特定化学物質とは?

記事
学び
簡単に言うと、労働者の安全を守るために取り扱い・管理の規制が決められた化学物質です。
労働安全衛生法に基づいて定められています。
働く人の化学物質による健康被害を防止するのが目的ですね。
*特定化学物質は特化物(とっかぶつ)と略して呼ばれることが多いです。
例えば、クロロホルムやアクリルアミド、フッ化水素などが指定されています。
硬い表現ですが、以下のような悪影響を及ぼす・危険とされる物質です。

〇微量の曝露でがん等の慢性・遅発性障害を引き起こす物質(第1類物質、第2類物質)
〇大量漏洩により急性障害を引き起こす物質(第3類物質、第2類物質のうち特定第2類物質)
〇原則的に製造や使用などが禁止される製造等禁止物質
(Wikipedia)

これだとピンと来ないと思うので、
代表的な例・物質をピックアップします。

〇クロロホルム、ジクロロメタン(塩化メチレン)、塩化ビニル、塩素化ビフェニル
肝機能障害を引き起こし、肝臓がんの原因となります。
塩化物を含む物質は、肝臓に悪影響を及ぼします
それだけではありませんが、基本的に塩化物系は肝臓です。
*クロロは塩化物を持つ物質につく名前です。

〇アルキル水銀、水銀
アルキル水銀とは、メチル基(CH3-)、エチル基(C2H5-)などがついた有機水銀化合物のことで、毒物です。
中でもメチル水銀は水俣病の原因となりました。
アルキル水銀の恐ろしいところは、脂肪組織の多いところに蓄積される点です。
つまり、脂肪の多い脳に蓄積され易いんです
アルキル水銀が体内に蓄積されると、視力・聴力・言語障害、平衡感覚の欠如、口腔粘膜障害などが起きます。
また、水銀自体も極めて危険な物質です。
使用だけでなく、廃棄も厳しく規制されています。

〇カドミウム
金属被覆材や軸受合金、電子工業材料、触媒などに使われています。
肺機能障害や肺がん、腎臓障害などを引き起こし、イタイイタイ病の原因とされています。
イタイイタイ病については、カドミウムよって起きた腎臓障害が原因で、カルシウムなどの栄養が吸収できなくなり、骨軟化症をきたしたとされています。
*ただし、はっきりとした科学的証拠はありません。

〇クロム酸およびその塩
クロムめっきや顔料、医薬品などの製造原料として使われています。
クロム酸の粉塵を吸引すると、鼻やのどの粘膜が侵されます
特に、鼻中隔穿孔(びちゅうかくせんこう)を引き起こすことで知られています(鼻の2つの穴がつながってしまう症状)。
他に、肺がんの原因になることもあります。

〇エチレンオキシド
強力な殺菌剤として使われます。
注射針などの医療器具の製造において、最後の滅菌処理工程で活躍します。
ただし、引火性・爆発性があるため、取り扱いには注意を要します。
蒸気を吸入してしまうと、吐き気や頭痛などの中枢神経系の症状が出ます。
高濃度の蒸気だと、眼や粘膜・肌を刺激します。

〇ベンジジン、βナフチルアミン
染料の原料として使われていました。
膀胱(ぼうこう)の炎症、膀胱がんを引き起こします。
排尿痛や血尿などの自覚症状有り。
現在の日本では製造・使用が禁止されています

〇フッ化水素(フッ酸)
極めて強い酸で、殺菌剤やメッキ、フッ化物の原料、金属の洗浄などに使われています。
目、鼻、のどを強く刺激し、ガスを吸入すると気管支炎や肺炎を起こします。
骨を溶かすことが知られています
また、毒物に指定されています。

他にもたくさんあります。
蒸気などが直接触れた場合は、目や皮膚、鼻などに影響が出ますが、
身体の中の場合、物質によって蓄積される場所が違います。
そのため、症状も様々です。
ただし、普段生活していて特化物に触れることはほぼありません
あるとしても、水などで薄められた状態のものです。
逆に、仕事などで扱う方は物質の特徴や法令を把握し、安全第一で取り扱って下さい。
同じ職場に「特定化学物質(四アルキル鉛等)作業主任者」の資格を持った人が居るはずなので、その人に聞くのが一番ですね。
居ないときは問題ですが……
基本的に特化物を扱う場所では、
局所排気装置や換気設備などが整い、作業者は防護服を着用しています。
そして、出来る限り自動化・遠隔操作するようになっています。
加えて、可能な限り特化物の使用を避けます
代替出来る、より安全な物質があれば、多少扱い難くてもそちらを使います。
使用する場合も、上記の対策に加え、出来る限り使用量を少なくし、薄めて使います
そして、作業者は特殊健康診断の受診が義務付けられています
化学製品・研究に関わっている方の殆どが対象のはずです。
以上の作業環境管理(設備面)・作業管理(防護服の着用や取り扱い)・健康管理(健康診断)を合せて労働衛生3管理といいます
これは特化物に限った話ではありません。
化学以外の分野にも言えることです。
特定化学物質に触れない、使わないようにするのがベストですね。
と言っても、代替できないものも多いので、僕なんかは毎日扱っています。
毎日使っているとどうしても慣れが出てくるので、半ば戒めのつもりでこの記事を書いています。
最後に、設備や環境の点検についてです。
当然ですが、排気装置や廃液・排ガス処理装置などは定期点検が必要です。
最低でも年に1回自主点検を行い、その結果を記録し、3年間保存する必要があります
また、特化物(第一類・第二類)を製造・取り扱う屋内作業場では、半年ごとに一回、作業場所の特化物の濃度(空気中)を測定する必要があります(作業環境測定)
この測定記録も3年間保存する必要があります
また、特別管理物質に指定されているものは、測定記録を30年間保存しなければなりません。
特別管理物質には、特化物の中でも、がん等の慢性障害を引き起こす物質が指定されています。
健康診断の記録も、特別管理物質に関しては30年間の保存が必要です(その他が5年)。
色々と決められていますが、とにかく「安全第一」ということですね。

*特化物の対象物質は定期的に見直されているため、今後、追加・削除が行われる可能性があります。


サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す