『危篤状態です、すぐに来てください』

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コラム
この言葉・・・いろんな思いが浮かぶ言葉だとおもいます。

この言葉を聞いて、ドラマみたい!!って、わくわくする方。
あー、よくある言葉だな・・・って、日常を思い出す、医療・介護関係者。
大事な家族がこんなことになったらいやだな・・って、不安に感じる方。

実際にこの言葉で病院に呼び出され、
家族の最後を見届けた、その日を思い出す方・・・


今日、私は敗血症の重篤な状態の患者様を受け持ちました。
おじいちゃんは昨日まで、しんどいと言いながら自分のことは自分でできる方でした。

夏からしんどいと言っていたおじいちゃん、病院に行かないと頑固で昨日来た時には数分単位で状態の悪化がわかるほど重篤な状態でした。

血液の中に菌が入り、多臓器不全を起こし、血圧が保てず多量の薬で何とか保っている状態。腎臓のもちろん障害され、尿で毒素を排出できなくなり、電解質異常が起こって、死に至る不整脈が起こる前兆を感じた私は家族を呼ぶことを医師に提案しました。


その日の朝早く、医師は家族に連絡し、患者の状態の報告と延命的な治療を行わない医師を確認したから、延命治療の撤退を宣言していました。

多忙のため、医師の代わりに私が、家族に連絡をするように指示され、家族に連絡しました。

「急に連絡させていただき、申し訳ありません。○○さんですが、現在血圧が下がり尿が出ていないため、電解質異常が起こり心臓の動きが障害される不整脈がみられています。大変驚かれたとおもいますが、可能な限り早く病院に来ていただきたく思い、ご連絡差し上げました。」

長男さんは、「朝、主治医の先生からは、手の施しようがありません。
2~3日でなくなるでしょう。としか、話を聞いていません。
尿が出ないことが原因なら、透析とかそれに対する治療はないのですか?
詳しい、治療の話は聞いていないのです。」

「え?  治療についてのお話は朝されたと伺いましたが、くわしい説明を希望されますか?でも今、心臓マッサージを必要とするくらい重篤な不整脈が出ようとしています、とりあえず病院に来てください。」と、伝えました。

長男さんとの電話を切り、主治医に電話の内容を報告。
主治医は語気を荒げ、「なんでいらないこと言うの?朝説明したじゃん!それでいいことになってたのに、今透析なんて無理でしょ?誰がそんなこと言いだしたの?」と言いました。


来院後、主治医は再度長男さんに治療の説明をしました。
「手の施しようがない」という一言での説明で終わった理由について、今のこの重篤な状態で明らかに透析等の治療が行える状態ではないとの判断であえて言葉にしませんでしたと、説明されました。


長男さんはその後、おじいちゃんが息を引き取るまでの数時間、片時もそばを離れず横にいらっしゃいました。


看護師間の申し送りでは、長男夫婦と同居していたけど、3か月近く食事が満足に摂れていないおじいちゃんを「自分でちゃんとしてるから」と言って、放置していたんじゃないか、ネグレクトに近い家族の可能性もあります・・・との申し送りでした。

おじいちゃんのそばで、その姿を見守る長男さんはとてもそんな風にみえませんでした。


「彼の母親も敗血症で亡くなったんです。
その時も、もう少し早く来ていれば・・・もう手遅れです。って、言われて翌日亡くなったんです。じいさんも同じような状態ってわかってたのかな?もう3か月ずっと・・・病院に行こう! いや、寝ときゃ治る。しんどいから今日はいかない。 という、やり取りをしてきた気がします。
夏はみんなでお盆にあつまって、みんなから飯食わないと!って、いわれて、 いやー、欲しくないんよ。 って、笑いながら返事しててね。
でも、病院で長く闘病したくなかったのかな?
認知症のばあさんの介護もしてたから、ばあさんの近くにいたかったのか。
・・・家にいたいとおもって、ギリギリまで家で過ごして、これが望んだ最後なら、これでよかったのかなーって、思うんです。
しんどそうでしたが、本当に数日前まで元気にしてくれてたから・・・。」


私はそのあと師長に呼ばれて、
「患者の家族にこういうとき連絡する場合は、
『危篤状態です、すぐに来てください』だけで、いいの!
いろいろ話して、話が混乱するでしょ!」って、注意を受けました。


あれから、ずっともやもやして・・・
ずっと、ずっともやもやして・・・

『危篤状態です、すぐに来てください』

これを使いたくなかった。


これを、言われたらこの言葉にどれだけの不安を抱えて、
家族は病院に向かうのだろう。

そして、この言葉が一生心に残るから。

すこしでも、状況を伝えられる範囲で伝えて、
気持ちを整理しながらすこしでも落ち着いて病院に向かってきてほしい。

自分だったら、手が震えて運転できないかもしれない。


私は、医者ではありません。

看護師だから、患者さんと家族さんの側から【今】を見つめたい。
今日、この日が患者さん・家族さんの運命を変える日だから、
私たちにとって普通の日常として、仕事の一環で流したくない。


『危篤状態です、すぐに来てください』
『手の施しようがない』

救急に携わる私たちのありふれた日常。

でも、これに慣れたくない。

何度も、何度も繰り返し考えて、
出てきた結論は、同じでした。

私は、この気持ちをもって生きていきたいです・・・
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