中小企業経営のための情報発信ブログ36:SF思考

記事
ビジネス・マーケティング
今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
今日は「SF思考」について書きます。
SF思考」というのは、三菱総合研究所と筑波大学との共同研究から生まれたもので、現在と非連続的な未来を構想し、現実を変えていくためにSFを活用しようとするものです。
文学にしろ、映画にしろ、漫画にしろ、SFは「科学的思考法から発想した世界構造」を掘り下げるという点に特色があります。SFの場合、現代社会のリアリティや人間心理の掘り下げよりは、まず世界の構造を考え、その後にそこに生きる人間の行動や思考に思いをはせるというアプローチです。このアプローチはまさに未来を構想するための方法論と合致します。
複雑な新技術が実装された社会をシミュレートしたい場合もSFは役立ちます。例えば、AIは便利な反面、これまで人間が行ってきた判断をAIに委ねるというリスクが伴います。例えば「自動運転AIの問題点や決断のポイント」という問題について、SF的な発想をすれば、背景世界から各場面を想像でき、難しい決断をするためのヒントが得られるはずです。
新規事業を構想する場合でも、ゼロカーボンの温暖化対策にせよ、競合の動きや過去の成功体験に学ぶだけでは革新的な取り組みはできません。日本だけでなくグローバル(地球全体)に、更には宇宙まで視野を広げなければなりません。これからのビジネスにはどうしてもSF的な発想は不可欠なのです。
1.SF敵は発想をビジネスに活用
 欧米では、SF的な発想をビジネスに活用するということが、ごく普通に行われています。 
 日本人の多くは、「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」「銀河英雄伝説」「エヴァンゲリオン」などといったSFアニメで育ってきました。それにもかかわらず、欧米と異なり、日本企業にはSFプロトタイピングが広がらないのです。それは、日本人が真面目すぎるからだと言われています。趣味と仕事は別、仕事にSF的な話を持ち込むのはNGと考えているのです。
 今の45歳~50歳くらいの人は受験戦争も厳しかったし、真面目に一社で勤め上げようというマインドが強くて考え方が固まってしまっています。変人が少ないのです。企業に変革をもたらすためには、良い意味での変人でなければなりません。
イノベーションは変革です。固い頭では変革を起こすことはできません。柔軟で斬新な発想がなければイノベーションを起こすことはできません。「ちょっと変わっているね」くらいがちょうどいいのです。
 日本の企業では、これまで「自分はSFが好きで」などと公言するのもはばかられるような雰囲気がありました。自分が好きなものを堂々と公言し、それをビジネスに活かすことはできないのか、そこから新しいアイデアは生まれないのかを考えることでイノベーションを起こせるかもしれないのです。
2.「腹落ち」していない人は変われない
 日本では、自分の意見をはっきりと口に出して言葉にするのがはばかられ、自分の意志を言葉にする機会が極端に少なくなっているように思います。
 日本では、組織や企業だけでなく、社会全体に「同調圧力」が蔓延し、自分の考えや意見と異なる判断基準を押し付けられ、その押し付けられた判断基準に従って行動してしまいます。多数派の意見に従わなければ不利益を被るかもしれないと感じ、口をつぐみ多数派に同調してしまうのです。
 しかし、IT化やグローバル化した社会で、こうした閉鎖的・同質的な日本の社会構造や企業の体制では、上手く回りません。社会構造や企業の体制を大きく変革しなければなりません。
 自分の意志を言葉にできないということは「暗黙知の形式化」ができていないということです。
 SF思考というのは、「自分がやりたいこと」を他人に伝わるように形式化する手段です。今の時代に正解と言えるものはありません。誰も先行きが見通せず、何が正解かわからないのです。だからこそ「何をやりたいか」という意思がなければ前に進めません。
 「自分は何のために働くのか」という意思が明確でないまま、上から降りてくる仕事だけをこなすというのでは、どんなに優秀な人でもリスクは取れませんし変化もできません。成長できないのです。
 先日書きました「パーパス経営」も、企業としての意志=存在意義を明確にして、従業員に腹落ちさせようというものです。従業員にパーパスを浸透させ、従業員がそれに共感できなければ、パーパス経営などできません。
 日本企業の多くはパーパスを上手く作ることはできていません。
 それには経営者の任期が短いというのが原因の一つです。大企業や社外から社長を招聘している企業では2年2期、3年2期と決めている会社がほとんどです。それでは「任期中上手く乗り切ろう」ということになり、思い切った改革などできませんし、パーパスを作ってもそれを浸透させる時間がありません。それでは本気になって取り組もうという気にもならないでしょう。
3.未来を意味づけることから「納得」が生まれる
 日本でもグローバルで強いオーナー型の企業の経営者はSF的な思考をしています。日本電産会長の永守重信氏は「10兆円企業になる」という目標を語るとき「やがて自家用ドローンが普及し、ロボットの数が人口を超える」という未来像をセットで語ります。永守氏が描いているイメージはSF的ですし、やっていることはSF思考です。永守氏の話にはストーリーがあり、聞く人が「ワクワクし面白いし、共感し、やる気にさせてくれる」ものです。
 優れた企業、優れた経営者は時間軸が長く、少なくとも、30年、50年策を見据えています。ソフトバンクの孫正義氏に至っては「300年ビジョン」まで語っています。
 未来像がポジティブであればあるほど、共感する人が多ければ多いほど実現する可能性が高くなります。経営者が語る未来像が社員に腹落ちすれば「一緒にやろう」という人は増え、更に腹落ちした社員から社外の人にまで広がり実現の可能性は大きく高まります。
 先が分からない不確実な時代ですから、ある意味未来なんてどのようにも解釈できます。それを腹落ちできるストーリーにまとめて、意味づけできるか、つまり、そのストーリーを聞いた人が納得できるかにかかっています。
4.ビジネスパーソンの「知の探究」のためのSF思考
 長く続いている組織や企業は探索よりも深化に偏っています。これはまさにイノベーションのジレンマが表しているとことです。業界トップの企業が、顧客の声に耳を傾けすぎ、更に高品質な製品やサービスを提供することでイノベーションに立ち後れ、新興企業に後れを取ってしまうのです。今ある製品やサービスの品質をさらに良くする持続的イノベーションであり、破壊的イノベーションは起こせないのです。
 今あるモノを深堀するだけではダメなのです。新しい分野や新しい世界・宇宙にまで探索の手を広げないとダメなのです。
 イノベーションを起こすためには探索が必要不可欠です。そして、探索を行うには「未来像の腹落ち」が不可欠です。「30年後にこんな会社になろう」「ビジネスでこんな価値を出そう」というビジョンが腹落ちしていれば、多少リスクがあっても前進できますが、そうでなければ些細な失敗で躓いてしまいます。
 イノベーションの出発点は「知の探究」です。新しいものを生み出すには、自分が当たり前と思っている認知の外へ飛び出さなければなりません。地球を飛び出して宇宙へと旅立つようなものです。
 意識を遠く飛ばすタイプの「知の探究」には、SFは認知の外に出て未来を考えるには格好のものです。SFを読むだけで新しい発想やアイデアがわきイノベーションを起こせるわけではありませんが、意識的に異文化を掛け合わせていくことで幅が広がりアイデアや発想の芽が生まれます。
日本企業も、SF 思考やSF的な発想を取り入れることで変革を起こさなければグローバルな戦いに生き残ることはできません。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す