■大音量で鳴らすときの音源の品質
楽曲の音源を手に入れる方法がほぼCDだけであった2000年代初頭と違い、今ではいろんな形で音源を入手したり、聴いたりが可能になっています。
私が依頼をお受けする音源編集でもさまざまな音源が持ち込まれます。
どのようなものに対しても最善を尽くすのはもちろんですが、そのゴール地点、目指す場所はどこかというと「イベント会場の本格的なPA装置で鳴らして十分な音質、音圧があること」だと思っています。
イベント会場といっても稽古場での公演や、カフェ、バーでの小規模ライブ、お祭り会場、ライブハウス、ホール、スタジアム…
規模はさまざまです。
このような環境で音を鳴らすときには普段、イヤフォンやスマホ内蔵スピーカーで聴くのとは違う視点が必要です。
スマホで見る映像と、映画館で見る映像、当然映画館の方が細かいところまで気になりますよね。同じことが音楽にも言えるのです。
■「いい音」の基準とは?
今のところ(2022年現在)CDに収録されている状態を基準として考えるのが合理的です。
正確にいうと、CDに焼き付けられている状態とパソコンに読み込んだ状態は違うのですが、その説明は端折って、「
16Bit WAV 44.1KHz」
これは覚えておいてください。
これがCDの音源を劣化なしでパソコンに取り込んだ状態のデータです。
■圧縮と非圧縮
それに対し、多く利用されているのがmp3、AACなどの圧縮音源です。
元のWAVファイルを「圧縮」してデータを小さくして移動しやすくしているのです。
イヤフォンで聴いている状態では非圧縮音源と差がないように聴こえても、劇場やイベント会場の本格的なPAから流すと、大きな差となって現れることが多いのです。
あるダンサーがダンスコンテストに参加。他の参加者と「曲かぶり」があったときに、自分の曲が他の参加者よりも小さく聞こえたり、弱々しく聞こえたり、といったことが実際に起きました。原因は音源ファイルに関する知識不足でした。
mp3というのは本来の非圧縮のWAVEファイルのデータを小さくするために「聞こえにくい成分」「なくなっても大勢に影響無い成分」を捨ててしまいます。
ですから特に大きな音で鳴らしたり、質の良いオーディオで鳴らしたりしたときには圧縮前の音源とはっきり差がついてしまいます。
かといって、古い傷ついたレコードや、ノイズだらけのラジオのように明らかに汚い音になるわけでは無いので「なんだか迫力がないなぁ」「PAさん、あの子の時だけ音を大きくしたのかしら?」などと思ってしまうかもしれません。
皆さんが普段、写真や動画を送るときに使う.zipという圧縮方法は、データを圧縮して相手に送り、受け取った人が開いたら(解凍したら)元通りになりますよね。
そこで劣化は起きません。
mp3は.zipと違い、圧縮するためにもともとあったデータを捨てたら、それは捨てたままなのです。その違いはスマホのスピーカーで聴くくらいでは気づきませんが、本番で大きな音で出したときに歴然と差が出ます。
ぜひ、普段から気にしてくださいね。