なつかしのパスワードと腐女子

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腐女子を20年以上やっているわけですが、ここで語る腐女子は、20年前に使われていた、BLが好きで好きで仕方がない人種、という意味で使わせていただきます。
今はなんか、オタク女子全般腐女子って言う奴、あの風潮ちょっと怖いんですよね。
今回は、腐女子が生きる上で欠かせない「検索除け」と「パスワード」についての歴史をお話しようと思います。

腐女子の気遣い

腐女子は、少年漫画であったり、芸能人であったり、歴史上の人物であったり、無機物だったりを恋愛関係に結び付けてニコニコする生き物です。
女の子が恋愛の話が大好きなように、腐女子も恋愛の話が大好きです。
ただ、その恋愛がどういうわけか男同士だと嬉しいという生態で、これについては榎本ナリコ先生の「大人はわかってくれない」という評論本に当事者として非常に納得する形で書かれているので是非参考にして頂きたいと思います。

恋愛が大好き、というのは無害な趣味です。腐女子が抱える問題は、実際に恋愛関係にない二人を恋愛関係にある!と言い切って創作物をモリモリ生み出し、人目に付く場所に置いてしまうことだと思います。

これは、腐女子に限らない問題で、例えばたまたま仲の良い職場の男女を、付き合ってるんじゃないかと周りが騒ぎ立てると気まずくなる等、現実でも起きている問題です。
ですが、職場という狭い範囲で起きているから(当事者にしたらたまったものではないが)問題が大きくならないものの、腐女子が対象としているものが少年漫画であったり、芸能人であったり、歴史上の人物だったり、無機物だったりするので、その対象を愛している人が多いのが問題なのです。
たくさんの人が「この二人は付き合っている」という幻覚を信じてしまうことで、芸能人が活動に支障をきたしたり、歴史が捻じ曲げられて伝わってしまったら大変ですよね。

なので、たくさんの人の目に触れないように、仲間内だけで話題を共有できるように腐女子は検索除けという対応を取りました。

検索除け

検索除けとは、簡単に説明するとグーグルとかヤフーとか、大手サイトで自分が作った作品が見つからないようにする対策です。

例えば、pixivに投稿する場合はキャラクターの名前を入力せず、カップリングタグという独自のタグでのみ検索ができるように配慮します。
また、作品によってはキャラクターの名前もファンの間でしか通じない特別な名前を使ったりします。
とにかくカタギの連中には迷惑をかけないこと、それが暗黙のルールとして存在するのです。

二次創作がpixiv主流の今だからこそ減って来たものの、携帯でホームページが作れるようになり、誰でも自分のサイトを持てた二十年ぐらい前は検索除け以外にもいくつかの対策を使っていました。

立ちはだかる門

検索除けをかいくぐり、何らかの手段で、やっとの思いで自分が求める幻覚を前にした腐女子ですが、その前にもう一つの関門が存在します。
ホームページの入り口には、だいたい3つのうちどれかひとつの門番が存在します。

1.注意書き
 「このサイトは○○×▼▼の二次創作サイトです。意味が分からない方はブラウザバックお願いします」など、作者の方から「知らない人は見ないでね!」というお願いの形で様々な注意書きが書かれています。
しかし、これを読まない馬鹿が歴史上、たくさんの人を傷つけてきた事実があります。私の友人も犠牲者の一人です。
比較的通りやすいものの、言葉が読めない馬鹿が入り込んで「なんだこれは!」と大騒ぎして炎上してしまいやすいのが欠点でもありました。

2.パスワード請求性
サイトを見るためには、パスワードを入力しなければいけない式の、特定の方法でしか見ることができないホームページです。
その中でもホームページの管理人へメールを送ってパスワードを請求する方式がありました。
これは、非常に秘匿性の高いジャンルでよく使われていたもので、メールを送る際に自分の個人情報も漏洩する可能性があり、ホームページを閲覧している人が誰か管理人が把握できます。
この方法は閲覧者にとってリスキーなため問題が起きにくい傾向にありました。
しかし、その為閲覧者が警戒してなかなか見てくれない、という問題もありました。

3.パスワードクイズ
私が知る限り、昔はこれが一番多かったように感じます。
2のパスワード請求性と同じく、パスワードを入力しなければホームページに入れないものの、パスワードがクイズ形式になっているパターンです。
このクイズは、その界隈に詳しければだれでも知っているような情報が答えになっている場合が多く、例えば登場人物の誕生日であったり、何かの記念日だったりと非常に多種多様かつ、興味がない人間には覗けないという強みがありました。
今回はこの、パスワードクイズについて語ろうと思います。
前書きが長いですね。昔の腐女子みたい。

パスワードクイズ

パスワードの答えとなるクイズは、定番処でカップリングされているキャラクター二人の誕生日だったり、それを足した和であったり、カップリング名の略称だったりするのですが、それ以外にも面白いものがたくさんありました。

例えば、歴史ジャンルでは歴史知識が試される場面がありました。「○○の享年」「二人が初めてであった年(××の戦いをほのめかした言い方)」など、歴史を勉強していないとちょっとわからないようなものがありました。
ですが、そのジャンルの腐女子は当然暗記しているのでそれぐらいSUICAみたいにスーッと通り抜けられるのが当たり前でした。

また、漫画・アニメだと作中の重要な場面が答えになっている場合もあります。
「○○が××と一緒のコマに映った巻」「○○が△△と言った回(1期から数えて)(ドラマジャンルで、確かその当時5期ぐらいまでやってた)」など、時々妙にマニアックで誰がわかるんだ?というものもありました。
一時期、このパスワードクイズが面白くてやたらと色んなジャンルのクイズを解くのにハマっていた時期があるほどです。

最後に、今はほぼ失われた古代言語が答えになっている場合をお話します。
これを読んでいる方は「やおい」という言葉をご存知でしょうか。
やまなし・おちなし・いみなしの略語で、古代、BLという言葉が生まれる前は男性同士の恋愛を女性が書いた作品を表す隠語として使われておりました。
これを数字に当てはめて801と書いたりもできるので、これをパスワードとしているホームページは確実にノンケはお呼びじゃないというのがわかる利点がありました。

しかし、長い年月の間、BLという言葉が生まれ、本屋さんにはBLコーナーが出来るほど、男性同士の恋愛を女性が楽しむことに対して市民権が得られるようになりました。
かくして、隠すための使われていた言葉は役目を果たし忘れ去られていったのでした。

ですが、古代種の腐女子は未だにこの言葉が通じると思って当たり前に使っている場合があり、ニュータイプを混乱させた事例も近頃は耳にします。

現在、作品を見るためにパスワードを入力する機会がグッと減ったのは、ある程度こういった文化が現実に浸透してきたからなのかな、検索除けの精度が上がってきたからかな、と思います。
実際はどうかわかりませんが、ふと閲覧しようと思った作品にパスワードの入力を求められると、郷愁のような気持を抱くのでした。
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