「小説の技法」Lesson39 プロット問題を解決する!

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コラム
 前回から、一晩、廊下で考えていた琴音です。
 問題は、プロットでは有効に動いているように見えた仕掛けが、作品になると歪んで、上手く働かないように感じられるという話でした。問題は解決策でした。
 前回、プロットミスだと指摘しました。他の人とも話してみましたが同じ結論でした。

 プロット段階では、登場人物は感情と思考を時の流れとして与えられていません。多くの人が箇条書き、もしくは短文のテキストの状態だと思います。これを作品のエピソードとして書くとどうなるか? 点であった登場人物の思考・感情が行動の原因として働くようになります。そして、次々に、刺激を受けては思考・感情を生み、行動を続けます。線です。
 プロットの仕掛けがうまく働かないということは、この人々の思考・感情と行動の間に乖離が生じている点にも留意して下さい。ここ、作者当人なら、表現力で補いがちです。

 やってみ過ぎるくらいに、やってみた方だと思います。私、この質問者の方の作品、読んだことがあります。二本、短編を読みました。一編、凄く良くて、もう一編、違うんです。その時も、かなり悩みました。同じ人だろうって。時期も近接していたので、不思議でした。だから、全く知らない人の質問より、少しだけヒントが多いです、私。
 今はどうか知りませんが、当時は構成の弱い方に見えました。ページ数配分の関係です。ノリで場を発展させがちになります。だから、あなたの場合は、もっと緻密にプロットを立てるべきです。やり過ぎます。例えば、ホラーなら、怖いよでいいのに、怖い、怖い、まだ怖い、と、あとがきまで追いかけられそうなくらい怖い。トラウマになるほど、怖いんです(苦笑)。これが逆に作用すると、違う意味で怖いですね。

 ならば、やっぱり、描写でしょう。と、ご本人も皆様もおっしゃるかもしれませんが、私は、構成でしょうと言います。描写の盛り過ぎは、構成=プロット段階のミスです。プロットの立て方が甘いです。描写が走るタイプなので、プロットで固く抑制しましょう。会話は何の目的でどのくらいの量、入れるのか。キーワードは何回リフレインを許すか。職人のように、その場で書いている感じがしました。シャリは94粒がうまいねぇ、と寿司屋の職人が何十年も培ってきた指先の勘を、いきなり、使いこなしている感じです。
 プロットでこう動くと決めたら、こう人を動かします。本当に、そう動くのかの検証が不自由分に思われます。昨日、もうおひとり、実作を見せて頂きましたが、プロット段階のミスです。例えば、怖い部屋にいるか、いないかの話ですが、通常、もういられないだろうという段階に至っても、部屋にいます。豪胆です。でも、次のシーンでは、物音がしただけで、鋭敏に逃げようとします。私は感情と行動の乖離だと思いました。
 プロット段階では、部屋に残る決心をする。夜、怖くなって、怪異から全力で逃げる。程度しか書かないでしょう。お二方とも、プロット段階に、感情と行動を、一段階、詳しく書いてみて下さい。飛躍があるはずです。通常人の行動との乖離が見られると思います。

 主役は人形ではないです。人間です。作者が動かさないこと。勝手に動くものです。一歩、客観的に離して作品を見て下さい。できれば、読者の視線で見ることです。                      以上

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