中小企業経営のための情報発信ブログ85:ネット・プロモーター経営

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ビジネス・マーケティング
今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
今日は「ネット・プロモーター経営」について書きます。
ネット・プロモーター経営」という言葉は聞きなれない言葉かもしれませんが、フレデリック・F・ライクヘルドが「ネット・プロモーター経営」(プレジデント社)という本を出しています。ライクヘルド氏は、ベイン・アンド・カンパニー名誉ディレクターで顧客ロイヤルティに関するビジネス戦略の第一人者です。
売上を増やすにはどうすればいいのでしょうか?
新規顧客の開拓を行う必要があると言われますが、「今いる顧客が長く買い続けてくれれば長い目で見ればその顧客からの売上は増えていく」のは明らかで、今の顧客を放置して新規顧客の開拓ばかりに目を向けるのは間違っています。新しい顧客を見つけることも大切ですが、もっと大切なのは今の顧客を大事にすることなのです。
しかし、解約せずに売上があっても「良い売上」と「悪い売上」があります。「良い売上」というのは、満足した顧客が繰り返し購入することで生まれる売上です。一方「悪い売上」というのは、不満を抱いている顧客が仕方なく買うことで生まれる売上です。「他に代わりがないから仕方なく買っている」「解約したいが面倒で続けている」といったものです。この場合、他に良いサービスが現れるとすぐにそちらに乗り換えられてしまいます。
ライクヘルド氏は、顧客ロイヤルティを具体的に把握するNPS(ネットプロモータースコア)という方法を提唱しています。
1.NPSと顧客満足度調査との違い
 顧客満足度を把握するためによく顧客満足度調査が行われます。顧客満足度を100点満点で把握するアンケートです。顧客満足度調査は、言葉の通り顧客満足の度合いを示す指標です。この「満足」の包摂する範囲は幅広くしかもあいまいで、たとえ「満足」という評価を下した顧客がいても必ずリピーターになるとか購入単価の向上といった形で業績向上に貢献してくれるとは限りません。しかも、顧客満足度だけでは、具体的に何をすればいいのか分かりません。単に顧客満足度の向上だけでは、業績向上を実現するのは困難なのです。
 業績向上を図るためには、顧客満足度に代わる新たな指標が求められ、ライクヘルド氏が試行錯誤を重ねた結果生み出されたのがNPSと言えるのです。
2.NPSの計算方法
 まず、次の2つの質問をします。
 ①当社を友人や同僚に勧める可能性は0~10段階でどれくらいありますか?
 ②その数字を選んだ理由を教えてください
 この質問にどのような回答がなされたかで、回答者が次のいずれかであるかがわかります。
Ⅰ:推奨者(10~9):群を抜いて再購入率が高い。さらに他の人にも商品を進めてくれるので、口コミを通じて商品が広がっていく
Ⅱ:中立者(8~7):再購入率は推奨者より低いがそれなりに満足している。しかし、他には勧めてくれない。
Ⅲ:批判者(6以下):再購入率はとても低く、他の人が購入するのを妨げる。悪い噂と否定的な口コミの源でSNSで拡散される恐れもあり怖い存在。
 次にNPSのスコアを計算します。
NPS=推奨者の割合-批判者の割合
 当然のことながら、推奨者が多く、批判者が少ないほどスコアは上がります。批判者しかいない-100から、熱烈なファンしかいない+100のどこかに当てはまることになります。
3.NPSの勘所
 顧客満足度では数字が出ても対応策が明確ではありませんが、NPSでは、推奨者を増やし、批判者を減らせばいいのです。そのために何を行うのか、顧客が求めているニーズは何か、批判者の不満を減らすにはどうすればいいかを考えるのです。
 万が一、批判者の不満を解消する方法がないのであれば、彼らをそもそも自社の顧客として取り込む必要があるのかを考えることです。漠然と顧客として捉えていると、批判が拡散され、中立者、更には推奨者にも影響を及ぼすかもしれません。むしろ切り捨てて、中立者や推奨者のニーズに特化する方がいいのです。
 NPSを最大限活用する勘所は次の通りです。
Ⅰ:数字はありのまま把握する・・・見かけのスコアをよくしても意味がありません。顧客の実態をありのまま把握して、対策を練ることです。
Ⅱ:回答率を高める・・・回答しない人には中立者や批判者が多いのです。NPSの回答率が低い場合には何らかの問題があると考えて、その後の顧客行動を追跡調査するなどの対応を考える必要があります。
Ⅲ:設問数は絞る・・・設問数はできる限り減らし、顧客が回答する負担を減らすことが大切です。不満な顧客は質問数が多すぎると益々回答しなくなり、顧客の実態を把握できなくなります。
Ⅳ:継続性が重要・・・常に顧客の実態を把握し、課題を探り改善を継続することが顧客ロイヤルティを高めることにつながります。
 会社の仕組みに顧客から学び改善し続ける活動を組み込むことは必要なのです。しかし、NPSも万能ではありません。こっそりと自分だけが使用し人に勧めるような商品でない場合にはNPSで顧客ロイヤルティを把握できません。この場合には顧客満足度調査が有効です。顧客満足度調査とNPSをうまく使い分けることも重要です。
 「顧客第一主義」を標榜する会社でも顧客の状況や実態が把握されず、「見える化」できていないケースは少なくありません。把握できず「見える化」できていなければ、改善するにも何をどのように改善すればいいのか分かりません。
 「顧客第一主義」を実現するには顧客ロイヤルティを「見える化」し、具体的に高めるのにはNPSは有効な方法です。
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