骨とリンパ管

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こんにちは。文章校閲や論文解説などのサービスを出品しているヒロと申します。

突然ですが、リンパマッサージをしたことがありますか?
むくみ、冷え、コリなどが酷い方で、これらの症状を解消するためにリンパマッサージを定期的にしている方もいるのではないでしょうか?
リンパを流すことで、老廃物の除去、血行促進、疲労回復などの効果が得られると言われています。

さて、このよく耳にするリンパですが体のどこにあるのでしょうか?
血管のように全身に張り巡らされていると言われていますが、骨にもリンパ管はあるのでしょうか?

今回、リンパ管と骨にまつわる論文を読む機会があったので、紹介させて頂きます。

さて、骨にリンパ管があるのかを観察しようと思うと、どんな方法を思い浮かべるでしょうか?
映画「インビジブル」のように、人間を透明にできれば見えるかもしれません。
誰もが一度は考えたことがある透明人間ですが、実は組織を透明にする方法はすでに存在します。
組織透明化は、生体組織中の光散乱を抑制することによって組織を透明化することが可能になります。

今回紹介する論文は2022年に掲載され、骨を透明化してリンパ管を染色することで、骨にリンパ管が存在することを明らかにし、さらにその働きを報告しています。

論文概要

リンパ管は全身に張り巡らされ、老廃物の除去や免疫応答を制御することが知られています。全身にあるリンパ管ですが、骨にはリンパ管が存在するかは論争がありました。論文では骨全体を透明化した後にリンパ管を染色することで、骨リンパ管を3Dで可視化し、さらに骨におけるリンパ管の機能を調査しています。
骨に放射線照射によって骨障害を起こし、骨リンパ管の変化を観察したところ、放射線照射により骨全体でリンパ管の密度が上昇することが明らかとなりました。また、リンパ管新生阻害剤を投与した場合では、造血幹細胞が減少し、骨再生が阻害されたことから、骨のリンパ管が骨再生に密接に関わることを示しています。
さらに調査すると放射線照射されたリンパ管内皮細胞はCXCL12を分泌しており、Myh11陽性細胞がCXCL12シグナルに応答して増殖し、さらに骨細胞に分化することで骨再生を促進していることが明らかとなっています。最後にはリンパ管内皮細胞が老化によってストレスに対する応答力が低下することも示しています。以上のことから、リンパ管が骨再生に大きく寄与するものと考えられます。

さらっと紹介させて頂きましたが、論文のHPでは染色した骨の3D画像なども見ることができます。オープンアクセスですので、気になった方はチェックしてみることをお勧めします。
余談ですが、妻が足を骨折した際に温泉に浸かったら、足の腫れと痛みがマシになったそうです。もしかしたらリンパ管の流れがよくなり、骨再生が促されたのかもしれません。
Lymphatic vessels in bone support regeneration after injury

Lincoln Biswas, Junyu Chen, Jessica De Angelis, Amit Singh, Charlotte Owen-Woods,
Zhangfan Ding, Joan Mane Pujol, Naveen Kumar, Fanxin Zeng, Saravana K. Ramasamy, Anjali P. Kusumbe

Cell. 2023, 186, 382-397

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