#259 夏休み終盤、子どもの「心の不調」に親はどう対応すべきか?

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夏休み終盤、子どもの「心の不調」に親はどう対応すべきか? 精神科専門医に聞く


夏休み終盤から休み明けは、心が不安定になる子どもが増え、自殺が多発する時期とされます。親や周囲の大人たちは、子どものどのような点に注意すればよいのでしょうか。

精神科専門医に聞きました。

夏休み終盤から休み明けは、心が不安定になる子どもが増え、自殺が多発する時期とされます。コロナ禍で迎えた3年目の夏休み。

親や周囲の大人たちは、子どものどのような点に注意すればよいのでしょうか。精神科専門医の田中伸一郎さんに聞きました。


新学期が始まる不安と期待、親子で対話
Q.夏休み終盤から休み明けにかけて、心が不安定になる子どもが増え、自殺も増えるといわれます。考えられる要因は。


田中さん「以前から、夏休みの終盤から休み明けは、子どもの心身の不調が出やすく、また子どもの自殺が多いとされてきました。

それには特定の要因があるわけではなく、さまざまな要因が複合的に影響していると考えられています。



子どもの不調に影響があるものとして重要なのが、生活リズムの乱れです。

長期休みになって登校していない状況が続き、昼くらいまで寝て過ごしたり、だらだらと夜更かししたり、ゲームや動画視聴の時間が増加して運動量が減少したり、食生活が乱れたりして、生活習慣が変わってしまうことが、特に問題です。



夏休みの宿題が終わっていないことを含め、その他さまざまな要因が絡んで、心身の不調につながります」


Q.コロナ禍で迎えた3回目の夏休みですが、これまでと比べて、子どもたちに変化は見られますか。

田中さん「文部科学省のデータによれば、コロナ禍に入って視力低下が進み、肥満傾向の子どもが増えていることが明らかになりました。

先述のように、夏休み期間中は特に、ゲームや動画視聴の時間が増加して、子どもの運動不足が目立つようになります。

画面を見る時間が増えれば、それだけ目のピント調節に負担がかかりますし、運動不足が続けば、それだけ体重が増加しやすくなります。


また、本年度は通常の授業が多く行われ、子どもたちもマスク着用、うがいと手洗いの徹底などの新しい生活様式に慣れてきています。

しかし、クラスメートとの関係の悪化、教師とのトラブル、いじめ、学習の遅れの心配など、コロナ禍の影響で生じた問題への対応は十分ではありません。

教師も家族も、子どもたちの心身の不調に気付きつつも、どのような対策を打ち出せばいいのか、学校現場では試行錯誤している状況です」



Q.夏休み終盤、親や周囲の大人は、子どもたちとどのように接すべきでしょうか。

田中さん「夏休み終盤、親や周囲の大人ができることはたくさんあります。

まずは、夏休みの宿題を終わらせるべく、一緒に計画をたて、最後まで勉強を見てあげること。次に、『外に出るとコロナも熱中症も危険』といった一面的な情報に流されず、きちんと感染対策と熱中症の予防対策をして、子どもと一緒に外に出かけるようにすること。

夏休み終盤では『体力づくり』が大切です。適度に運動したら、おなかがすきますし、夜になると眠たくなりますよね。

運動量を増やすとともに、早寝早起きの生活を取り戻しましょう。



それから、親から話題を振って、新学期が始まる不安と期待について、話し合うようにしましょう。

その際、休み中は明るかった子どもの顔が曇ったり、いらいらして怒り口調になったり、プイッと部屋に閉じこもったりするような様子が見られたら要注意です。



子どもの『学校に行きたくない気持ち』を受け止め、『なんか嫌だよね』『なんか行きたくないよね』などと親身になって会話を続けながら『どうしちゃったのかな?』と声かけをするとよいでしょう。



あるいは、学校に行きたくないとは言わないまでも、夏休み終盤になってネガティブな発言や死にまつわる話題が増えるなど、普段と違った様子が見られたら、ひょっとしたら不調のサインかもしれないと思って、子どもとのコミュニケーションを積極的にとるようにしてください。

何よりも、親子の対話を続けることが大事です」



Q.普段と違った様子が見られたとき、受診を検討すべき目安を教えてください。

診療科はどこがいいのでしょうか。

田中さん「もし親子の対話をきっかけにして、クラスメートとの関係悪化、教師とのトラブル、いじめ、学習の遅れなどの悩み事、困り事の話題が出てきたら、親子であれこれ対応を考えつつ、受診を検討するタイミングかもしれません。


親子でよく話し合ううちに、『それはとてもつらいね』『悩みが深そうだね』『一度、専門の先生に相談してみようか』ということになれば、児童・思春期を専門とする精神科、小児科などのクリニックを探してください」



Q.クリニックでは一般に、どのような治療、カウンセリングをするのでしょうか。

田中さん「医師による診療では、一般に、子どもが悩み事、困り事を自分の言葉で表現することを助け、一緒に『どうしていったらよいのか』について相談していきます。

必要に応じて、補助的に投薬が行われることがありますが、抗不安薬、抗うつ薬などがいきなり処方されることはありません。



残念ながら薬の話ばかりをする医師に当たってしまった場合、そこに通い続けるのは賛成できません。

きちんと紹介状(正式には診療情報提供書と言います)を書いてもらって、別のクリニックや病院に移ったほうが賢明でしょう」






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