだけなのです。

また、近年の受験者にとって「子育て施策」は大人気です。最近話題になっている、千葉県の流山市や兵庫県の明石市などの成功事例などについて(ご存じで無い場合は調べておきましょう)印象が強いのでしょうか。また、20代~30代の受験者であれば、「SNS」も頻出ワードです。これも、とにかく弱いです。それぞれ個別の事例について、なぜこの発言がダメなのか、という説明までは割愛いたしますが、とにかく採用側は、「コソダテ、コソダテ、コソダテ、エスエヌエス、エスエヌエス」幻聴が聞こえるほどにこれらのワードを大変多くの受験者から聞かされます。各自治体が抱える「人口減少への対応」というものは、そのような表面上の取り組みだけで対応できるように簡単なものではない、とまずはご理解いただければ結構です。

これをご覧になり、「え、自らの準備していた考えが【0点】なのか?」とギクッとされた方もおられるのではないでしょうか。安心してください。大袈裟ではなく、面接試験受験者全体のうち、約半数程度はこのような発言をします。つまり、これを機に思考を改めていただくだけで、既に上位50%の資格を得ることになります。次に、「少しだけ」マシな内容を見てみましょう。

20点の回答

〇面接官
「人口減少への対応について、どのようにお考えですか。」

◆受験者
「この街から出て行ってしまう方を減らすことが必要だと考えています!」

〇面接官
(お?)「それでは、どのようにしたら転出者を減らすことができますか?」

◆受験者 パターン1
「子育て施策を充実させ、子育て世帯の転出を抑えます!」

〇面接官
(うーん、その「充実」のための財源はどこから確保するのでしょうか。)

◆受験者 パターン2
「ショッピングモールや子どもの遊び場など、市内の施設を充実させます!」

〇面接官
(うーん・・)
(少しずつ、面接官にどのような突っ込みをされるかイメージが沸いてきましたか?)

こちらは、0点は回避したかもしれませんね。そもそも人口を維持するために必要なことは、「転入者を増やすこと」と「転出者を抑制すること」の両輪で考える必要がある、という最低限の理解ができている受験者のパターンです。物事を全体的に把握する一定の思考については評価できるものの、この先の具体的な対応法についてはまだまだ理解が足りておりません。

なお、ここで一つ有益な情報をご提供いたします。それは、「どのような自治体も、転入者増よりも、転出者減の方がはるかに優先度が高い」ということです。これは必ず頭に入れておくべき事項です。理由については、ご自身で色々と考えてみてくださいね。

また、【「転入者を増やすこと」と「転出者を抑制すること」の両輪で考える必要がある】という前提部分については、これをしっかりと言葉として述べる手法も良いことです。面接時にもですが、特にこれが論文の場合などであれば、理路整然と意見を記載するための土台として更に役に立つでしょう。それでは、次の例はこの前提部分もちゃんと入れたやり取りにしてみましょう。

30点の回答

〇面接官
「人口減少への対応について、どのようにお考えですか。」

◆受験者
「人口を減らさずに維持させるためには、「転入者を増やすこと」と「転出者を減らすこと」、この二つについて考える必要があると思いますが、、、そうですね、、、私は、どちらかといえば、後者の、この街から出て行ってしまう方を減らすことが必要だと考えています!」

〇面接官
(お??)「それでは、どのようにしたら転出者を減らすことができますか?」

◆受験者
「私は、この街の子どもたちにどれだけ地元愛を持ってもらえるか、がとても大切なポイントだと思っています。」

〇面接官
(お!!?)「それはどのようなことですか?どうすれば地元愛を持ってもらえますか?」

◆「はい、やはり地元愛があることで、大人になってからもずっと地元に住みたいと思ってくれるはずです。そのためにも、地元ぐるみで子どもたちを大切にする必要があると思います。」

〇面接官
(うーん、何か「言っているように見える」けど、結局「何も言ってない」よな。)

これは、もう少し理解が進んだ受験者でしたね。転入増加と転出抑制を比較し、転出抑制を優先させるべきという意見、また、転出抑制のためには、子どもたちの地元愛がポイント、という持論を展開しています。これら自らの考えをしっかりと述べている部分までは一定の評価ができます。ただし、その自らの考えを実現するための具体的な案や、想定される課題などについては整理が行き届いておらず、今後行政職員として実際にお仕事に取り組むイメージを持つことができていない、という評価に留まります。とすると、次はどの部分を改善していけば良いかが見えてくるはずです。それでは、もう一歩進んでみましょう。

