公害防止管理者(水質)試験のポイント【機器分析の基礎②】

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こんにちは。
公害防止管理者(水質関係)を受験しようとしている皆さんのため、出題されるポイントをわかりやすくまとめます。

今回は、「汚水処理特論」や「水質有害物質特論」の出題範囲になっている、機器分析の基礎についてまとめるブログの第2段です。

この記事では、水質有害物質特論で出題される分析手法についてまとめます。
<水質有害物質特論の試験範囲>
・ガスクロマトグラフ法
・ガスクロマトグラフ質量分析法
・高速液体クロマトグラフ法
・イオンクロマトグラフ法
・薄層クロマトグラフ法

※原子吸光とICPは有害物質の分析にも用いられるため、水質有害物質特論でも出題される可能性があります。
原子吸光とICPについてはブログの以下の記事で解説しています。
【機器分析の基礎①】


汚水処理特論(全25問)、水質有害物質特論(全15問)の試験では、最後の5問ずつは分析・測定方法に関する問題が出題されます。
その5問程度の問題の中で、機器分析の基礎については例年2問ほどが割かれています。

今名前を挙げた手法はどれも、装置が複雑で高度な専門知識も必要なので覚えにくく感じるかもしれません。
確かにその通りなのですが、でも過去問を見ていくと、ある程度決まったキーワードや注意事項が繰り返し出題されている傾向があるようです。

<全体的な学習のポイント>
少なくとも以下の内容を覚えておくようにすると良いでしょう。
(1)測定原理(キーワードを中心に)
(2)装置の主要な部品名や仕組み
(3)それぞれの分析法が何を測定するのに使われるのか


1.ガスクロマトグラフ(GC)法

(1)測定原理
<キーワード>
クロマトグラフ法(クロマトグラフィー)とは
クロマトグラフィーとは、混合物を分離する手法の一つです。
クロマトグラフィー①.png
試料を、気体または液体(移動相)にのせて流し、充填物(固定相)を入れたカラムを通します。
試料物質は成分の種類によって、固定相に吸着・分配されるときのされやすさ(吸着平衡・分配平衡の度合い)が異なります。その違いを生かすと、試料物質はカラムから出てくるときに時間差で出てくるようになるので、成分の分離が可能になります。
移動相として気体を使う時はガスクロマトグラフィー、液体を使う時は液体クロマトグラフィーと呼ばれます。

クロマトグラフィーの結果をグラフにしたものをクロマトグラムと呼びます。
クロマトグラフィー②.png
各成分が検出器にたどり着くまでの時間を保持時間と呼びます。物質によって保持時間が異なるので、それを使って成分の特定(定性)ができます。
成分の量を知りたければ、グラフの山(ピーク)の高さや面積を測定します。


(2)装置
ガスクロマトグラフは以下のパーツで成り立っています。
①ガス流量制御部
②試料導入部
③カラム
④検出器
流れ:
移動相となるガスを流す → ガスの中に試料を導入する
→ カラム内で試料成分を分離する → 検出器で順に成分を検出する

①ガス流量制御部
移動相となるガス(キャリヤーガス)を流します。
キャリヤーガスには通常、ヘリウムや窒素などの不活性ガスが使用されます。

②試料導入部
キャリヤーガス中に試料を注入する部分です。一般にマイクロシリンジ(注射器)を通して注入します。

③カラム
試料を分離する筒状の部品(固定相にあたる部分)です。大きく分けると2種類あります。
充填カラム
内径0.5~6㎜、長さ0.5~20m
管内に分離用の充填剤が詰め込まれています。充填剤としてシリカゲルやアルミナなどが使われます。
キャピラリーカラム
内径0.1~1.2㎜、長さ5~100m(充填カラムより細く長い)
管の内壁に固定相液体や充填剤の微粒子を塗り付け、中を空洞にしたものです。
充填カラムよりも分離効率が高いため、微量物質の分析に使われています。

