中小企業経営のための情報発信ブログ145:プロフェッショナルマネジャー

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今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
今日はマネジャー、それもプロフェッショナルマネジャーについて書きます。
高木春夫氏の本で「プロフェッショナルマネジャーの仕事はたった一つ」(かんき出版)というのがあります。著者の高木氏は、ハーバード大学出身の慶応大学大学院経営管理研究科教授です。専攻は、組織マネジメント・組織行動学で、人が集団を動かすための研究を行なっており、授業でも学生との双方向型の講義運営を行ない、NHKの白熱教室でも授業風景が取り上げられました。
この本は、慶応大学ビジネススクールで行なわれた「白熱のマネジメント特別講義」の内容を書籍化したもので、講義形式で読みやすく分かりやすい内容になっています。この本は、マネジメントにおいて「たった一つの重要なこと」が解説されており、マネジャーやマネジャーになろうとする人には必見の書物だと思います。
1.マネジャーにとって最も大切な1つのこと
 高木氏は、優れたマネジャーは「マネジメントにおいて最も大切な一つのこと」を実践しており、それは「配る」という行動である、と言います。
「マネジャーの仕事」という本で、ミンツバーグは、マネジャーを「組織、あるいはそのサブユニットを預かっている人物」と定義し、「マネジャーの職務は、さまざまな『役割』によって、すなわち、ある職位によって明確になった組織化された行動の集合によって説明することができる」と言います。
 また、ドラッカーは「マネジメントは人間と創造に関わるもの」で「人や組織の強みや創造性を最大限に引き出して経済的・社会的に価値ある成果を上げること」と言っています。
 一般にマネジャーの仕事と思われている「計画し、組織し、調整し、統合する」といった管理の仕事はマネジャーの仕事の一部分にしか過ぎないのです。 
高木氏が言うところのマネジャーの仕事で最も大切な「配る」とはどういうことでしょうか? 
 高木氏は、次のように言います。  
 「部下たちは多かれ少なかれ、次のような疑問や悩みを抱えています。「自分にこの仕事が任された理由が分からない」「自分の仕事は会社にとって本当に意味があるのか」「自分の本来の力を発揮させてもらえない」つまり、会社における自分の仕事と存在の価値について、答えを求めているのです。マネジャーの本質的な仕事は、そうした部下たちの疑問や悩みを解決する「適切な情報を配る」ことなのです。部下たちはこのことがわかると確実にやる気になり、惜しみなく力を発揮してくれます」 
 高木氏によれば、マネジャーの仕事というのは、「仕事の意味」や「この仕事を任された理由」など部下やメンバーの悩みや疑問に対して、回答を「配る」ことなのです。これを著者は「配るマネジメント」と呼んでいます。    
 経営というのは経営資源である「ヒト、モノ、カネ、情報」という経営資源を配る(配分する)ことから始まります。マネジャーが「配る」ものの大半は「情報」です。ですから、マネジャーにとって、最も重要なのは「情報を『配る』」ことなのです。
2.マネジャーが配る5つの大切な情報
 高木氏は、マネジャーが部下やメンバーに配るべき情報は次の5つであると言っています。
Ⅰ:状況情報・・・どのような状況であるかについての情報です。会社の史上におけるポジションや現在の実績、あるいは合併や提携などの話も含まれます。全員が共有すべき状況に関する情報を隠さずに配るのです
Ⅱ:方向性情報・・・会社全体若しくは自分の部署が、どちらに向いていくかについての情報です。これが伝えられなければ(共有できなければ)、どちらを向いて仕事をすればいいか分かりません。この情報が共有されることで、一丸となって目標に向けてモチベーションを高め進んでいくことができるのです。
Ⅲ:評価に対する情報・・・どのように評価されているかについての全般的な情報です。上司の評価であったりお客様からの評価などです。人は他から評価されることによってやる気を高めます。ただ、評価自身が恣意的であったり主観的であってはいけないことは言うまでもありません。
Ⅳ:個別業務情報・・・個々の業務についての情報です。個々の業務の意義、業務の手順や納期など、具体的な情報です。部品や材料の手配など現場レベルの情報も含みます。またフィードバックを行なう際にも個別具体的な情報の共有が重要になります。部下やメンバーが分かっているだろうというのではダメで、分かっているか理解しているか確認し、明確に伝える(情報を配る)ことが大切です。
Ⅴ:気持ち情報・・・感情や気分です。人間は感情の生き物です。以前にも言いましたがロジックよりも感情です。相手(部下やメンバー)の感情・心に寄り添わなければなりません。そのためには、自分の心を開くことが大切です。
 この5つの情報は、部下やメンバーが「目標を達成するために必要な情報」です。
3.危機の時こそマネジャーは明るく振る舞う
 マネジャーは「気持ち情報を『配る』」ことも重要ですが、「落胆」や「不安」を配っては、部下の気持ちは益々萎えさせてしまいます。 
 部下やメンバーとよりよい関係や信頼関係が築けているのであれば、危機的状況を話しともに力を合せ、危機を乗り切るべく立ち向かっていくこともできるでしょうが、そこまでの信頼関係が築かれていないとか部下やメンバーの性格によっては、時に状況を素直に伝え部下を落胆させたり不安にさせたりするのではなく気丈に振る舞うことも大切です。 
 高木氏は、「悲観的に判断し、明るく行動する」というスタンスを勧めています。しかもそれは訓練によって身につけることができるのです。
 高木氏は次のように言っています。
 「実際に、広く使われている訓練方法で、結構効果があるんですが、「今、まずいぞ」というときこそ鏡の前に立つんです。やばいときは、自分の顔が硬直しています。これは鏡を見たらすぐ分かります。鏡で自分の顔を見て、笑顔を作るという訓練をするんです。(中略)人間って笑顔を見ると気持ちが和らぐんです。だから、鏡で自分の笑顔を見て、外側から笑顔の刺激を自分の中に入れるんですよ。これは、全部、筋肉動作を伴っていますね。自分を明るくするときは、言葉よりも筋肉を使うんですよ。」
 鏡の前で自分の顔や姿を見て、暗示を掛ける自己啓発法は色々な本に書かれています。中村天風も、笑うことの重要性を語り、鏡の前での自己暗示法(命令暗示法)を説いています。
最後に、中村天風の言葉を紹介しておきます。
「笑顔を失うと、命の資本ともいうべき健康もみるみる破壊されますし、また、運命とて同様に、とかく阻まれがちとなってしまうんですよ。西洋のことわざにも、『和やかな笑顔の漂うところに、運命の女神はその慈悲の手を差し伸べる』というのがあります。いったい何のために、人間だけが笑えるようにできているのかということを、厳粛に考えなきゃだめですぜ。あなた方、考えたことあるかい?」

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