40点の回答

〇面接官
「人口減少への対応について、どのようにお考えですか。」

◆受験者
「人口を減らさずに維持させるためには、「転入者を増やすこと」と「転出者を減らすこと」、この二つについて考える必要があると思いますが、、、そうですね、、、私は、どちらかといえば、後者の、この街から出て行ってしまう方を減らすことが必要だと考えています!」

〇面接官
(お??)「それでは、どのようにしたら転出者を減らすことができますか?」

◆受験者
「私は、この街の子どもたちにどれだけ地元愛を持ってもらえるか、がとても大切なポイントだと思っています!」

〇面接官
(お!!?)「それはどのようなことですか?どうすれば地元愛を持ってもらえますか?」

◆受験者
「はい、実際に御市では、〇〇という取り組みや、〇〇など、子どもたちが地元と繋がりを感じることができるような取り組みがすでに整備されていると思います。ただ、これらが素晴らしい施策であっても、それぞれが単独の「点」のような支援になってしまうと効果は少ないと思っています。例えば、御市といえば「保育園幼稚園の頃は〇〇→小学生になると〇〇→中学、高校では〇〇を経験するものだ」と皆が知っているような形で、小さい頃から大人になるにつれて「体系立てた地元愛を育む仕組み」をしっかりと確立することで、間違いなく子どもたちの地元愛は強くなると考えています!」

〇面接官
(こいつ・・!!)「なるほど。しかし、大学進学時や、就職するタイミングなどではどうしても地元愛が強くても転出する可能性が高いように思いますが、それについてもその取り組みで対応できるとお考えですか?」

◆受験者
「はい、しっかりと地元愛を持っていただくことで、地元の学校や地元への就職者を増やすことができると考えています!」

〇面接官
(うーん、そういうことじゃないんだよね。惜しい。)

この段階で、やっと当落線上ギリギリの会話に近づいてきました。受験する自治体が実際に取り組んでいる施策を示し、それらが「点」になっては勿体無いという自らの考えを述べたうえで、「体系立てた地元愛を育む仕組み」という、インパクトのある表現も使用しています。まだまだ深みは足りず、稚拙な提案ではありますが、自らが実際に仕事をするという視点を一定程度有しているようにも見えます。それでは、更に視野を広げた意見も準備した形で挑みましょう。

50点の回答

〇面接官
「人口減少への対応について、どのようにお考えですか。」

◆受験者
「人口を減らさずに維持させるためには、「転入者を増やすこと」と「転出者を減らすこと」、この二つについて考える必要があると思いますが、、、そうですね、、、私は、どちらかといえば、後者の、この街から出て行ってしまう方を減らすことが必要だと考えています!」

〇面接官
(お??)「それでは、どのようにしたら転出者を減らすことができますか?」

◆受験者
「私は、この街の子どもたちにどれだけ地元愛を持ってもらえるか、がとても大切なポイントだと思っています!」

〇面接官
(お!!?)「それはどのようなことですか?どうすれば地元愛を持ってもらえますか?」

◆受験者
「はい、実際に御市では、〇〇という取り組みや、〇〇など、子どもたちが地元と繋がりを感じることができるような取り組みがすでに整備されていると思います。ただ、これらが素晴らしい施策であっても、それぞれが単独の「点」のような支援になってしまうと効果は少ないと思っています。例えば、御市といえば「保育園幼稚園の頃は〇〇→小学生になると〇〇→中学、高校では〇〇を経験するものだ」と皆が知っているような形で、小さい頃から大人になるにつれて「体系立てた地元愛を育む仕組み」をしっかりと確立することで、間違いなく子どもたちの地元愛は強くなると考えています!」

〇面接官
(こいつ・・!!)「なるほど。しかし、大学進学時や、就職するタイミングなどではどうしても地元愛が強くても転出する可能性が高いように思いますが、それについてもその取り組みで対応できるとお考えですか?」

◆受験者
「はい、その時点での転出は一旦許容するべきだという考えです。むしろ、一度街を離れることで、御市の魅力を改めて感じて欲しいという狙いを持つべきだと思います。そして、結婚してどの街で子育てをしようか、と考えたときなどに、自分がそうしてもらったように、大好きな地元で子育てをしたい、と帰ってきてもらえれば、転出したときは1人だったのに、3人、4人になって帰ってきてくれます。これが長期的に見ても非常に効果的な戦略であると思うのですが、いかがでしょうか。」

〇面接官
(・・いいぞ!!)「なるほど。それが実現できれば実に面白いですね。では、先ほどおっしゃった「体系立てた地元愛を育む仕組み」の実施に向けての課題など、懸念点について教えてください。」

