633.ただの腹痛だと思ったのに「虫垂炎」だった…手術しないと治らない? 

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ただの腹痛だと思ったのに「虫垂炎」だった…手術しないと治らない? 
どんな病気か外科専門医に聞く





「虫垂炎」という病気を聞いたことがある人は多いと思います。
腹痛が原因で病院を受診したところ、虫垂炎と診断されるケースもあるようです。

 そもそも、虫垂炎とはどのような病気なのでしょうか。
再発する可能性はあるのでしょうか。
主な症状や治療法などについて、東京外科クリニック(東京都千代田区)院長で、外科専門医の大橋直樹さんに聞きました。



胃の不快感、腹痛が生じる
Q.そもそも、虫垂炎とはどのような病気なのでしょうか。
盲腸と呼ばれることもありますが、同じ病気なのでしょうか。

大橋さん「『虫垂炎=盲腸』と考えていただいて問題ありません。
ただ、厳密には虫垂炎が正しく、盲腸はいわゆる俗称です。
盲腸は、大腸の先頭部分、つまり、肛門から最も遠い大腸を指す解剖学的呼称であり、病気の名前ではありません。
この盲腸だけに炎症が発生することは滅多にありません。


虫垂はこの盲腸の付属器官で、太さ約7ミリ、長さ約8センチの細長い管腔(くう)状の臓器です。
ここに何らかの理由で炎症が発生すると、虫垂炎を発症します。
虫垂はほとんどの場合、右の下腹部に存在するため、この部分が痛くなり、微熱を伴うのが主症状です。


私も患者さんに分かりやすく説明するため、診療時に『盲腸』と言うことがありますが、医師でも病気の本質を誤認していた時代の呼称なので、抵抗があります。虫垂炎という正式な名称が普及することを願っています」



Q.急に虫垂炎を発症するケースがよくあると聞きますが、本当なのでしょうか。

大橋さん「本当です。虫垂炎を急に発症するケースは、珍しいものではありません。
激しい腹痛が生じるため、痛みを感じた本人や周囲の人が救急車を呼ぶケースは、比較的多いです。

一方、上腹部、つまり胃の辺りの不快感から始まり、次第にそれが右下腹部に移り、痛みとしてはっきりしてくるというのも典型的で、はっきりと症状が現れるのに数日かかることもあります。
そのため、診断がなかなかつかなかった症例もあります。

治療が遅れると炎症が広がり、重症化することがあります。軽症の場合は通院治療で済むこともありますが、1週間近く、場合によってはそれ以上の入院期間を要することもあります。
また炎症が激しいと、虫垂が壊死し破裂することで腹部全体が炎症を起こす『腹膜炎』を発症します。現代の日本においては随分少なくなりましたが、虫垂炎の死亡例もあります」



Q.虫垂炎と一般的な腹痛は何が違うのでしょうか。

大橋さん「虫垂炎の場合、腹膜炎を併発していない限り、その痛みは右下腹部に限られます。
先述のように、最初は上腹部の不快感から始まることもありますが、症状が進行すると、右下腹部が何もしなくても痛くなるほか、押すと痛い『圧痛』、しばらく押したまま離すと痛い『反跳圧痛』という症状が顕著になります。

これらの症状が右下腹部にそろうと、虫垂炎を第一に疑うことになります。
症状が似ている病気もあるため、診断確定には画像検査が有用です」



Q.では、虫垂炎によく似た病気はありますか。

大橋さん「よく似た症状であるため、区別が必要となる病気を『鑑別疾患』といいます。
虫垂炎の鑑別疾患は、結腸憩室炎や回腸末端炎、腸間膜リンパ節炎、メッケル憩室炎など多岐にわたります。
女性であれば子宮外妊娠などの内性器疾患も鑑別に入れます。
胆のう炎や十二指腸潰瘍穿孔(せんこう)など上腹部の疾患も右下腹部にまで痛みが及んでいれば、身体所見だけでは鑑別が難しくなります。

現代では画像診断のツールが発達しています。
特にコンピューター断層撮影(CT)を施行することが客観性もあり、確実です。
詳細な問診でも、ある程度の目星をつけることはできます。


