死亡。5

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コラム
社会人になって何年か後には姉たちは好きな男性と一緒になって外の世界へ羽ばたいていった。
残った私はひたすらテルミさんの面倒を見た。
テルミさんの出勤が早ければ車で送って行ったし、迎えに行って帰りにグチグチと愚痴を垂れるのを聞きながら好きなバニラアイスをコンビニで何度も買ってやった。
色々と略歴のある自分のスキルを活かしてある時は焼き菓子を作ってやったり、ある時は排水口を自分で構築して綺麗に流れるように組みたててやった。

それでも、たまに呼ばれる名前は「アキちゃん!」で、「私はくうきですけど?」と、嫌味をチクリと何度言ってもその癖は消えず、私は所詮テルミさんのお人形で、本当にシアワセにしたいのは姉たちの方だったのだ。
人間扱いされなかった。ヨシヲにも、テルミさんにも。

そして、自分の身の振り方を考えている間に風の噂でヨシヲが死んだと聞いて、テルミさんはエホバ式の葬り方をされて亡くなった。

完全に自由になった今、したい事はと問われてみれば、何か、自分のように何かに縛られている人の足枷を外すところまでは行かなくても、拘束を弱くしてやることはできないかと思いはじめ、流れ着いたのが此処だった。

完全に解放してやることはできなくても。
自我を保ち続けるために自分の中の毒を吐き出していけるように。

こうして私は愚痴聞き屋として、活動をはじめる。
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