公害防止管理者(水質)試験のポイント【水質概論/水質指標各種】

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こんにちは。
公害防止管理者(水質関係)を受験しようとしている皆さんのため、出題されるポイントをわかりやすくまとめます。

今回は、「水質概論」の出題範囲になっている、各種の水質指標について取り上げます。

「水質概論」は問題数が全部で10問ありますが、例年、水質指標に関する出題は1問程度です。

ちなみに、公害防止管理者の試験は、最低でも6割以上の正答率であれば科目合格できると言われています。
「水質概論」の場合、6割を取るためには6問の正答が必要です。

「水質概論」は問題数が少ない割に範囲が広く、内容も専門的であるため、難易度は高めの科目です。
ただ、今回解説する水質指標に関する問題は、ポイントを絞りやすいので、比較的得点源にしやすい分野です。

<全体的な学習のポイント>
○ まずは各指標の定義をしっかり覚える
○ その上で、各指標に関し関連する知識を覚えていきましょう。



1.有機汚濁指標

主に有機物による汚濁度合いを調べるために用いられる指標です。


1-1.BOD(生物化学的酸素要求量)

【定義】汚水に好気性微生物を加えて20℃で5日間培養した際に消費される酸素の量
・BODは、生物が分解可能な有機物の成分を調べるための指標。
・これには、硝化細菌が窒素化合物(アンモニア・亜硝酸性窒素)を分解する際に消費される酸素量も含まれる。(…一般的な微生物が有機物を分解する反応と、硝化細菌の反応とを分けて調べることができないため。)
・日本では、河川の環境基準に採用されている。


1-2.COD(化学的酸素要求量)

【定義】水中の有機物を酸化剤で分解させ、その際に消費された酸化剤の量を酸素量として換算したもの
・酸化剤として過マンガン酸カリウムを用いた場合はCODMn二クロム酸カリウムを用いた場合はCODCrと表記される。
・ニクロム酸カリウムの方が酸化力が強いため、CODCrの方が高い値を示す。一方で過マンガン酸カリウムを用いる方が簡便に測定できるので、環境基準値はCODMnで表示されている。
・日本では、湖沼や海域の環境基準に採用されている。


1-3.TOC(全有機炭素)

【定義】水中の有機物に含まれる炭素(C)の総量
・TOCを調べれば水中に含まれる有機物の全量を直接知ることができる。(BODやCODはあくまでも間接的な指標に過ぎない)

1-4.SS(浮遊物質)

【定義】水中に懸濁している、直径2㎜以下不溶解性物質網目2㎜のふるいを通過した試料を孔径1µmのガラス繊維ろ紙でろ過した際にろ紙上に残る物質。(いわゆる”濁り成分”)
・SSが多いと様々な障害が起こる。例えば水の外観の悪化(濁って見える)、藻類の光合成の阻害(…光が届かないため)、魚類のえらの閉塞死、沈殿物のヘドロ化、土壌の透水性の低下、など。


1-5.VSS(強熱減量)

【定義】④のSS(1µmガラス繊維ろ紙に残ったもの)を、約600℃で灰化した時に、燃焼・揮散して減量した成分のこと。
・VSSは水中の全有機物の量・微生物の量の目安として用いられる。(…濁り成分のうち、有機汚濁成分や微生物の死骸などは、600℃で強熱した時にCO2として揮散してしまう。強熱しても残るとしたらそれは金属などの無機成分。したがって、強熱前後の重量変化分は有機物と考えることができる。)

1-6.DO(溶存酸素)

【定義】水中に溶け込んでいる酸素の濃度のこと。
DOは温度によって影響を受け、温度が低いほど値は大きくなる。(1気圧で純水に溶ける濃度:水温10℃では約11mg/L、20℃では約9mg/L、30℃では約7.5mg/L)
・DOが低いと有機汚濁度合いが高い(微生物が有機物を分解するのに酸素が消費されてしまうから)
・閉鎖性水域(湖沼など)では、有機汚濁が進むと、水深が深くなるほど嫌気化してDOが少なくなる。よって底層水のDOは閉鎖性水域の有機汚濁指標として用いられている。


1-7.透視度

【定義】水の透き通り具合のこと。
透視度計と呼ばれる透明ガラス管を使う。この管に試料水を入れ、下から少しずつ水を抜いていく。この時に、管の底に書かれた線が上から見えるようになった時の水の高さを透視度と呼ぶ。(透視度が大きい=水の高さが高くてもよく見える=透き通っている)
透視度の逆数とSSには高い相関がある。(透視度が小さい=奥深くまで見えない=濁っている)


