未亡人会会長の恋人

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コラム
幸せを呼ぶ占い師 鈴音すずね と申します

はじめに、タイトルにも入っている『未亡人』という単語ですが、不愉快な思いをされる方も多く、今では死語に近いということは存じております。しかし
「未亡人会会長」は実際にあった肩書であり、他の言葉に置き換えることが難しいためにそのまま使用しています。どうぞご容赦ください。

40年以上前のことです。私は田舎の小学校高学年でした。私の通っていた学校は、学校行事があると生徒が来賓の所へ案内状を持って行くことになっていました。
「こんにちは 私は〇〇〇〇です。今度の日曜日に小学校で運動会がありますので見に来てください」
などという口上を職員室で個別に練習しました。それは5,6年生の仕事で、なんとなく晴れがましいお使いでした。

私は近所の未亡人会会長に招待状を持って行く役目を仰せつかりました。その家は元々このあたりの地主さんで、塀に囲まれた大きななお屋敷でした。
未亡人会会長の肩書を持つその人は、いつも和服を召されていて、私の祖母と同じくらいの年齢に見えました。茶道、華道、お琴の先生をなさっていて、その先生のところでお稽古事をするのは、田舎町のステイタスでした。

学校から帰ってすぐ私は案内状を持ってその家に向かいました。ところがその時は留守で玄関が開きませんでした。
家に帰って宿題や手伝いをしているうちに案内状のことは忘れてしまい、家族で夕食を食べる頃に思い出しました。
食事時によその家に訊ねるのはマナー違反ですが、学校からのお使いですので仕方ありません。近所なので夕食前に急いで届けにあがりました。

その屋敷の門をくぐると玄関に明かりがついていたので、嬉しくなって玄関の引き戸を勢いよく開けて「こんばんは」と大きな声をかけました。
玄関の先の廊下におられたのは未亡人会会長ではなく、男の人でした。私は驚きましたが相手の方も驚かれたようでした。すぐに未亡人会会長が出てこられました。私は学校で習った通りの私は口上を述べて案内状を渡して急いで帰りました。

家では家族揃っての夕食が始まっていました。無事に用事は終わったか、というようなことを祖母が言いましたが、私はそれよりも先ほどから疑問に思っていることを尋ねずにはいられませんでした。
「ねえ未亡人って、ご主人が亡くなった女の人のことよね。未亡人会会長の家に男の人がおられたのだけど」
大人たちは顔を見合わせました。祖母が落ち着いた声で言いました
「お客さんが来ておられたのよ」
「でもね、その男の人はズボンを脱いで、ステテコだったの」
祖父と父は、物も言わずに夕食を食べ終わると、そそくさと席を立ちました。私は大人たちの反応を見て、「ははあ」と察するところがあり、それ以上なにも言いませんでした。

お風呂から上がると、「ちょっと来なさい」と母に呼ばれ、今日見たことは、よそで言ってはいけないときつく口止めされました。

狭い田舎町の事なので、周囲の大人たちは知っていたことかもしれません。それでも子供が口にすることではないということだったのでしょう。
それからしばらくしてその方は亡くなって、最近そのお屋敷も取り壊されていました。

今になって考えれば、未亡人会会長はあの時50代後半か60歳くらいでした。独身でもあったし、恋人がおられたとしても何の不思議もないことでした。しかし時は昭和の終わり、田舎でもあり人目を忍ぶ恋しか許されなかったのでしょう。
あの上品な方に、重荷を下ろす場所はあったのでしょうか。

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