60点~を目指して

一旦、この程度にしておきましょう。いかがでしょうか。この50点が最低限、面接として成り立つ段階です。悲しいかな、どれだけ多く見積もっても、面接試験を受ける受験者のうち、20%程度しかこのレベルには達しておりません。そうすると、「公務員試験対策」の容易さを感じることができるのではないでしょうか。このような一つの論点に対して十分に考えを深め、対応できるように進めていけば、エントリーシート、論文(作文)、グループワーク、面接、プレゼンテーション、どのような場面でも全く問題なく対応ができるということです。

ここまでこの駄文を読み進めていただいて、どのくらいの時間がかかりましたか。たったの数分ですよね。しかし、この数分で、皆さまは「人口減少への対応」という論点について、簡単であれば何かしらの意見を述べることができるようになったはずです。それでは、これが一日かけて様々な論点についての学習をした場合、どれだけ思考の幅が広がるのか、ということです。公務員試験に合格することなど、この程度の作業の繰り返しにすぎないのです。

ただ、少しいじわるなことを申しますが、本稿は大変多くの方がご覧になると思います。よって、もうここに私が記載した「人口減少への対応」についての考え方は一切使用できなくなってしまいました。同じような意見をエントリーシートに記載する、面接で発言する、ということは採用試験において致命的です。「誰かの受け売り」と思われるような主張をする受験者は問答無用で不合格となってしまいます。つまり、この論点の組み立てなどについては、あくまでご自身が独自に用意しておく必要がある、ということです。

同時に、ネットや書籍上で良く見かけるような「想定問答」や「公務員面接対策」などとして記載されている内容や、予備校で指導するような一般的な受け答えなどについても同様で、本番では一切役に立ちません。簡単に手に入れることのできる情報は、そこに価値を持ちません。しっかりとご自身で整理をされていくか、(私自身を宣伝するわけではありませんが)私のような専属の指導者か、もしくは信用のできるご家族や知人(少なくとも公務員として15年程度経験がある方で、できれば管理職以上の経験者が望ましいです)などの協力を得ることが得策です。

それでは、話を戻し、当該論点を60点程度まで仕上げるための作業もお示ししておきます。先ほどの面接官とのやり取りの最後に質問があったように、一定程度のレベルの発言ができている場合には、当該提案などの実現可能性や懸念点など、ネガティブな要素を突かれることになります。それに対しての準備をしておくことが必要です。

まず、今回提案した「体系立てた地元愛を育む仕組み」では「保育園幼稚園の頃は〇〇、小学生になると〇〇、中学高校では〇〇」という発言をしていました。これは、学校教育の範疇に入ります。行政機関として手を出せる部分と出せない部分があるのです。それについての理解を示し、「教育」との相乗効果を前提とした、教育機関との協力、連携の取り組みの必要性、などを述べることで、懸念点についてもしっかりと考えを持っていることを表すことができます。

他には、自らの意見そのものに対する否定意見も想定しておくべきです。例えば、子どもは自由意志のもと行動するもので、そのような「体系立てた地元愛を育む仕組み」への参加を強要される方が、逆に反発して外に出たくなるものではないか、というような意見です。これについては、先ほどのUターンの視点に繫げることもできるでしょうし、「寝た子を起こすな」の議論に近い視点で主張するのも良いでしょう(全く別論点ですが、「寝た子を起こすな」という考えは行政職員(特に地方公務員)としては必ず知っておく必要があるので、初めて聞いた方はぜひ調べておいてください)。上手くいかないかもしれないから、余計なことをしないでおこう、という後ろ向きな視点でなく、この街のためになる可能性があるのであれば、トライするべき、という前向きな意見を示す、ということです。

これで60点です。一般的な基礎自治体、都道府県などであれば、各論点についてこの程度の主張ができれば合格ラインに乗ってくるでしょう。70点~100点の内容をこちらでお示しすることはさすがに致しかねますが、ヒントとしてご助言をいたしますので、ぜひ色々と考えを巡らせてみてください。この論点で最も重要な部分は、「転入者を増やすこと」と「転出者を抑制すること」のいずれでもなく、「いち早く「ゼロサムゲーム」から脱却し、持続可能な自治体経営のあり方を構築する」こと、です。時間に余裕があれば、じっくりと考えてみてください。

4.「蜘蛛の巣」を張り進める

今回は「人口減少への対応」について考察しましたが、せっかくの良い機会ですので、ここからどんどんと論点を広げていく方法が、最も効率的な対策です。例えば、自治体はなぜ人口減少を好まないのでしょうか。それは単純に担税者(税金を納める人)が減ると、自治体の収入が減り、提供することのできるサービスの質が低下し、それが嫌で更に転出者が増える、というように負のスパイラルが起こるからです。なので、「人口が減ることが嫌」というよりも「収入が減ることが嫌」なのですね。そうすると、次の論点としては、その「収入(税収)が減る」ことへの対応を考えよう、ということになります。

