コロナと自殺

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​【コロナ感染の30代女性が自宅療養中に自殺か 「娘が学校で居場所なくなるかも」と生前、夫に語る】​ 東京新聞から
 こういう自殺を防ぎたかった…。
 朝から哀しかったです。
 昨年の春に緊急事態宣言が出たとき、やがて日本の自殺者が増えるだろうと予感しました。
 せっかく年間の自殺者が2万人を切って良い傾向だと思っていた矢先です。
 そのときは、飲食業、イベント業などで失業者、特に自営業やアルバイトの方々が生活に困って自殺すると
考えていました。
「失業者が増えると自殺者が増える」ということを知っていたからです。
 (京大レジリエンス実践ユニットというところが
「失業率が1%増えると年間の自殺者が2400人増える」
と昨年の春に論文を発表しています。
​「新型コロナウイルス感染症に伴う経済不況による『自殺者数』増加推計シミュレーション」​)

 当初、7月まではじつは自殺者は前年に比べて少なかったのです。
学校や職場に行かずに済むのでストレスが減ったからだ、と言っていた人もいました。
 しかし、8月には逆転し、10月にはは過去5年でも最多になってしまいました。
(厚生労働省自殺対策推進室 令和3年1月22日発表 「警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等」​)

 ところが、失業者に加えて、失業が理由でないけれども自殺せざるを得ない方も増加していることをこのニュースは教えてくれています。
このお母さんの場合、ご主人およびご自身の収入が減ったかどうかは自殺の主な原因ではなさそうです。
お子さんのPCR検査陽性に悩んでご自身を責めた事が主な原因なのではないかと東京新聞は伝えています。
 先の統計も男性の自殺者は前年より減っているのに女性の自殺者が増えたから全体で前年を超えた、ということを教えてくれています。
 わたしが「クライシスカウンセリング」を学んでいる下園壮太氏は、性別によって自殺する理由が違う事を指摘しています。
 男性は「自分が壊れてしまった、自分は役立たない」(第2の無力感)と感じることが、
 女性は「誰もわかってくれない、守ってくれない」(第3の無力感)と感じることが自殺の引き金になりやすいそうです。
(「クライシス・カウンセリング」下園壮太監修メンタルレスキュー協会著 金剛出版 74,118,95,96ページ)
 ニュースのお母さんもお子さんがPCR検査陽性と判定されたことで生じた悩み、その苦しいお気持ちを
吐露できる相手がひとりでもいれば、自殺を思いとどまったのではないか?そう思えて残念でなりません。悔しいです。
 我が子がPCR検査陽性になったら、そのことだけでも、まるで交通事故のような惨事に遭ったと言えるのではないでしょうか?
「コロナにかかった」と言われる人への目は厳しく冷たいからです。
一般的に「感染者」はばい菌扱いされる人もいますし、村八分にされる人もいます。
 このお母さんも、ママ友の厳しい冷たい視線を感じたり、噂話が耳に入る、
グループラインでハブられる、SNSで我が子が特定された、
そういう事があったかもしれません。
 もしそうであれば、以下のことをこのお母さんは経験したかもしれません。
〇コロナに関するニュースなどに触れることを避ける(回避)
〇悪夢、誰かにご自身のことを責められる等を見る(侵入)
〇寝つきが悪くなる、眠れても途中で目が覚めてしまい、充分な睡眠が取れない(過覚醒)
 これは「惨事のファーストショック」と呼ばれています。
(「クライシス・カウンセリング」114,115ページ)
 ファーストショック自体は時間の経過と共に自然に消えてゆきますが、
 不眠によって疲れはどんどん蓄積されていきますし、ファーストショックが長引く原因にもなります。
 もともとマスクや手洗い等でご自身にも我慢を強いられる環境で、お子さんにもそれを徹底してもらうようにしつけなければなりません。
我慢を強いられることだけでも実はエネルギーを消費しているので、これだけでも意識して休息を取らないと疲れが溜まるのです。
 疲労を含めてにお母さんには次の4つの症状が出ている、とあの短い記事だけでも推測できます。
 ☆疫病という人間にはまだまだ手に負えない敵に覆われている「無力感」
 ☆自分が子供の「感染」を防げなかった、という「自責の念」
 ☆こどもがいじめられるのではないか?家族が噂の対象になる、SNSでの中傷や嫌がらせを受けるかもしれない「不安感」
 ☆もともと疲れが溜まっているのに、こどもの陽性反応で悪夢を見たり不眠になって追い打ちをかけられた「疲労感」
 この4つは人が「うつ状態」になってしまった時に表れる症状でも気を付けなければならないものです。
(「クライシス・カウンセリング」72ページ)
 わたしが仮にカウンセリングをするとしたら、まずはじゅうぶんに時間を割いてこのお母さんが経験したことを詳しく伺って、
まるで自分が経験しているかのようにこのお母さんの苦しみ悩みを共有し、共感していることをわかってもらいます。
 そして、「無力感」「自責感」「不安感」「疲労感」のそれぞれを確認します。
 さらにこの4つの症状が見られたら、希死念慮、つまり「死んで楽になれたら」「消えてしまいたい」などを考えたことがないか、
必ず確認します。
 そして、そのお母さんがまずはしっかり休息を取れるために今何が出来るか、色々提案してみて出来る方法を探します。
(「クライシス・カウンセリング」103~108ページ)
 これでまずは1日、2,3日、1週間「生きていてもいいかな」と思ってもらい、うつ状態から抜け出るまで寄り添い続けます。
 これをお読みになって、「じつは・・・」と思われた方、お話を聴かせてください。

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