共分散構造分析について考える

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こんにちは!
心理学客員研究員の原です。

今回は共分散構造分析について考えてみていきたいと思います。

私は大学は心理学系の学部・学科を出ていないのですが,大学院受験勉強をしているときにAmosがあり,このソフトで共分散構造分析や多母集団同時分析,媒介分析,確認的因子分析などができることを学びました。

大学院に入ってから統計の先生に言われたのは「これからは重回帰分析ではなく,共分散構造分析の時代が来るよ。だから,修士論文で質問紙調査をするのであれば共分散構造分析をやってみな~」でした。
なので,修士論文も博士論文も共分散構造分析や多母集団同時分析,媒介分析をやっていました。お皿を見るだけで潜在変数を思い浮かべて,お皿の配置を変えるなどしていたくらいどっぷりと浸かって勉強していました(^^;

実際,有名ジャーナルの分析の多くが共分散構造分析などを用いていますから変数の関連を見るときには,重回帰分析の時代ではなくなりましたね。

共分散構造分析の場合,誤差分離というのができます。少し専門的な話しになってしまいますが,項目を足して観測変数を作り,観測変数を用いて因果関係を推定している論文を多く読んできました。
けど,観測変数の場合,誤差が入ってしまうため適切な標準化推定値が出なくなります。
なので,できるだけ潜在変数を使うのが望ましいんです。
潜在変数を使うと潜在変数間の標準化推定値に誤差の影響があまりでないので適切な推定値を出すことができます。

ここまでいくのに何年も時間を要して修士論文・博士論文だけでなく,共同研究の分析役として携わらせていただくなど分析について本当に様々な経験をしてきました。

観測変数のみの分析をパス解析と言ったりもしますが,あまりオススメできないです。できるだけ潜在変数を使った分析をする必要があります。
共分散構造分析をやる場合には質問項目ができるだけ少ない方がいいので質問紙の作成の段階からこの分析を念頭に置いておかないといけないです。
心理学系の大学院で質問紙調査を選択した人にはぜひ共分散構造分析や多母集団同時分析にチャレンジしてみていただきたいです。

重回帰分析とは異なり,共分散構造分析などの分析では適合度指標を用います。日本ではRMSEAが絶対的な基準を示す指標と解釈されていますが,それ以外にもCFIやTLI,IFI,GFI,AGFI,SRMRなどを使いますし,多母集団同時分析の場合には等値制約というのをやらなくてはならないのでその際にAICやBIC,BCCなどを使いモデル比較をします。私的にはRMSEAとCFIだけでも十分だと思っていますが,補助的な情報としてTLIを使うことが多いです。多母集団同時分析の場合にはBCCが望ましいですね。AICが多いのが現状ですが。

RMSEAが.00になることが最も良いと思われている研究者がいますが,実はそれはあまり望ましくないです。不必要なパスを多く入れている場合が多いんです。
RMSEAは.06以下であれば問題はありませんし,その他にもCFI,TLI,IFI,GFI,AGFIは.95以上,SRMRは.08以下などの基準があります(Hu &Bentler, 1998, 1999)。
グレーゾーンをどれくらいまでにするのかで解釈は研究者間でもわかれますが,私はRMSEAは.08,CFI,TLI,IFI,GFI,AGFIは.90,SRMRは.09程度までならギリOKではないかと思っています。

共分散構造分析の場合にはAICなどの報告は不要ですが,きちんと理解してない研究者が多く,AICの報告をしているのが目立ちます。国内外の論文は結構読んできたのですが,共分散構造分析をきちんと理解していない研究者が書いた論文を読んでいると違和感を覚えます。

適合度を良くしようと誤差共分散を仮定している場合も数多く見られますが基本的には縦断研究でないと誤差共分散は使ってはいけないなど「暗黙のルール」が多々あるんです。
この「暗黙のルール」を知らない研究者は結構多いのが現状です。

適合度が良いと言われるのは,この分析結果の妥当性が担保されていると言い換えることもできるので説明力が高まりますが,本当にきれいな形で共分散構造分析などが行われている論文は,日本ではまだまだ少ないです。

ここまで来れたのは統計の先生の具体的なアドバイスや指導教員が分析をする機会をたくさん作ってくれたおかげです。本当に感謝です。

きちんと共分散構造分析をしてみたいと思う方にとって,私が少しでもお力になれればと思っています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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