ちいさな小説 「そういうけど。」

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「恋愛こそ青春だ!」 そう豪語するのは、年に一度来るか来ないかのペースでうちに来る叔父さん。普段は温厚で優しい人なのだが、お酒が入るとちょっと偉そうになる。うちに来るといつもこうなっているから、何を言われようとあまり気にしていない、でも、この言葉はいつも引っかかる。確かに、周りの友達は高校生になった途端「JKなんだから!」と言って彼氏作りに必死になっている、放課後の駅前も同い年くらいのカップルだらけだ。

「恋愛こそ青春」 そうなのか?

同世代の友達は、みんなそう思っているのかもしれない。だけど、私は恋愛には全く興味がない。それよりも何よりも、自分の夢を追いかけることが大好きだ。目の前にあるその一瞬の景色をレンズで捉える、これがないと生きていけない。

もしかしたら、これも「青春」なのか?

そうなのかもしれない。そうじゃないかもしれない。叔父さんの言った青春とは大きく違う。けれど、私には私の青春がある。

「私にとっては写真が青春だ!」

笑われるだろうか。引かれるだろうか。けれどもう、どうだっていい。感じたことのない自信が体の底から湧いてきた。


「お前も彼氏の一人や二人作んないと青春たのしめないぞ~」
ふわふわした口調で、つばを飛ばしながら言ってくる叔父さんの方を振り返って私は言った。

「そういうけど、私の青春は恋愛じゃなくて、写真だから。心配しなくても楽しんでるよ」


END








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