京大の英語を解いてみた。

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昨年、勤めている学習塾(うちの塾に通う高校生たちは毎年ほとんど全員が地元の大学に行きます。東京大阪の難関校に行くのは何年かに一人。)に京都大学を目指す浪人生の子が講師として入ってきました。それ自体がレアな出来事ではあったのですが、大事なのはそこじゃなくて。

地頭が良いっていうのは、彼みたいな子のことなんだろーなーって思いました。1コ言っただけで5コぐらい分かるし、歴代の一番よくできる塾生の誰よりも頭いい、勉強ができる以上にめっちゃ賢いなこの子、みたいな。でもまだ高校卒業したて、何者にもなっていないただの18才、とはいえ18才当時のオレの少なくとも8倍は将来有望、この子には可能性しかない、みたいな子です。でも大事なのはここでもなくて。

そんな彼がいつも手に持っていたのが、「京大の英語27カ年」という過去問題集。去年の今頃から夏にかけて、毎日のようにこれを解いてはオレのところに質問に来ていました。あんまりオレの時間を使いまくるから、塾長が「そんなんだったら授業料払って?」と言い出しました。オレはそういうこと決める立場じゃないし、楽しかったからお金のことは気にならなかったけど。でも今考えれば、多少もらっても良かったのかな?結局料金は発生しなかったし、まあそんなことどうでも良いんですが。(もうええ加減にせぇや。前置き長いねん。サブウェイのオーダーより長いやん)

で、やっと本題ですが、今日大事なのは、「京大の英語27カ年」は楽しかったってことです。リアクションとしては「なん、それ(ZAZY)。お前変態?」が最適解ですが、なんせオレはTOEICのオリジナル問題を作ってブログで公開したりココナラで販売したりするような英語変態なので、そこはスルーしてください。

そんなことより。

京大の入試問題は日本人の作家や記者や科学者が書いたらしきエッセイや小説や記事や論文のような文章の一部を英訳したり、英語のそのような文章の一部を和訳したり、という問題なのですが、これが、受験の合否に関係なくやってみると楽しい。そんな言い方したら全京大受験生にフルボッコにされそうですが、でも楽しいものは楽しいんだからしょうがない。何がそんなに楽しいのか?問題文に採用されている文章は自然でこなれた日本語で書かれていて、解答者に文脈や状況設定を想像させます。解答者はそれをきちんと見抜いた上でいかに自然かつ正しい英語の文章として再現できるかということに力を注ぎます。その作業が楽しい。言ってみれば翻訳の練習みたいなもんです。10年ぐらい前に翻訳者養成学校に通っていた時期があるのですが、その時に出された課題がフラッシュバックします。あの頃は、A4の紙1枚にビッシリの文字、イラスト、図表などで表された情報を1語の誤訳もなくネイティブに一発で正しく伝わるように英訳、またはネイティブの伝えたい意図を和訳するという課題でした。1ヶ所でも誤訳があると必要以上に厳しく指摘されて凹むし、ただただキツいだけだったけど、今は楽しい。アレ?もしかしてオレ成長したかも?まで思ったりします。

という訳で、半年ぶりぐらいに京大の英語を解いてみました。あ、でも先に言っておきますが、こうやって無料公開する英訳とか和訳はただの趣味なので、ガチで京大を目指している人やそういう人が通う予備校の先生のように京大合格に人生かけている人たちからの「お前この部分ちゃうやんけ、ええ加減なこと言うなや」といった類のアレは受け付けません、あしからず。それから、自分で英訳した後に問題集の解答解説も読み、そこには書いていないこととかそれとは別の角度からの考え方とかもオレの英訳には表れていますので、そういうことについては英訳の後に付け足します。そのあたりは、よかったら参考にしていただければ幸いです。









今日は、問題集に収録されている中で一番古い1994年度の問題です。原文は、元日本気象協会所属、現在はフリーの気象予報士で、気象に関する本を何冊も出版している高橋健司さんという方の文章です。その一部を英訳する問題です。原文は著作権に触れるといけませんのでここには書きませんが、興味のある方は「雨の匂い」または「京大の英語27カ年」を読んでみてください。

オレの作った英訳がこちら。

Whether raining too much or too little will cause a disaster. In the era when the 
term weather forecast did not even exist, people had no choice but to predict 
future weathers by themselves. They must have watched skies and read winds seriously. This is perhaps the reason we have plenty of expressions related to weather. 

