教養としての近代思想➀:ルネサンス

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ルネサンス(Renaissance):元々、「再生」を意味する言葉、中世のキリスト教中心的なあり方から個人を解放することを目指し、古代ギリシア・ローマの古典の中に人間らしい生き方を見出しました。かくして、ルネサンス期には、古代ギリシア・ローマの文芸を再生し、古典を学び直そうという運動が広く展開し、古典を模範とすることで人間性を会報誌、新たな人間像を探求する、人間中心の文化が花開きました。なお、イタリア=ルネサンスの中心地の1つ、フィレンツェは東方貿易、毛織物生産、金融業などで繫栄しており、14世紀初頭にはヨーロッパ最大の都市であったように、経済的発展の土台の上に文化的成熟が生じることが分かります。

人文主義(ヒューマニズム):古典研究を通じた、教会中心から人間中心のあり方の追求。なお、ヒューマニズムという言葉には、①人文主義(ギリシア・ローマの古典研究)、②人本主義(人間中心主義⇔神本主義、物本主義)、③人道主義(ヒューマニテリアニズム、humanitarianism)の3要素があるので、要注意です。

万能人(普遍人):あらゆる分野で個性や能力を発揮する人間。古代ギリシア・ローマの理想の人間像が善・美の人、中世ヨーロッパの理想の人間像が信仰の人であるのに対し、ルネサンス時代の理想の人間像とされました。

ダンテ:ルネサンス文学の先駆者、『新生』『神曲』。罪に苦悩する人間の浄化を描いた『神曲』を、ラテン語ではなく、トスカナ地方の方言で著しました。人文主義的な機運の先駆けをなし、トスカナ語は近代イタリア語の土台となりました。

ペトラルカ:イタリアの人文主義者・詩人、人文主義の父。『叙情詩集(カンツォニエーレ)』。ダンテが理想の女性としてベアトリーチェを『神曲』に登場させたように、ペトラルカの『叙情詩集』はラウラという女性に捧げられたものです。

ボッカチオ(ボッカッチョ):『デカメロン(十日物語)』。人間の欲望を素直に表した『デカメロン』は最初のリアリズム文学とされ、ダンテの『神曲』に対して『人曲』と呼ばれます。

ピコ=デラ=ミランドラ:ルネサンス期のイタリアの人文主義者、『人間の尊厳について』(演説草稿)。人間は自由意志に基づいて自分の生き方を選択し、自らの存在のあり方、自分の本性を形成する存在であるとし、そこに人間の尊厳の根拠を見ました。すなわち、人間は神から与えられた自由意志によって、動物に堕落することも神に近づくこともできるとしました。

レオナルド=ダ=ヴィンチ:数学や解剖学の研究に裏付けられた遠近法の技術を駆使して、人間や世界の新たな表現法を提示し、「モナ=リザ」「最後の晩餐」などの作品を制作しました。「モナ=リザ」はイタリア・ルネサンス様式の1つの頂点であり、西洋古典絵画のシンボルと見なされています。

ミケランジェロ:人間の偉大さや力強さを追求し、フィレンツェ共和国の自由と独立の精神を象徴する「ダヴィデ像」やシスティナ礼拝堂の天井画・壁画に「最後の審判」などの作品を描きました。

ラファエロ:レオナルド=ダ=ヴィンチ、ミケランジェロと共にルネサンス期の3大巨匠とされます。多くの聖母子像や「アテネの学堂」などの作品を描きました。

アルベルティ:建築・音楽・哲学など多方面に才能を発揮したイタリアの万能人。『家族論』で合理的な経済活動に基づく利潤追求を説きました。「人は欲しさえすれば自分の力一つで何事でもできる」という言葉に、自ら意欲次第で何事をも成し遂げるルネサンスの人間観が現れています。

マキャヴェリ:イタリアの政治学者、『君主論』。現実に対応できない統治者を批判し、国家の統治のためには道徳に反した行い(権謀術数)も許されると主張しました。「いかに生きているかということ(現実)といかに生きるべきかということ(道徳)は、はなはだしくかけ離れている」と述べ、政治を道徳や宗教から分離し、あるべき理想ではなく、ありのままの現実を起点とする思考こそ為政者の責務であると説きました。マキャヴェリはローマ教皇軍を率いた軍師、チェーザレ=ボルジアを理想の君主としました。中国で法家思想を大成した韓非子に比され、マキャヴェリズムとは、どんな手段や非道徳的な行為であっても、結果として国家の利益を増進させるのであれば許されるという考え方を言います。

エラスムス:ルネサンス期オランダの最大の人文主義者、『愚神礼賛(痴愚神礼賛)』。カトリック教会を鋭く批判し、キリスト教国家の平和を訴えました。著作のいくつかは当時普及しつつあった印刷術によってベストセラーになり、「人文主義者の王」と呼ばれました。エラスムスが生んだ「卵」(『愚神礼讃』)をルターが「孵化(ふか)」(宗教改革)したと言われるように、ルターとも交流がありましたが、『自由意志論』の立場であるエラスムスと『奴隷意志論』の立場であるルターとの間に「自由意志論争」が起こり、両者は決裂します。

トマス=モア:イギリスの人文主義者・政治家、エラスムスの終生の友人、『ユートピア』。私有財産のない平等な理想社会、共産主義的な理想社会を描き、当時のイギリスの囲い込み運動(エンクロージャー)を批判しました。トマス=モアは国王ヘンリ8世とイギリス国教会の成立をめぐって対立し、反逆罪で処刑されましたが、その思想は初期社会主義へとつながりました。

ユートピア:「どこにもない」という意味、理想郷。なお、監視社会や行動の制限などがある反ユートピアの世界をディストピアと言います。
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