【詩】「団塊世代の老いの一つ」

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初めは体がガラスでできていた
世界を言葉もなく
底のない瞳で受け入れて
反射した色々な顔を
自分として塗り重ねていった

一番はやっぱり親父だ
間抜け共を安楽椅子の脚にする
そのしたり顔を真似た
親父を蔑む口も映ったけど
世間の質量は限りなく0に近い

とはいえ風見鶏は動く
体が光沢を失った頃には
顔に微笑みの仮面が被さっていた 
親父とズレて息苦しい
同調すればどれだけ楽か
だけど歴史っていうのは
矛盾の積み重ねだろう?
理想と現実の摩擦が情熱を生むのだ  
親父のようになりたい
親父のようになれない
それでいい
快楽主義の行き着く先は
死んだままでいることだ
生きるなら
苦しんでなんぼだろう
「寝る間も惜しんで働け」
「環境を破壊しても働け」 
そういう本音を濾過して
「発展が全てだ」
と嘯く微笑みの仮面を
あらゆるガラスに押し付ける
自分自身に対してもそうだ
環境破壊、人格否定、犯罪、殺人
そして孤独
不自然を積み重ね
着飾ってゆく……

老人の体は錆びている
誰の顔も映らず
自分自身のためだけの偶像に閉じ込められている
風見鶏は春風の方を向けなくなって
内壁で皆の口を塞いでいる

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読んでいただきありがとうございました。
新陳代謝が正常に行われますように。
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