英訳するときに受験生が難しいと感じそうなポイントは、こんな感じだと思います。
・2文目:「天気予報という言葉さえなかった」は、evenの位置に気をつけてください。even the term でなく、 did not even existとすると自然な英語になります。
・最後の文:「天気に関わる言葉が豊か」は色々な書き方ができるので、自分が一番書きやすい文法で書くと良いでしょう。他の書き方だと、こんなのもアリ。
the expressions regarding weather are rich
we are rich in the expressions of weather






1問だけだと意外に物足りないのでもう一つ。同じ1994年度の問題を訳しました。この問題には出典がないので、オレの英訳だけです。

The lives of great persons are impressive and intriguing. They convey a 
fabulous way of living and thinking that parents and teachers can neither teach nor show us as a model. If we have some feelings of being amazed and 
lessons that we have gotten from biographies of great persons read in the 
childhood, the world we see after being an adult should be different to some 
extent. 

難しいところや工夫ポイントはこんな感じ。
・1文目:この世に「偉人」はたくさんいるのでそのままgreat peopleで良いですが、一度にパッと思いつく偉人はほんの数人なので、あえてその一人ひとりの偉人を意識してgreat personsとしても読み手の興味を引けると思います。無難な表現で良いという人は、great peopleでどうぞ。
・1文目:「面白い」はinterestingで十分ですが、それより強い意味のintriguingもアリ。
・2文目:「伝える」にはtellでなくconveyを使うと「英語知ってんね〜」という印象を採点者に与えられるかもしれません。
・2文目:「素晴らしい」はfabulous以外にも、wonderful, outstanding, terrific, 
amazingなどもアリ。
・2文目:関係代名詞節の動詞teachとshowはどちらも4文型の動詞なので、目的語(人)となるusやyouをちゃんと書きましょう。
・3文目:「幾分なりとも残存していれば」は大げさな言い回しですが、文全体を見渡すとこの部分(→英訳では従属節)よりもその後ろの部分(→英訳では主節)のほうを書き手は伝えたいはずなので、あまりこだわらず軽めに
haveとsomeで済ませちゃいましょう。逆にあえてここに注目するなら、「幾分」→「少し」、「なりとも」→「でさえ」、「残存する」→「まだ残っている、そのままある」と言葉を置き換えたり噛み砕いてから英訳しましょう。さらに、残存している物=感動や教訓を話の中心に据えて、
If the feelings of being amazed and lessons that we have gotten from 
biographies of great persons read in the childhood still remain even a little, 
ぐらいに仕上げます。
・3文目:原文の名詞「感動」はimpressionで十分ですが、being amazed/
impressedのように動名詞の受動態で名詞句を作って表現することによって英語表現にまさに動きが出て、英文の読み手には書き手が感動した事実が伝わりやすいです。
・3文目:read in the childhoodのread(過去分詞)は原文には書かれていませんが、原文の情報を正しく伝えるために英訳には必要です。readまたはwe 
read(過去形)がないと、in the childhoodがfeelings and lessonsではなくbiographiesかgreat personsを修飾しているように見えます。
・3文目:そもそもこの文全体が仮定法過去で書かなきゃいけないんじゃないの?と思う人はif節の動詞は過去形、主節の動詞はwould + 原形で書けばOKです。でも仮定法で書かなくても大丈夫。仮定法は書き手が「現実にはありえない」と思っている時に使う文法で、この文章の書き手は「はずだ」と言っているあたりから「ありえる」と思っているのがうかがえるので。そして、「はずだ」を正確に訳すなら仮定法過去には使えないshouldが最適で、仮定法過去で使えるwould, could, mightは違和感があります。どこにこだわって訳すのか色々迷う部分なので、「この言い方なら書き手の意図を再現できる」と自分が思える表現で訳しましょう。
・3文目:「大人の世界も少しは変わってくるはず」は色々できちゃいます。
「変わる」は文章の流れから「好転する」意味で取れるので、
the world of adults should slightly change for the better
世界は勝手に変わるのではなく人が変えてゆくものという考え方なら人を主語にして、
we can change, to some degree, the world where adults have made
などなど、やっぱ色々できちゃいますね。


「どんな文法を使って訳すか問題」は京大入試のように翻訳に近い英作文には常について回る問題ですよね。京大とか翻訳とかそんなレベルまで行かなくても、「何を主語にして英文を書くか問題」も常に英語学習者を悩ませます。いずれにしても英文を書く人は、自分の表現力=今までの勉強で覚えた文法、語彙+今までに聞き・読み・話し・書いてきた英語で身につけた言い回しの限りを尽くして、さらには「ネイティブスピーカーがどんな気持ちでその文法、その表現を使うのか」という書き手としての気持ちや、「日本語のこういう言い回しは、英語ではこう言えば伝わる」という知識も総動員して訳すわけです。大変だこりゃ。





それにしても、ほぼ座学だけで英語を学んできた18、9の若者にここまで求める京大ってなんなん?その能力ちゃんと身につけてる京大生ってなんなん?て思います。こういう人たちが大人の世界を変えてゆくんだろうな、変えてほしいな、オレたち凡人がもっと生きやすくなるように、と思うのはオレだけですかね?何にせよ、頑張れ京大受験生、京大生。






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最後までお読みいただき、ありがとうございました。今日はここまでです。ではまた。






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