「未知の生物が登場する話」日本大学芸術学部文芸学科A方式(第1期)2022年

記事
学び

(1)問題


未知の生物が登場する話を作文してください。(800字)

(2)考え方


問題では「話」とあるから、エッセイ(随筆)ではダメなんだろう。

やはり、小説や童話を書きなさいという指示と取ること。

今まで、日藝の過去問では、小論文を中心に書いてきた。

実は作文、つまり小説が一番難しい。

小論文は知識や論理(リクツ)で書けるが、小説は発想や創造力が必要で何よりオリジナリティがなければいけない。

何より、面白くなければ採ってくれない。

今回の解答例は、オリジナリティを追求するあまり、MADな内容になってしまった。

大学入試というフォーマルな場で書く内容ではないと正直、自分でも反省するが、頭の柔らかい日藝の教員なら、この内容でも合格させてもらえるだろう。きっと。

鵺2.png

(3)解答例

1⃣今までの試みはすべて失敗した。「飛べないハチ」は簡単に見破られた。ミツバチを採ってきて羽を抜いただけのお粗末な代物で、こんなものは素人でも騙せなかった。今度はアリにスズメバチの羽を付けて、「飛ぶアリ」をつくってみたが、これも同様だった。

2⃣毎夜、天皇を怯えさせていた化け物を退治する命を受けた弓の名人源頼政が呼び出された。御所を覆う黒雲の中にひょう、と矢を放つ。怪物が落ちたところへ駆けつけてとどめを刺し、その姿を見ると……。頭は猿、体は狸(たぬき)、尾は蛇、手足は虎の姿の怪物が息絶えていた。有名な『平家物語』の鵺(ぬえ)の一節である。学生時代、この話を読んで、ぜひ自分もこんな生物を発見してみたい。こういう熱情に駆られて大学では探検部に入った。世界中のジャングルを掻き分け秘境の奥地を探り、未知の生物を探し求めた。しかし、見つからなかった。結局、未確認生物の情報はいずれも人々の噂や伝説の域を出ないものであった。

3⃣ならばいっそのこと、自分で作ってしまえ。そう思ったのが、大学を卒業して十年目の夏だった。初めは児戯の類の作品ばかりで誰からも相手にされなかった。やがて、人魚や河童のミイラが日本各地に伝えられていると聞き駆け付けた。これを参考に似たものをいくつか作ってみた。それらしく見せることはできる。私の作品を見て騙される人もいたが、フェイクには違いなかった。私の満足を十分に保障するものではなかった。

4⃣次に考えたのは、生物どうしの掛け合わせだ。ライオンとトラの雑種ライガーやヒョウとライオンから生まれたレオポン。人類はこれまで多くの種を交配させて今まで見たことのない生物を作り出すことに成功してきた。これならば私にもできる。そう考えた私はニホンザルを山から捕まえてきた。メスザルは私の気配を察しておびえた表情を見せる。牙を剥いて抵抗しようとするサルを片手で押さえつけながら、私は自分のズボンを下した。
(800字)

(4)解説


時系列からすると、第1⃣段落と第2⃣段落は本来は逆になる。

しかし、今回はあえて倒置法を使って逆にしてみた。

作文では、このような技巧を凝らすこと。

第2⃣段落の「怪物が落ちたところへ駆けつけてとどめを刺し、その姿を見ると……。」のような3点リーダ「……」も余韻を持たせるために用いてもよい。

第4⃣段落の最終文「牙を剥いて抵抗しようとするサルを片手で押さえつけながら、私は自分のズボンを下した。」は、読者に想像を委ねるために最後まで書かない。

もっとも、このオチは下品であり、動物愛護の精神から著しく反する。

小論文ではありえない、ダメダメな内容だが、小説の世界では日常茶飯で殺人や性犯罪が起こっている。

倫理性にもとることも、作文ではアリと考える。

要は思い切った発想で冒険をしてみることだ。

ただ、今回の解答例は、いろんな意味で受験生には書けないだろう。

私もこの文章をUPするかどうかは迷った。

でも、日藝を本気で合格したいと思うのなら、いろいろ試してみることが勉強になる。

👇日藝合格者多数。今年も多くの日藝受験生が受講されています。日藝小論文・作文が苦手、書けないと思う人はぜひ受講してください。他の塾・予備校とは違います。



サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す