ジョブチューン騒動について

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少し前に炎上案件として巷を賑わせた『ジョブチューン騒動』を、ご存知ですか?

これは、TBSが元日に放送した「ジョブチューン元日SP」の内容に関するもので、番組はセブンイレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの大手コンビニ3社の商品開発担当者が出演し、イチ押し商品をプレゼンするという企画でした。

問題となったのは、審査員として出演していたイタリアンの有名シェフの方が、ファミリーマートの「直巻和風ツナマヨネーズおむすび」に対し、「(見た目で)食べてみたいという気にならない」と発言したこと。これが発端となり、放送後にネット上で件の発言に対する批判がエスカレートし、当該シェフのSNSへ誹謗中傷コメントが届いたり、なかには全く関係のない同姓のシェフまで巻き込まれるという事態に発展。私も、これを取り上げたYahoo!ニュースのコメント欄に多くの批判が寄せられているのを拝見しました。

本件で批判や誹謗中傷の根拠となったのは、シェフの発言内容が余りにも無礼であり、開発担当者を傷付けるためだけのパワハラやモラハラに似た言動であったと認識されたからではないでしょうか。加えて、番組制作側の演出が不謹慎だったとする指摘もあり、そもそも、100円程度で販売している商品について、その企業努力を度外視し、客単価の高いレストランのシェフが上目線で批評すること自体が間違っているといった意見など、様々な見解が散見していましたね。

実は私も番組を視聴していたのですが、私自身は特に激しい違和感は覚えませんでした。確かに、シェフの発言は厳しいなと感じましたが、まぁ、それはプロから見た率直な意見ですし、番組の性質上、全ての商品について企業側に気を遣って称賛ばかりしていたら成立しませんからね。あくまでも、国内外で定評のある一流のシェフに審査してもらい、且つ、アドバイスを受けることで更なる商品開発へ繋げるという主旨であるはずだから、シェフが誹謗中傷の的になるのは本末転倒ですし、ましてや、SNSを閉鎖せざるを得ないほどの騒ぎになったのは明らかに道義的な問題があります。

TBSは火消しに奔走していましたが、一度燃え上がったものはそうそう収まらず、ネット時代の拡散力を背景にして個人攻撃がまかり通り、最終的には人格否定へと繋がったのは残念でなりません。果たして、私刑のような言説は正しい行為なのでしょうか?本件は、我々が日常的に利用するネットの危うさを露呈し、改めてネットリテラシーの改善が急務であることを浮き彫りにしたと言えるでしょう。

私も番組制作に携わったことがあるので苦労を理解していますし、反面、制作側の落ち度については自戒の意味も込めて襟を正す気概を持っています。危惧されるのは、このような騒動が番組制作側を萎縮させ、ひいては良質な番組作りに影響するばかりか、表現の自由という根源的な権利すらも侵害することになりかねないという点。意見を表明するのは大事ですが、相手の名誉を傷付けて良いわけではありません。最近は気軽に匿名でコメントできるせいか、自分の意見に責任を持たない姿勢が蔓延っている気がします。こういった行為が行き着く先は、多様性を認めない硬直化した社会の醸成です。いつか自分に跳ね返ってくるリスクを考えたほうがいいでしょう。

少し説教くさくなりましたが、コロナ禍の影響とも受け取れる凶悪事件や炎上騒動が増える日本の現状を憂いています。

他者への寛容さやリスペクトを忘れない社会であって欲しいですね。
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