中小企業経営のための情報発信ブログ341:アート思考

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今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
以前に「デザイン思考」について書いたことがあります。デザイン思考というのは、文字通り、デザイナー的に物事を考えることです。デザイン思考が重視するのは生活者である人間の姿です。生活者がどのような行動をとり、どのような考え方をし、どのような感情を示すかを詳細に観察し、ときにはインタビューを行うことでニーズを把握します。ニーズを把握したあとで、簡単なスケッチを描いてニーズに合致するかを検証していきます。求められているものが明確になるまで、こうした作業を繰り返します。このように、デザイン思考は、顧客のニーズが起点にして「問題解決」を図る思考法です。
それに対して、「アート思考」というのは、自分を起点とする思考法です。極端に言えば、他人や社会が共感しようがしまいが関係ありません。自分がやりたいように表現したいように自由に行うのがアートです。
優れた彫刻や絵画を見て心揺さぶられるのは、自分が当たり前と思っていた価値や意味を打ち砕かれるからです。そこにアートの力があります。アートの目的は「問題提起」です。
ビジネスで言えば、問題や課題が山積し閉塞感のある社会を打ち破るには、前提を再定義するようなイノベーティブな発想が求められます。顧客のニーズを忠実にとらえ問題解決を行おうとするデザイン思考では、イノベーティブな発想は生まれません。無から有を生み出すような独創的な大胆な発想はわがままで変人である芸術家・アーティストの得意とするものです。アーティストの特異な感性と非常識なものの見方が独創を生み出してくれます。こうしたアーティストの思考プロセスをビジネスをはじめとした社会の問題解決に応用しようというのが「アート思考」なのです。
アーティストが生み出す作品は十人十色です。アート思考には体系的な方法論はありません。アート思考で頼りになるのは自分の感性だけです。自分の心に引っかかるもの、心を揺さぶられるもの、疑問や違和感を覚えるものを見つけるところからアート思考は始まります。
着眼点は、「好き」「面白い」「心地よい」「ワクワクする」といった「自分の心がザワザワするもの」なら何でもいいのです。この時点で、「ビジネスに役に立つか」「仕事に活かせるか」など考える必要はありません。大切なのはオリジナリティー、「独創的かどうか」だけです。他に同様な発想がなければ、大当たりかポンコツのどちらかです。他に類似の発想があれば、もう一ひねりして独創的になるようにします。
出来上がったらプロトタイピングです。作品にして本当に心揺さぶられるかどうか味わってみることです。面白いと思ったら「なぜ心が動くのか」「何が心を動かす源泉なのか」「その感覚は私たちに何を訴えているのか」を考えます。答えが見つからなければ、単にウケを狙ったキワモノでアートになっていないのです。答えが見つかったら、「それを世間に問うにはどんな作品に仕上げればいいか」を改めて考えます。そうやって、具体化と抽象化を繰り返して、ビジネスに役立つ発想を探すのです。
このやり方がうまくいくかどうかは、既存の思考法から脱却できるかどうかにかかっているます。私たちは、子供のころから「何が正しい答えか」を見つけることを叩きこまれてきています。「自分がワクワクするものを見つけろ」と言われてもすぐにできるものではありません。
その方法として、アーティストを呼んで話を聞く以外に、「既存のアート作品からアナロジーを使ってヒントを得る。芸術は常に時代の先駆けであり、メッセージを読み解ければ、ビジネスで一歩先んじることができる」のです。
デザイン思考も難しい思考法ですが、それ以上に難しいのがアート思考です。しかし、社会が激動している時代において、イノベーションを起こすには「アート思考」を取り入れることも必要かもしれません。
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