「美味けりゃ売れる」という幻想

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コラム

「美味けりゃ売れる」は幻想である

昔はよく「売り上げを上げるためにとにかく美味しいお菓子を作ろう!」というように考えていました。
毎日遅くまでお店に残って、お菓子作りの練習をして、めちゃくちゃ美味しいお菓子を作る技術を伸ばしていました。

なぜなら「美味けりゃ売れる」という幻想を胸に抱いていたからです。
どこのケーキ屋さんにも負けないような美味しいケーキを作りさえすれば絶対に売れまくるんだ!そう思っていました。

しかし、ある日の食べ歩きを機にこの考え方は打ち砕かれてしまいました。
どうやらおいしいと売れるは必ずしもイコールでは無いようです。

事実、ミシュランで星を獲得するようなお店でも経営が厳しいお店も存在します。逆に、繁盛しているように見えないのに何十年も生き続ける地元のラーメン屋という存在もあります。
この事実を頭の片隅に置いたうえで読み進めてみてください。

美味しいのに売れないお店

僕が働いていたケーキ屋さんは世界に名を轟かせる超一流シェフが経営するお店でした。
どのケーキを食べても非の打ちどころが無いほどに美味しく、とても感動したことを覚えています。

そのようなお店の売上金額は月に800万円を超える程でした。
ケーキの味以上にこの金額に感銘したこともあります。

しかしこれは僕が入社する前の話です。
僕が入社した頃のお店は売り上げが右肩下がりの状態でした。
昔は平日だろうと1日で100万円を超えるようなレベルだったそうだが、僕が経験したのは1日10万円行けば良い方というレベルでした。雨の日は2万円なんて日も。

もう一度言います。
僕が働いていたケーキ屋さんは世界に名を轟かせる超一流シェフが経営するお店でした。そんなお店でも経営難に陥っていたのです。

こんなに美味しいのになぜ売れないのか、、、

現状に全く理解が追い付かず困惑した日々が続いたある日のこと。卸業者の方に「関東で一番売り上げがあるケーキ屋さんは○○店ていうところらしいよ!」という噂を聞きつけました。
そういう事情に詳しい先輩にも聞いてみたところ「あぁ~そうらしいけど信じられないんだよね」と言われました。
これは自分で確かめる必要がありそうだと感じたので、休みの日に早速○○店に足を運びました。

味はイマイチなのに繫盛するお店

噂の○○店は東京の一等地、、、とは離れた場所にあり、お世辞にも便利な場所にあるとは言えないリッチです。
「こんなところにあるのにうちの店より売れてるのだから相当なおいしさなのだろう、、」と期待を胸に入店。そしてケーキが並ぶショーケースを見ると衝撃が走りました。

ショーケースに並ぶケーキはどれも見た目が「普通」なんです。
見た者を魅了する美しい外見とそれを裏切らない芸術のような味わいのケーキを毎日作っていた僕には全く魅力的に感じませんでした。

「まじぃ、、、?」

きっと味がいいんだ、、、きっとそうだ!
そしてケーキを複数購入。

お店のテラス席で飲み物と一緒にいただくことにしました。
早速一口目をいただく。
「、、、普通だ。」
二口目三口目、いくら食べてもどのケーキを食べても、、、普通でした。
突出して特徴的な表現をしているわけでもなく、パティシエにとってはむしろイマイチな味わいでした。

しかし、この○○店は関東で一番の売上をたたき出しているというのです。
勇気を出して売上などを聞いてみました。数字は忘れてしまったのですが、本当にうちのお店より売上が高かったです。
関東で一番の数字なのかもわからないのですが、確かにすごい数字でした。

「おいしい商品」と「売れる商品」は別物


この話からも分かるように、美味けりゃ売れるというのは幻想なのです
おいしい商品と売れる商品は別物なんですね。

では、おいしい商品と売れる商品の違いは何なのでしょうか?
一言で言うと「誰にとって美味しいのか?」ということです。

「今作ってるこの商品は誰にとって美味しいのか?」
あなたはそんなこと考えたことがあるでしょうか?
僕は一度もありませんでした。。。

誰にとっておいしいのか?