虫垂炎では嘔吐(おうと)や食欲不振なども起こりますが、『腹痛→嘔吐、吐き気(症状が出ない場合もあり)→発熱』の順で症状が現れるので、この順が逆であれば虫垂炎の可能性は考えにくいということになります。
なお、一般的には、下痢は主たる症状ではなく、あっても軽度です。

『中年男性』『軽度肥満』のほか、高熱な割に重篤感がない右下腹部の鑑別の第一は、結腸憩室炎です。高熱を伴っている虫垂炎は、消耗し切った印象が強いです。

いずれにしても、これらの鑑別疾患も初期治療は抗生物質投与のほか、安静や食事制限なので、同じような対応で多くは問題ないのですが、根治的な治療を検討する場合、この時点での確定診断が画像検査で行われていることが望ましいです。
炎症が鎮まってから画像を撮っても、症状があった当時の状態は再現できないからです。

また、私の患者さんの場合、虫垂炎とがんを併発していた病例がありました。
虫垂を切除することで初めて発見できたわけで、やってよかったということになりますが、がんに対する術式としては不十分なため、再手術による追加切除を行いました」



手術しないとダメ?

Q.虫垂炎になった場合、手術をしなければ治らないとよく聞きますが、本当なのでしょうか。また、再発する可能性はあるのでしょうか。

大橋さん「根治するためには、虫垂を切除する必要があります。
緊急手術が第一選択の時代が長く続きましたが、最近は、多くの症例が保存的治療、具体的には抗菌薬の内服もしくは点滴での治療が行われています。

この保存的治療が無効な場合、あるいは、腹膜炎などを併発していて、状況が深刻な場合はすぐに手術が行われることがあります。

当院の場合、一度、保存的治療を行っても再燃する恐れがあるため、いったん炎症が鎮まった後、改めて手術を行う提案をします。


先述の保存的治療も、病状に応じて対応が異なります。軽症に対しては内服のみ、中等症には点滴を併用します。
状況によっては、入院の上、安静にさせるほか、消化管を休ませるために食事を止めることもあります」



Q.虫垂炎の発症をできるだけ防ぐ方法はありますか。

大橋さん「暴飲暴食や過剰なストレス、免疫機能を低下させるような状況は、虫垂炎の発症リスクを高めると思われます。
そもそも、大腸とつながっている虫垂の内側は粘膜で連続しており、その中身は無菌ではありません。

大腸は大便の通り道であり、大腸菌をはじめとする細菌が無数に存在します。
健康なときにはこれら腸内細菌が互いにバランスを取り合っている状態ですが、何らかの理由で破綻すると病原菌が優位となり、虫垂内腔から侵し始めるのです。虫垂炎は通年発症しても不思議ではありませんが、どちらかというと夏に発症するケースが多いといわれています。

虫垂炎の原因は分かっていません。
そもそもなぜ虫垂が存在するのかも分かっていませんが、原始時代の食生活に適応し、何らかの消化吸収の機能を担っていた可能性が示唆されています。他の哺乳動物より虫垂炎になる頻度は高いです。

一度も虫垂炎になったことがない虫垂を切除してしまうことは倫理的に問題があると思いますが、一度でも虫垂炎を経験したことがあるのであれば、虫垂切除術を受けるというのが最も確実な予防法と言えると思います。

虫垂炎には『単純性』と『複雑性』という概念があります。
単純性の場合、手術は短時間で済むものがほとんどで、その後の経過も大概順調です。
そのため、私が勤務するクリニックでは、日帰り手術で対応しています。

一方、複雑性はこれでは済まない恐れがあるもので、例えば、『虫垂が破裂してしまった』『虫垂炎が悪化し、腹膜炎になった』『膿瘍を伴った虫垂炎』というものです。
これらのケースの場合、薬で炎症がいったん治まった状態であっても、手術に臨んだ場合の合併症の発生率が高いため、根治手術の適応については慎重に検討します。

特に虫垂切除のみならず、大腸と小腸の一部もまとめて切除する術式である『回盲部切除』に移行する可能性がある場合は、患者さんの消耗が大きいため、日帰り手術の適応外となります」

 腹部の痛みが続く場合や腹部に違和感を覚えた場合は、虫垂炎の可能性も考慮し、医療機関を受診するのが望ましいかもしれません。




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