なぜ3歳児健診で視力検査をするの?子どもが上手く検査できない時の対処法は?(患者様向け)

記事
コラム

3歳児健診の視力検査とは

3歳児健診は一般的に3歳0か月から4歳になるまでに行われます。母子保健法で定められた乳幼児健康診査であり、自治体に実施義務がある健診です。

自治体によって3歳0か月から、もしくは3歳6ヶ月から実施可能としているところがあります。

3歳児健診では、それ以前の年齢の健診とは異なり、診査項目に視力検査が追加されます。これには以下の三段階が設けられています。

健診日の前に、ご家庭で使える視力検査や眼に関するアンケート用紙が届く
☑一次検査
・ご家庭で左右眼がそれぞれ0.5あるかを調べる
・検査結果とアンケートを記入し、健診会場で提出する
ご家庭で上手く検査できない、視力が0.5に満たない、他に異常があると疑われる場合
☑二次検査
・健診会場などで検査担当職員が再検査を行う
・出務依頼された視能訓練士や保健センターにいる保健師など、再検査を担当する職員は自治体によって異なる
さらに詳細な検査が必要と判断された場合
☑眼科での精密検査
・精密検査受診票を持参し眼科へ受診する

3歳児健診の視力検査の主な目的は、視覚の発達を妨げる異常の早期発見です。この異常には屈折異常(遠視や乱視など)や斜視、その他(眼疾患や脳疾患など)多数あります。

異常によって、よく見えない状態が続くと視覚の発達が妨げられます。そして、より低年齢で、長期にわたり発達を妨げられるほど、その後に良好な視覚の獲得が困難になると言われています。

8歳頃を過ぎると視覚の発達する期間(視覚の感受性期)が終了するため、それまでに良好な視覚が獲得できていないと、眼鏡をかけても視力が出にくい『弱視』になります。

視覚の感受性期.jpg
日本弱視斜視学会HPより

つまり、弱視にならないためには早期発見と早期治療が最も大切です。残念ながら8歳以降では弱視の治療効果がほとんど期待できません。弱視治療には年齢のタイムリミットがあるのです。

3歳から視力検査を行うのは、それ以前の年齢では子どもが検査に協力できないことが多いからです。また、脳や視力も発達途中で不安定な部分があり、視力を評価することが困難です。

視力検査が上手くできない時の対処法

視力検査が上手くできない行動の中には以下のようなものがあります。
例えば
① 検査説明を理解することができない
② 片眼を隠すと嫌がる
③ ランドルト環を小さくすると、やる気をなくす
などです。それぞれの対処法を解説していきます。


① 検査説明を理解することができない
視力検査の説明として、「輪っかの切れている方向を教えてね」と言うことがほとんどだと思います。ですが、この説明を理解できない子は意外と多いものです。

言い換えの例として「このドーナツを食べたところはどこかな?」と言うと伝わることがあります。

他の言葉に言い換えて伝わらなくても、まずは両眼でランドルト環を見てもらいながら練習してみましょう。いきなり遠くから見せ始めず、近い位置(1m程度でランドルト環に触れない距離)から始めるのがコツです。

検査する側がお手本として実際に何回か指差しを行い、切れ目の上下左右と指差しのパターンを覚えてもらいます。繰り返し行うことで、少しずつ理解できるようになってきます。

それでも難しい場合は、手持ち用のランドルト環(以下、手持ちハンドル)が日本視能訓練士協会のHPでダウンロードできます。

手持ちハンドルを持ってもらい、それを見せたランドルト環と同じ形になるように動かせれば、指差しができない子でも視力を測ることができます。
手持ちハンドル.png

日本弱視斜視学会HPより

飽き始めてきたら「あと3回だけやってみようね」と具体的に終わりの目安を伝えると、それまで頑張ってくれることがあります。

その日は最後までできなくても、気分によっては驚くほどすんなりできることもあるので、日を改めてみることも効果的です。

② 片眼を隠すと嫌がる
検査が終わるまで眼帯を外さないように言っても、子どもが眼帯を嫌がってしまい検査ができないことがあります。

この場合は『嫌悪反射』の可能性があります。この反射は乳幼児や眼がよく見えないことを言葉にできない方に現れるもので、視力に左右差があり、視力が良いほうの眼を隠されることを特に嫌がるという行動です。

もしこれに該当するようであれば、片眼が弱視になっている、もしくは将来的になる可能性が高いので、再検査をお勧めします。

嫌悪反射がありそうでも、可能な限り視力検査を試みて、その時の様子をアンケートに記入するか、再検査の際に検査員に伝えましょう。

左右どちらの眼を隠しても同じぐらい嫌がるようであれば、眼帯への抵抗感を持っていることが原因だと考えられます。

抵抗感を軽減する方法として、お気に入りのシールを眼帯に貼って、楽しんで眼帯をつけてもらうように工夫することが有効です。

もし協力してくれる人がいる場合は、眼帯の代わりに手で片眼を覆い隠してもらいます。ただし、子どもが手の隙間から覗き見ることがあるので、眼前にハンカチを当て、その上から手で覆うとより安心です。

③ ランドルト環を小さくすると、やる気をなくす
検査説明を理解し、片眼を隠すことができても、ランドルト環を小さくすると途端に答えてくれなくなることがあります。

この場合は、『なんとなく切れ目は見えているが間違えることに不安を感じている』か、『本当に見えていない』かが考えられます。

前者の場合は、焦らず1m程度からランドルト環を見せ始め、正解したら徐々に検査距離を伸ばし、少しずつ自信を持ってもらうと良いでしょう。もし答えを間違えても検査する側が驚いたり、叱ったりしないことも大切です。

間違えた時は気にせずに切れ目の方向を変え、正解した時は「よく見えたね!」と褒め、「あと〇回正解したら終わりにしよう」と目標を作り、やる気を損なわないようにしましょう。

以上の対処法を試しても上手くできない場合、あまり無理強いし過ぎて視力検査に嫌な印象がつくのは良くありませんので、健診の担当職員に再検査をお願いしましょう。

人見知りが強い子だと最初は大変かもしれませんが、ご家族の応援があれば再検査で上手くできる子もいます。

そこでも上手く検査できなければ、眼科へ受診します。

眼科では機械の中を覗くだけで、ある程度は眼の状態を調べられますし、診察では急いで治療が必要な疾患がないかどうかを医師が確認しますので、それがないようであれば、一旦は安心と言えます。

受診後はそこで問題なしと言われるか、もしくは経過観察として眼科への通院を指示されるかもしれません。

もし通院する場合は負担に思われるでしょうが、子どもの眼にとっては非常に大切な時期なので、できる限り協力して頂ければと思います。

他にも疑問やお悩みがありましたら、ぜひ御相談ください。
《しおり 視能訓練士/CO》

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す