商品開発をする際はきっとこんな感じでしょう。
「まずは自分が納得できる味を作る」
「その次は身近な人(スタッフ等)に試食してもらう」
「微調整してもう一度食べてもらう」
この工程を何度か繰り返して、販売開始するのではないでしょうか?

ん~、、売れない商品になる臭いがプンプンだぁ!

なぜか?
自分たちにとってのおいしい商品を作っているからです。
残念ながら自分たちがどんなに美味しいと納得しても、それをお客様が求めているとは限りません。

商品開発とは、いかにお客様にとっておいしい物を作るかが大切なのです。
僕の経験上お客様を置いてけぼりにして、とにかく自分たちにとって美味しい商品を追い求めているとスベり倒す確率が高いです。

最初から100点を目指すべからず

そして何より、自分たちにとって美味しい物を作っているとどうしても最初から100点満点でぐぅの音も出ない完璧な商品を作ろうとしてしまいます。
志としては素晴らしいのですが、これだとやたら時間とお金が消費されていつまで経っても販売を開始できません。

どんなに労力をかけて商品を作ったとしても、お客様がマズいと言えばそれはマズい商品なのです。

さっきも言った通りお客様が求めているとは限らない以上、ここにだけ時間とお金をかけ続けるのは勿体ないです。

ていうか完璧な商品何て作れませんよ笑

ではどうすればいいのか?
まずは70~80点を目指す。
そして育てる。
これだけです。

売れる商品は育てる

「70~80点でお客様に販売するなんて舐めてるのか?」
と言われたことは何度かありましたが、舐めてません。いたって真剣です。
お客様を置いてけぼりにしてしまう方がよっぽど舐めてます。

商品はとにかく育てなくてはいけません。
まず80点の商品を作ったとしましょう。
そしたら販売するでも、無料で試食会を開催するでもなんでもいいので、一般の方に食べてもらいましょう。
きっとお客様の声が聞こえてくるはずです。
「美味しい!友達へのお土産にいいかも!」
「賞味期限が短いのが気になるなぁ」
「甘さ控えめで大人な味ですね!」
「紅茶とセットだったら絶対に頼んじゃう」
「袋が開けづらいなぁ」
「食べづらいなぁ。食べやすいなぁ。」
などなど
味のこと。見た目のこと。それ以外のこと。
自分たちだけで開発を進めても出てこなかったような反応がたくさん出てくることでしょう。
お客様にとってのおいしいとは何も味だけではないのです。
自分たちがターゲットにしているお客様はどんな商品をおいしいと感じるのか?とにかく探し続け、改善し続け、売れる商品を育て続ける。

これが売れる商品を作る方法なのです。

まとめ

美味けりゃ売れる。
食に携わるとどうしても陥ってしまう考え方です。
しかし、実はおいしいと売れるは結び付かないんだよということをこの記事でざっくりとお話ししました。
お客様にとっておいしい商品を作って売れる商品を育てていきましょう。

・「美味けりゃ売れる」は幻想である
おいしいと売れるは必ずしもイコールではない
・美味しいのに売れないお店
世界に名を轟かせるシェフの店でも経営難
・味はイマイチなのに繫盛するお店
おいしいよりも大切なものがある
・「おいしい商品」と「売れる商品」は別物
自分にとっておいしいを追及するとスベる
・誰にとっておいしいのか?
お客様にとっておいしい商品を作るべし
・最初から100点を目指すべからず
 まずは70~80点を目指す
・売れる商品は育てる
お客様の声をもとに改善し、育てる

商品開発、レシピ開発を検討している方はぜひ参考にしてみてくださいね^^

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