先ほどのような面接官とのやり取りなどの例などは割愛しますが、「収入が減る」という問題に対して、皆さまはどのように捉えますか。重要なのは、収入が減っても、費用がそれ以上に減ったら根本の問題は起こらないということです。逆に、収入が増えても、費用がそれ以上に増えると、これは大きな問題です。よって、「収入」という単一の視点だけで物事を捉えずに、俯瞰的な視野を持っていただかないといけません。「転入者」と「転出者」の考えと似ていますね。そうすると、「収入が減る」という問題ではなく、「使えるお金が減る」ことが問題の本質であることがわかります。この「使えるお金が減る」という問題に対して、あなたはどのような手を打ちますか、と考えます。

さて、ここからどのように思考を展開しましょうか。社会保障費、医療費等々の削減(つまり、費用の削減)を目指しますか。それとも、広告収入の増加や企業支援による法人税増加(つまり、収入の増加)を目指しますか。様々なことが考えられます。それぞれの論点について、数珠つなぎのように、蜘蛛の巣のように考えを連携させることが「公務員試験の対策」なのです。そう考えると、論文の対策、面接の対策、プレゼンテーションの対策、これらについても、別のものではなく全てが繋がっているように思えるはずです。

また、その蜘蛛の巣の中にある各論点の間には、必ず深い関係があります。ごく簡単な例では、高齢者のスポーツ大会の実施は、市の費用削減に繋がります。高齢者がいつまでも健康で元気に過ごすことができれば、介護サービスの費用等は削減され、市の財政状況は好転するということです。また、町内会の定期イベントの実施は、転入者の増加に繋がります。地域の深いつながりは、防犯面でも強力に作用し(3軒隣に住むお子さんが知らない大人と歩いていたら声をかける、など)、犯罪件数の減少、治安イメージ向上により、転入促進効果があるということです。

つまり、A論点(例:スポーツ大会)とは一見関係が無いように見えるZ論点(例:財政状況好転)であっても、実は深く繋がっていることが多いのです。よって、今回のように理解を深めた論点が5個、10個と増えていくことで、様々な問いに対して自然に回答をすることができるようになるということです。得意な論点をいくつか準備することができれば、全く違う話題についても必ず対応ができるようになります。

5.さいごに

まとめに入りますが、本稿は、皆さまが公務員試験に挑むために必要な、基本となる考え方を中心に、ごく簡潔に取りまとめております。「公務員試験の対策」については、そもそもの考え方が誤って広がっている部分があまりに多く、適切な知識、手法をもって対策を進めなければ、絶対に合格まで辿り着きません。どれだけ筆記試験で満点を取ろうと、何百回提出書類の添削を行い綺麗な文書を作成しても、何百回面接練習を行いスラスラと発言できたとしても、意味がありません。本当に皆さまが今するべき対策は何なのか、それを十分にご理解ください。

学生の皆さまも、社会人の皆さまも、公務員試験対策にやや行き詰まり、本稿に辿り着かれた方も多いかと思います。もうひと踏ん張り、本気で頑張ってください。公務員は良い仕事です。ライフワークバランスも保てますし、待遇も十分です。「公務員も大変だ」、「公務員は薄給だ」というような声も多く聞かれますが、私としては、自らの経験もありますし、全国の数えきれないほど多くの公務員の仲間の幸せな人生を見てきた立場からすると、ネガティブな意見に対しては、「そんなことはない。公務員は最高ですよ。」と胸を張って言い切ることができます。

あと、お給料は意外と高いです。公表されている平均年収などのイメージと実態とでは大きく異なるはずです(お金のことをこのような場で記載すると色々な問題がありますので、知りたいことがあればいつでも個別で聞いてください)。

昔から公務員を目指されていた方、現職への不満や将来への不安から挑戦を決意された方、ご家族のために勇気を出して一歩踏み出された方、本当に、皆さま受験に至った経緯や思いは様々だと思います。これまで何千人の依頼者様と関わらせていただきましたが、とにかく、それぞれの強い思いをひしひしと感じ続けてまいりました。また、それが私自身のモチベーションにも繋がっておりました。この機会に、改めて、全ての公務員試験受験者に敬意を伝えたいと思います。ありがとうございます。

まだまだ色々とお伝えしたいこともあるのですが、ひとまずはこれで終わりにさせていただきます。本稿が、微力ながらも皆さまのお役に立てればこの上ない幸いです。

以上

(繁忙期等、新規のご依頼に対応できない場合であっても、ご自身で対策を行うための今後の戦略についてのご助言等、可能な範囲でご助言をいたしますので、お気軽にメッセージ等いただければと存じます。)
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