代理出産の問題

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突然ですが、今日は前から気になっていた、代理出産について書きたいと思います。

少し前のことですが、タイ人女性に代理出産を依頼したオーストラリアの夫婦が生まれた男女の双子のうちダウン症の男児の引き取りを拒否した問題で、世界中が大騒ぎしたことがあります。

この問題は、もともと多くの非常に微妙かつ複雑な側面(一つずつ考えないといけないでしょう)がある上に、依頼者夫婦の男性に幼い娘への性的暴行歴があることまで発覚しました。

それはいいとして(よくないかもしれませんが)、中でも、私が気になるのは、いわゆる人工中絶の問題です。

オーストラリア人夫婦は、障害を有する胎児の中絶を要求し、タイ人代理母はこれを拒否しました。

そして、生まれた赤ん坊の受取りが拒否されたわけです。

しかし、オーストラリア人夫婦はそれほど無情なのでしょうか。

少なくとも、中絶を要求した点では彼らを責めることはできないと思います。

日本でも妊娠中の検査(羊水検査等)は普通に行われています。

胎児に異常が見つかれば、中絶する人も少なくないでしょう。

オーストラリア人夫婦を責めるのなら、日本でこうした障害を持つ胎児を中絶する親たちも責めなければいけないことになりますが、日本のメディアはこの問題をスルーしています。

これはどう考えても不公平だと思いますが、いかがでしょう。

ところで、今までにも、代理母の心変わりの問題がしばしば起きています。

妊娠している最中に情が移り、代理母が依頼者に赤ん坊を渡さないといったことが、何回かあったんですね。

そのために契約を交わすわけですが、もともと国際的契約には難しい点が多く、今回のオーストラリア人夫婦とタイ人代理母の間の契約にも、多分、不備があったのでしょう。

この他にも、国よる法律の違いの問題があります。

たとえば、人工流産は、代理母の国であるタイでは禁止されているそうですが、オーストラリアでは認められています(州による)。

そして、商業目的の代理母はオーストラリアでは禁止されていて、タイでは関連法律自体がありません。

今回の事件では、実際に生まれた赤ん坊の映像が流され、余計に同情が集まり、オーストラリア人夫婦が批判されているところがあります。

タイ人代理母は、人工流産を拒否した時点で、自分で育てることを覚悟したはずです。

オーストラリア人夫婦も、自分たちの意志に反した生まれた赤ん坊を引き取なければならない理由はありません。

一応書いておきますが、ここでは、感情を排除して、事実だけを見ています。

すでに書いた通り、国によって代理出産に関する法律が異なり、また、商業的代理出産が許されている場合でも、費用が違います。

そのために特定の国(タイやインド)に代理出産を求める人が集中するんですね(これらの国では代理出産はビジネスになっていて、専門仲介業者までいるそうです) 。

要するに、法律で禁止されているために、自国ではできない裕福な国の人たちが、それが可能な貧乏な国で代理母を探すわけです。

そして、ほとんどの場合、代理母になるのは、金銭的に恵まれない人たちです。

これでは、裕福な人間の傲慢な行為と言われても仕方ないでしょう(養子縁組でも同じ)。

一部の人たちの指摘通り、赤ん坊をもの扱いしていることになりますし、ある意味では、命を金で買っている。

こうした傾向に歯止めをかけるには、まず各国レベルで法律を整備するべきでしょう。

法的抜け道をなくすために、外国でのそうした行為を禁止するわけです(可能かどうか知りませんが)。

そして、国際レベルでも、協定等で関連法規の平準化を図る(当然ながら時間がかかりますが)。

ただし、法律で禁止しても闇ビジネスとして地下に潜る可能性が非常に大きいと思いますが。

また、代理出産を完全禁止した場合、これに代わる方法は、里親制度(養子縁組)しかないと思います。

自分の血を引く子孫を残したいとの願望は、諦めてもらうしかありません。

この気持ちはどこにでもあると思いますが、特に、日本人に強いようです。

日本では米国やフランス(私が知っている外国です)に比べて、養子が少ないんですね。

こうした傾向を改めて、養子制度をもっと普及させるべきでしょう。

ただ、アメリカの某女性有名歌手が批判されているような、裕福な人間が貧乏な国で子供を「お金で買う」ことは止めさせなければいけません。

最後に書いておくと、代理母の問題に宗教的価値観を絡めるべきではないと思います。

宗教は科学や社会の進歩にまったくついていくことができません。

人工中絶や同性結婚などに今でも反対している宗教が多いのがその証拠です。

さらに、今回の件のようにオーストラリアのキリスト教とタイの小乗仏教といった複数の宗教が関わると収拾がつかなくなるでしょう。

では。

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