第一回 美術探訪~オリエンント急行にて~

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 オリエント急行をご存じでしょうか?



 そう聞くと、「あの殺人事件の?」とアガサ・クリスティーの小説を思い出す人が、私の友人の大半でした。そう、オリエント急行は、ヨーロッパの有名な豪華列車です。1883年の運行開始から、今でも修復されて走行しているという歴史ある列車でもあります。


オリエント外装.jpg


 なんと、日本に当時走っていた車両が実在するそうです。それは、箱根ラリック美術館に所蔵されています。現在はそのオリエント急行の車両で、専属クルーの解説付きのティータイムが楽しめるという事です。
 (箱根ラリック美術館HPより)



 私は、その事前情報を知らぬまま、ルネ・ラリックを見たいという思いでその美術館を訪れたところ、その車両に出会いました。それというのも、オリエント急行の車内の装飾は、ラリックが手掛けたというのですから、その美術館が所蔵しているという訳でした。


 車両のロイヤルブルーに、まず目を奪われます。実際に走っていたとは思えないほど、綺麗で美しい車体です。この外観を見ただけで、とてもワクワクした事を覚えています。車内に入ると、そこは美しい装飾と、落ち着いたテキスタイルを用いた上品な椅子で、当時の列車旅行の様子を物語っていました。



オリエント車内.jpg




 ランプなどの調度品に至るまで、すべて当時のままというのですから、実際に乗車できるというのはとても貴重な体験です。さながら走る美術館といっても過言でない、素晴らしい室内です。ちょうど正面に写っている3枚のガラスのレリーフが、ラリックの手掛けたものだそうです。



オリエントラリックガラス.jpg



 当時は(今でも)この車両に乗って、ヨーロッパを旅するなんて夢のような情景です。このレリーフは、車両を仕切る壁面や、座席の一面にも配されて、優美に私たちの旅を見守ってくれます。



 また、一部の座席にの壁面には、ラリックの娘がデザインしたパネル画もあり、そちらも見ごたえがありました。花の、可憐な装飾は繊細でありながら大胆さもある、人柄が伝わってくるような作品です。
オリエント車内_パネル.jpg




 この豪華な車内の中で、ティータイムツアーを楽しみました。ティーカップも、当時のものが使われ、「ORIENT EXPRESS」の文字。箱根にいながら、ヨーロッパの街中を走っている気分になって、とても贅沢なひと時でした。クルーの方の解説も丁寧で、下車後には、オリエント急行の車両と記念撮影までサービスしてくださいました。



オリエントティーカップ.jpg




 美術には興味がないな、という方でもヨーロッパの旅の空気に触れられて、おまけにラリックも楽しめるのですから、ちょっと足を延ばしてお出かけになってはいかがでしょうか。
(はやく、そんな旅が出来る社会になればと、お祈りしております)




 今日のお話はこの辺で。また、私とおはなししましょう。


Copyright 2022 Chihiro Egoshi






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