1-8.大腸菌群
・病原微生物汚染の指標。特にふん便性汚染の指標として用いられる。
実際の試験では、ふん便汚染を受けていない土壌・植物などの環境中に生息する大腸菌群も検出される。(通常の試験は36℃で培養。しかし、44.5℃で培養すると、ふん便由来の特異な大腸菌が検出されることから、培養温度を変えて試験することもあります。その場合は「ふん便性大腸菌群数」と呼ばれます)



2.富栄養化指標

・「富栄養化」とは、植物プランクトンの異常増殖により水域が汚濁すること。
・植物の三大栄養素といえば、窒素・りん・カリウム。ただカリウムは制限因子とならない(水中に豊富に存在する)ので、それ以外の窒素とりんが指標に採用されている。
・植物プランクトンの体の元素組成割合は、有機態炭素が38%、窒素は8.6%、りんは0.65%。→窒素1gから約12gの植物プランクトンが、りん1gから約154gの植物プランクトンが生産される。
・植物プランクトンも有機物扱いできる。1gの植物プランクトンはCODMnで約0.5gに相当する。
・富栄養化によって有機汚濁が進む様子は、植物プランクトンにより無機物から有機物が生産される形になるため、内部生産と呼ばれる。


2-1.窒素

【定義】水中に存在する窒素は、①有機体窒素、②アンモニア性窒素、③亜硝酸性窒素、④硝酸性窒素の4種類ある。それらの総量を「全窒素」と呼ぶ。
・水中での変化:
有機体窒素(アミノ酸やたんぱく質など)
→ 微生物分解でアンモニア性窒素(NH4+)に変化
→ 硝化細菌により亜硝酸性窒素(NO2-)、そして硝酸性窒素(NO3-)へと酸化されていく
植物プランクトンに利用されやすいのは、アンモニアや硝酸などの無機体窒素。
・アンモニア性窒素は、高濃度になると毒性が現れる。(魚類の呼吸酵素を阻害)


2-2.りん

【定義】水中でりんは様々な形態で存在する。大きく分けると①有機態りん、②オルトりん酸(PO4)態の無機態りん、③重合りん酸態の無機態りんの3種類ある。それらの総量を「全りん」と呼ぶ。
・①②③どの形態のりんについても、溶解性と粒子性(懸濁性)2通りで存在する可能性がある。
植物プランクトンに利用されやすいのは、オルトりん酸態のりん。


2-3.クロロフィルa

【定義】植物の葉緑素の主成分。
・クロロフィルにはa,b,cの3種類ある。aは全ての藻類に含まれるため、植物プランクトンの量の指標としてクロロフィルaが測定される。


2-4.透明度

【定義】透明度板という白い円形の板を水中に沈めていき、それが目視できなくなった水深のこと。
・目視で確認できる、水中に物理的に光が届く範囲を表す指標。
・富栄養化が進むと植物プランクトンのせいで濁りが強くなるため、透明度が低くなる。


2-5.pH

・通常の清澄な淡水のpHは弱酸性である。
富栄養化が進むと、水域のpHは上昇し、塩基性に傾く。
※メカニズム:
 植物プランクトンが増えると光合成が進むため、CO2が水中から消費
→足りなくなると、水中の炭酸水素イオン(HCO3-)からCO2が消費
→水酸化物イオン(OH-)が増加=塩基性が強まる



3.富栄養化障害指標

富栄養化が進むと、汚濁が進むだけでなく、浄水工程や人の健康に悪影響を与える物質が生み出される可能性があります。


3-1.異臭味物質

富栄養化が進むとカビ臭物質が産生されることがあります。カビ臭物質は浄水処理で除去するのが難しく、生成されると厄介です。
・カビ臭物質:ジェオスミン2-MIB(メチルイソボルネオ―ル)
・原因となる藻類:Phormidium(フォルミディウム)やAnabaena(アナベナ)などの糸状らん藻類


3-2.生体毒性物質

植物プランクトンの中には、肝臓毒や発がん性を引き起こす毒性物質を産生するものがあります。
代表的な毒性物質:ミクロキスチィン
・主にMicrocystis(ミクロキスティス)属のらん藻類が産生する。毒性はシアン化カリウム(青酸カリ)よりも強い。
・ミクロキスチィン類の中で最も毒性が高いとされるミクロキスチィンLRについてはWHOが規制基準のガイドラインを示している。(暫定指針値:飲料水で1µg/L
・日本では厚生労働省がそれより厳しい規制値(要検討項目として暫定値0.8µg/L)を示している。



以上が、各種の水質指標のまとめになります。

太字の部分を理解しておけば、おおむね正解にたどり着けるのではないかと思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。


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