④検出器
カラム内で分離された成分を順番に検出し、量を測定する部分です。
こちらは何種類かあるため、続く(3)で説明します。


(3)検出器
大きく5種類あり、検出したい成分によって使い分けています。
何を測定したいときにどの検出器を使うのかを覚えるのがポイントです。

熱伝導度検出器(TCD)
各成分への熱の伝わり方の違いを利用して検出する装置です。
検出器のためのキャリヤーガスとして、熱伝導率の高いヘリウムや水素が使われます。
有機物・無機物の区別なくどの気体も測定できますが、感度は他の検出器よりも低くなります。

水素炎イオン化検出器(FID)
キャリヤーガスに水素を混ぜて燃やす際、有機物が同時に入ってくると、多量のイオンが生成します。そのとき電流が流れるので、その電流の強さを利用して検出する装置です。
有機物は高感度に検出できますが、無機物は検出できません。

電子捕獲検出器(ECD)
キャリヤーガスにベータ線を照射し、キャリヤーガスを電離させて電子を発生させます。その際に、電子を捕獲する性質のある物質が含まれていると、発生した電子が捕獲されて電流が減少します。その減少度合いを利用して検出する装置です。
ハロゲン化合物アルキル水銀の検出に利用されています。

炎光光度検出器(FPD)
水素炎中で物質が燃焼する時の発光度合いを利用して検出する装置です。
りん化合物硫黄化合物の検出に利用されています。(りんや硫黄は発光しやすい)

熱イオン化検出器(TID)
これは②のFIDにアルカリ金属を付加して加熱させるものです。
そこに、りんや窒素の化合物が入ってくると、それらがイオン化されて電流が発生します。その電流の強さを利用して検出する装置です。
りん化合物窒素化合物の検出に利用されています。
別名:窒素・りん検出器(NPD)、アルカリ熱イオン化検出器(FTD)


(4)導入前の前処理
微量な有機化合物をガスクロマトグラフ法で測定する場合、事前に成分を分離・濃縮するために前処理がされることがあります。

パージ・トラップ法
試料水中の試料をパージ(曝気)する → 成分をトラップ管の吸着剤に捕集する → トラップ管を加熱して脱着させ、GCに導入
揮発性の有機化合物の測定に使用されます。

ヘッドスペース法
試料水をバイアル(サンプル瓶)に入れ、上部に空間を残して密閉する → 十分に混合し、気体部分と液体部分の平衡状態を作り出す → シリンジで気体部分を採取してGCに導入
揮発性の有機化合物の測定に使用されます。

溶媒抽出法
試料を分液漏斗に入れ、有機溶媒(ヘキサンやジクロロメタン)を加えて振り混ぜ、有機溶媒に抽出する → 抽出液をクリーンアップ後GCに導入
揮発性・不揮発性どちらの有機化合物の測定にも使用されます。

固相抽出法
試料を疎水性の固定相カラム(カートリッジのようなもの)にゆっくり流し込み、成分を吸着させる → 固定相カラムに有機溶媒(アセトニトリル等)を流し、成分を溶出させる → 窒素などを吹き付けて濃縮し、一定体積にしてGCに導入
有害物質の検定の中では、特に固定相として活性炭を用いるやり方が、1,4-ジオキサンの検定に規定されています。


(5)使われる検定項目
ガスクロマトグラフ法は、有機化合物の測定に幅広く使用されます。
検定項目によって、前処理法や使える検出器が異なってきます。
アルキル水銀(検出器はECD
有機りん化合物(検出器はFPDまたはTID
シマジン、チオベンカルブ(検出器はFID。チオベンカルブのみの場合はECDも可)
PCB(検出器はECD
塩素化炭化水素、ベンゼン(パージ・トラップ法の場合検出器はFID、ヘッドスペース法の場合検出器はECD(ベンゼンはFID)、溶媒抽出法の場合検出器はECD)


2.ガスクロマトグラフ質量分析法

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