四方を ぐるりと囲むように
永遠に続く螺旋を描いて
そびえ立つレンガ造りの建物群
夜更けの街は死んだように静かで人気が無い。
こどもが一人 空を見上げている。
氣が遠くなる程、空高くまで続く家々を。
昼間などは、この『壁』のせいで
陽の光は遮られて、余計に押しつぶされそうな気分になる。
こどもは常々『そと』の世界を見たいと思ってた。
でも『壁』は言う。
『お前には未だ早い』
『お前如きに何ができるのか』
そう言われ、次第に
『自分は”そう”なのだろう』
と、こどもは考えるようになる。
『そと』への渇望から
『壁』が寝静まった後、夜空を見上げる日々が続く。
あんなに威圧的な壁が夜の闇にとけて空と一つになる。
それは、心が解放されるひと時だった。
『”いま”が ずっと続きますように』
と、こどもは つきに願いをかけた。